陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

猛アタック

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ーードスッ


「いっ!……たーい!!何するんだよ立花!!」

「あ……すみません。つい手が……ってアンタこそ何してくれてんだ」


岡田にキスをされ、俺は思わず岡田の鳩尾に拳をお見舞いしていた。
動揺して力加減が出来ていなかったらしく、岡田がお腹を抱えて涙目になっている。……が、俺は悪くない。いきなりキスしてくるとか、何考えてんだこの人。


「何って愛の告白じゃないか。ずっと我慢してたんだからキスくらい許してよ」

「愛!?……ふ、ふざけんな!俺を揶揄って遊ぶのはいい加減にやめてください!!」

「揶揄う?…………ねえ。僕、揶揄ってるように見えた?」

「え……」


俺の言葉に岡田が一瞬で表情を変え、真顔で俺に詰め寄る。
俺と岡田の間に緊張感が走った。

な、なんだよ。さっきまでニコニコ笑ってたくせに……。


ゴクリと息を呑むと岡田がフッと表情を緩めて俺を見つめる。


「僕ね、告白なんて生まれて初めてしたんだよ。勿論、キスもね。こうやって僕が愛を囁いたりキスをしたりするのは、これからもずっと立花だけがいい。……ねえ、だから早く僕のところにまで堕ちてきて?……早く僕を好きになってよ。ね?」


俺に詰め寄る岡田の眉尻が下がり、不安気に揺らめく瞳には困惑した俺が映っていた。

ーー嘘だ。岡田が俺を好きなんて……。

眉間に皺を寄せ無言で見つめ返している俺に苦笑しながらも頬をスルリと撫でてくる岡田。


「フフッ、信じられないって顔をしてるね。でも僕は本気だから。立花に信じてもらえるまで頑張るよ」


岡田に撫でられた頬が熱を帯び顔が熱い。
きっと俺の顔は真っ赤になっているだろう。心臓がドキドキと煩いがその高鳴りを抑えることは出来そうになかった。
そんな俺を見て妖艶に笑む岡田を綺麗だなぁなんて思いながらボーッと見惚れていたら「立花可愛い」と言う岡田にまたキスをされそうになっていて慌てて口を押さえる。


「……ちょっと。ここはキスをさせてくれるところじゃないの?」

「なんでですか。まだ付き合ってもいないのに。……さっきのキスが初めてだって言ってましたよね?」


プクッと頬を膨らませて文句を言う岡田をちょっと可愛いなんて思ってしまったけど、そんな事は顔に出さずにギロリと睨んで岡田の顔を押し退ける。


「初めてだよ。でも立花を見てたら可愛すぎてキスしたくなっちゃったんだもん。しょうがないよね?」

「しょうがなくない!俺が可愛いとか有り得ないし、それを言うなら先輩の方がよっぽど可愛いですから!!」

「えー!?僕のこと可愛いなんて思ってくれてるの?それはもう僕達ってば付き合うしかないよね!?付き合っちゃう?付き合っちゃおうよ!」

「付き合いません!!」

「えー!?なんでー!?」


そんな遣り取りをしながら暫く岡田との攻防戦をリビングで繰り広げていると、玄関の方からクスクスと笑い声が響いてきた。

驚いて振り返るとリビングの入り口で必死に笑いを堪える社長と、堪えることすらしないで腹を抱えて大笑いする専務の姿があった。

岡田の顔を押し退けた状態で固まっている俺を見て専務は更に腹を抱えて笑い出し社長はそんな専務を肘で小突いている。


……え……なんで?なんで社長と専務がここに……?


「やあ、立花君。引っ越しが順調にいってるか見に来たんだけど無事に終わったみたいだね。お疲れさま」

「え……あ、はい。ありがとうございます……」


リビングまで入って来た社長と専務に「引っ越し祝い」と手渡されたずっしりと重い大きな紙袋にはピザとドリンク類が沢山入っていた。
受け取ったものの頭が混乱して突っ立ったままの俺の手から岡田が紙袋を奪うとピザやらドリンクやらをテーブルの上に広げ始める。
そして呆然として立ち尽くしている俺を置いてけぼりにして既にちゃっかりと3人が椅子に座っていた。
持って来てくれたピザ類と一緒に入っていた紙皿と紙コップを出して当たり前のように自分達のピザや飲み物を用意している。……皆ここで食べるんかい。


「そんなところに突っ立ってないで早くこっちで一緒に座ろうよ」

「あの……社長と専務がなんでここに……」


手招きする岡田に導かれて岡田の隣に座ると社長と専務の顔を交互に見て、今一番の疑問をぶつけてみた。
2人はお互いの顔を見合って、その後2人は同時に岡田に目を向ける。
そんな2人に釣られて俺も岡田に目を向ければ、俺達の視線を受けた岡田が楽しそうにニッコリと笑った。


「なんでって、2人ともここに住んでいるからだよ」

「…………は?」


鳩が豆鉄砲を食ったように目をパチパチさせている俺を見て更に岡田が笑みを深くする。


「ちなみに、僕はここの上に住んでるからね」




ーーーーはあぁぁぁっ!?



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