陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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元彼

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「もうすぐ卒業式だねえ」


ーー2月末。


弁当を食べ終えた岡田がお茶を飲み、一息ついてからポツリと呟いた。


「立花君の元彼も卒業するんだよね?」

「……そうじゃないですかね?留年するほど遊んではいなかったと思いますけど」

「ふーん……」


弁当箱を鞄にしまいながら答える俺を岡田が何か言いたげにジッと見てくる。


「……何ですか?」

「いや……、あの後、元彼とはどうなったのかな~と思って」

「あの後?……ああ、あの別れた日の後ってことですか?別にどうもしませんよ。あの時別れたんですから奴とはあれきり話しもしてませんし、姿も見てませんね」

「そうなの?」


そうだよ。なんなら橋本の存在もすっかり頭から抜けてたわ。


「俺も、橋本への想いを引きずって落ち込むかなと思ってたんですけど、自分でもビックリするくらい平気でした。きっと先輩のおかげですね」

「……僕の?」

「はい。先輩と出会ってから、毎日ずっと非日常的な感じがしてて、別れてショックとか、今頃橋本は何してるんだろうとか、あれから思ったことないですもん」

「非日常って……」


岡田が複雑そうな顔をするが、本当のことだから仕方がない。
だってそうだろ?
普通だったら、こんな何の取り柄もなければ、特に目立つ顔立ちでもない平凡そのものの俺が岡田と知り合うなんてこと、まず有り得ないのだ。
ましてや岡田とは学年も違うから接点がまるで無かったわけだし。

そんな岡田が……この大学で一番の有名人と言っても過言ではない男が、毎日俺の横に座り、俺の作った弁当を食べているのだ。これを非日常と言わずしてなんと言う。

俺が力説すると、岡田は残念といったように眉尻をさげ大袈裟すぎるほど大きな溜息を吐いた。


「立花君が元彼のことを考えなかったのなら良かった。……取り敢えず今は非日常なんて言われても我慢するよ」


我慢てなんだ?

首を傾げつつ、俺はあれからすっかりハマってしまったミルクティーをゴクゴクと飲む。


「このミルクティーって飲めば飲むほど美味く感じるっていうか味わい深くなりますよね。面白いです。もっと早く飲んでれば良かったな」


ね?と岡田に同意を求めれば岡田が恨めしそうに俺を見てきて、なんでか分からずますます首を傾げることとなってしまった。

……まあいいか。岡田が何を考えてるのか分からないなんていつものことだしな。あー、ミルクティー全部飲んじゃった。ここからだと北校舎に近いし、戻る前に買いに行こうかな。


「じゃあ先輩。俺は北校舎に行って、これ買ってから戻りますんで」

「え?もう行っちゃうの?……じゃあ僕も一緒に行こうかな」


カラになったペットボトルを手に持ち立ち上がると、岡田も一緒に立ち上がる。

岡田が横に並んで歩く姿を横目で見ながら、眉目秀麗なこの男と一緒に歩いている現状を改めて普通じゃ有り得ないことだよなぁと思っていたら、チラチラと見ていたことが岡田にバレていたらしい。


「何?そんな可愛く上目遣いで見られると恥ずかしいんだけど」

「…………」


頬を赤く染めてトンチンカンなことをほざく岡田を白い目で見る。
岡田は背が高く、165センチあるかないかの俺が隣に並べば、自然と岡田を仰ぎ見るスタイルになるのだ。決して上目遣いをしているワケではないし、可愛くなんてないからやめろ。


「フフッ。そんな目で見ても可愛いだけなんだけどな」

「…………眼科に行け」



嬉しそうに笑いながら俺の横を歩く岡田に呆れてしまって、俺はありきたりなツッコミしか出来なかった。
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