陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

手作り弁当

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翌日。一日遅れで再び岡田の家へ家事を教えに来た俺は、ここでも岡田のハイスペックぶりを目の当たりにすることとなった。

俺の横にピタリと張り付いている岡田は、一度お手本を見せればササッと俺以上に上手くやってみせる。そしてそれを俺が褒めれば嬉々としてそれ以上の成果を上げた。

最早、掃除洗濯は俺以上にそつなくこなし俺が教えられることは何も無い。

……岡田よ。俺が教えなくてもアンタなら出来ただろ。


「もう掃除洗濯は完璧ですね。明日からは料理にしましょうか。何か作りたいモノはありますか?」

「……僕、料理はしない」


今日の頑張ったご褒美として夜ご飯にオムライスをリクエストされ、それを幸せそうに食べた岡田と今は食後のコーヒータイム。
ほっと一息ついた俺は、料理初心者の岡田へ手始めに教える料理をあれこれ考えながら質問してみたのだが、まさかの拒否。


「なんでですか。先輩ならすぐに俺なんかよりも美味しい料理を作れるようになりますよ」


料理だって、自分で作れるようになった方がいいじゃないか。
コンビニ弁当よりもずっといいと思うけど。

首を傾げる俺を見て岡田は不貞腐れたようにプクッと頬を膨らませる。
え、何それ。可愛い。


「俺なんかって言うのやめてよ。僕は立花の作ってくれるご飯がこの世で一番美味しいと思ってるんだから」

「え、あ……ありがとうございます……」


ヤバイ。メチャクチャ嬉しいんですけど。


「フフッ、可愛い。真っ赤になってる立花も美味しそうだね」

「なっ……!」


クスクスと楽しそうに笑って俺の頬を岡田がスルリと撫でるから益々顔が熱くなってしまう。


「それに、僕のご飯はこれからもずっと立花が作ってくれるんでしょ?だから僕は作らなくていいんだもーん。ね?」

「うっ……はい」


"もーん"って、可愛いかよ。……ああ、本当にヤバイ。岡田にキュンキュンし過ぎてヤバイだろ、俺。




階下の我が家に戻った俺はキッチンに立ち食材と睨めっこをしていた。
これも、惚れた弱みというやつなのだろうか。俺ばかりがどんどん岡田を好きになっているようでなんだか悔しいが、岡田の喜ぶ顔がもっと見たいと思ってしまうのだからしょうがない。


「……よし。やるか」


俺は意を決して包丁を握った。




ーー翌日。

俺は少し早く家を出てマンションの外で岡田の出待ちをしていた。


「あれ?立花おはよう。どうしたの?」

「おはようございます」


朝からキラキラの笑顔でこちらに駆け寄る岡田は今日も安定の眩しさだ。


「もしかして僕と一緒に出勤したくて待っててくれたとか?」

「あの、これ……」


モジモジしている俺を覗き込んでニコニコしている岡田は、俺が手に持っていたお弁当を目の前に差し出すとキョトンと目を丸くする。


「先輩が迷惑じゃなければお弁当作ったんで、どうぞ」

「……これ、僕の?」

「はい。先輩のご飯は俺が作るって約束しましたし……」

「僕のため……」


お弁当を受け取ると、岡田はキョトンとしていた顔をたちまち蕩けさせて俺をうっとりと見つめた。


「ありがとう立花。凄く嬉しいよ」


幸せそうに、大事そうにお弁当を抱える岡田に、俺は目を細める。

頬を染めて喜ぶその姿は、俺だけが岡田を好きなんじゃない、岡田も俺と同じ気持ちなんだと認識させてくれて、またまた胸がキュンとした。


ーー俺、このままずっと岡田の側にいたら死ぬんじゃないかな。
岡田に好きだと伝えてしまってからキュンキュンしっぱなしで、もう自分では止められないから。

そんなことを思いながら岡田を見上げていたら、人目もはばからず岡田がチュッと口にキスをしてきた。


「大好きだよ」





ーーうん、このままだと俺、間違いなくキュン死にするな。

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