陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

キス

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口と口が触れるだけの、ディープでもなんでもない、本当にただの軽いキス。

そんなキスのはずなのに、俺の心臓はバカみたいに煩くて。
前みたいに抵抗しようと思えばすぐにでもできるのに、それもしなくて。

……ただ、岡田にされるがままにキスをした。

岡田に再会してしまってから、俺の岡田へ対する気持ちはどんどん大きくなってしまっていて、こんなことをされてしまってはもう前のように踏み留まることなんて出来ない。

岡田の唇がゆっくり離れていく。

それが無性に寂しく感じて離れていく岡田の唇を目で追うと、赤くなっているであろう俺の頬を岡田がスルリと撫でた。


「フフッ、今日は殴らないんだね。もう僕のこと好きになってくれた?」

「なっ……違……」

「違うの?」


耳元でで囁く岡田の艶かしい声に背筋がゾクゾクとし、至近距離にある岡田の綺麗な顔にドキドキとし、その顔が蕩けるような笑みを浮かべて俺を見つめているのにクラクラした。


「好きだよ立花。大好き」

「先輩……」

「立花も僕のこと好きだよね?もうわかってるんだから、いい加減素直に認めてよ」


岡田に両頬を手で挟まれ上を向かされる。 
見上げた岡田の顔も赤くなっていて唇も微かに震えていた。
岡田も俺にドキドキしてくれているのか。
好きだと言われているのだからそうなのだろうけど、改めて岡田の態度や表情で認識してしまうと、マジでヤバい。

俺の頬を挟んでいる岡田の手に、そっと手を重ねてキュッと握った。
岡田の熱い視線に顔が火照り、熱に浮かされたように頭がボーッとする。


「…………好き」


目を逸らせずにボーッと岡田を見つめたままでいたら、いつの間にかそう呟いていた。

声に出てしまっていたことに驚いてハッと我に返ったけれど、時すでに遅く。

俺が行動するよりも早く「好き」の声に反応した岡田に勢いよく抱き込まれ、激しくキスをされた。

さっきよりも、強く、激しいキス。

唇と唇が触れるだけの優しいものなんかじゃなく、岡田に食べられるんじゃないかと思うほどに唇を貪られ息が出来ない。


「……あ…」

息をしようとやっとの思いで口を少し開けば、すかさずそこへ岡田の舌が割り込んできて今度は口内を貪られる。
口内を弄られ強引に舌を絡め取られてクチュクチュといった音が広々とした部屋に響いている。


「立花……好き……好きだよ」

「っは……ぁ……せんぱ……」


何度も何度も好きだと囁かれながらするキスは俺の頭と体をゾクゾクと痺れさせ、力が入らなくなってしまった。
そんな俺を更に強く抱き込む岡田と体がギュッと密着すれば、岡田の荒い息遣いと体温がダイレクトに伝わってきて俺の身も心も熱くし、岡田への想いが溢れ出る。


「先輩……好き」

「立花……」


岡田が一瞬目を瞠り、嬉しそうに顔を蕩けさせた。

自分の気持ちを曝け出してしまった今、もう溢れ出る想いを止めることは出来ない。

岡田の唇が離れてしまったのが寂しくて、もう一度キスをして欲しくて。



俺は岡田の首に腕をまわし、初めて自分からキスをした。




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