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終着 〜ルーカス〜
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結論から言うと、お兄様とオリビア様の結婚式は無事に執り行われた。
睡眠薬で眠っていたお姉様は式のギリギリに目を覚まし、かなり朦朧としていたのだけれど、出席したいというお姉様の意思を汲んでオーウェンに支えられる形で結婚式に参列した。
純白の正装着を披露した主役の2人は皆に祝福され幸せそうに微笑んでいる。
そして、そんな2人を見てお姉様が大粒の涙を流して喜んでいた。
体調が万全では無いお姉様は、王族が居る場所からは少し離れて体調が悪くなったらすぐに退室できるよう扉の近くにオーウェンと居る。
僕は顔をクシャクシャにして大泣きするお姉様を目を細めてジッと見つめた。
ーーああ、可愛い。号泣するお姉様とか、超レアじゃん!!可愛すぎるんですけどー!?
心の中では悶えながらも、平常心を装っていた僕に王妃様がコッソリと耳打ちをする。
「ふふっ。泣いてるシャーロットも可愛いわね。」
「そーなんですよ!!この世界にスマホがあれば、嬉し涙に頬を濡らすレアなお姉様の写真を撮りまくって保存しておくのに~!!」
王妃様に言われて、僕のオタク魂に火がついてしまい思わず熱く語ってしまった。
は、恥ずかしい!!
顔を赤くする僕の頭をクスクスと笑いながら撫でてくれる王妃様は、とても穏やかな顔をしている。
「やっと、ひと息つけるわね。」
「…………はい。……あの、あの人、これからどうなりますか?」
僕もお姉様も、長年苦しめられていたお母様から、今日やっと解放された。
別に今更あの人がどうなろうと知ったこっちゃ無い。
けれど、この先にまたあの人が僕の……お姉様の人生に関わってくるのだけは阻止したいから。
王妃様は僕の考えている事が分かったのか、肩を抱き寄せて優しく微笑んだ。
「イザベラは毒が回ってもう二度と起き上がるのは困難な体になるでしょうね。罪人だけれど、一応隣国の王族だから寝たきり状態でもボヴェルデンに帰してあげようと思うの。」
「そんな!それでは体が回復してしまえば、いつまた復讐しに来るかわからないじゃないですか!!」
僕はカッとなって思わず王妃様に向かって叫んでしまった。
いくら体が弱ってると言ったって、みすみすボヴェルデンに逃がすようなことをするなんてっ!!
「ルーカス落ち着いて。言ったでしょう?イザベラは二度と起き上がれないって。イザベラの体内の毒はもう解毒出来ないわ。それにね、近々この国の周辺の国同士で戦争が始まる予定なの。標的になっているのはボヴェルデンよ。武力に乏しいボヴェルデンには厳しい状況だけど、それに更に追い討ちをかけているのがアンソニーの情報漏洩ね。はっきり言ってボヴェルデンは敗戦し滅びるでしょう。……まあ、イザベラの命が尽きるのが早いかボヴェルデンが滅びるのが早いのかは私にも分からないけれど。」
そこまで言うと、王妃様は満足気に微笑んでお姉様を愛しそうに見つめると、目を細める。
「いずれにせよ、ロッティーを苦しめる事は、もう二度と、絶対に無いわ。」
美しく笑う王妃様に、背中がゾクリとした。
…………王妃様とお兄様は絶対に敵にしては駄目な人達だ。
そんな予定はこの先、永遠に無い事に心からホッとする。
僕が苦笑していると、王妃様は何かを思い出したように「そういえば」と切り出した。
「忘れていたけれど、ヒロインはどうなったのかしら?ストーリーが大きく変わってしまっとしても、ヒロインはどこかで登場するのだと思っていたわ。」
「ああ、それなら登場してましたよ。」
「あら、いつ?」
僕がサラリと答えたのに王妃様が驚いて目を丸くしている。
「オリビア様の代わりにお姉様が毒を飲んだ次の日くらいかな?どんな設定だか分かりませんが、急にヒロインが学園に編入して来たんですよ。そして学年も違うのに、なんでだか僕にわざわざ挨拶をしに来てくれました。」
ヒロインはお姉様と同じ学年の筈で、学年も違う中途編入の生徒がわざわさ僕に、しかも直々に挨拶に来るなんて普通なら考えられない。
それが行われているのならば、ゲームの強制力が働いているに違いない。
お姉様が学園にいない時で助かった。
僕は敢えてその強制力に乗っかって、ヒロインと積極的に接触した。
そして攻略対象である学園の先生とヒロインが運命的だと思わせるような出会い方を誘導し、まんまと恋仲にさせるのに成功したのだ。
「今では学園内イチのバカップルです。」
ヒロインとの経緯を説明し終えると、王妃様はなんとも言えない表情をして僕をジッと見つめる。
「ルーカスもなかなかやるわね。」
「いやいや、王妃様とお兄様にはとても及びませんよ。」
ニヤリと笑う僕に、王妃様はフフッと微笑んだ。
そしてずっと僕の肩を抱いていた手に力を込めてギュッと抱き締めてくれる。
「この世界は正規のゲームの話では無かったかもしれないわね。シャーロットが誰からも愛されて幸せになる…………シャーロットのファン達の為に作られた、そんな裏ゲームの世界だったんじゃないかしら。」
「えー?それならそれで最高じゃないですか!お姉様至上主義の世界なら、僕はこの世界に転生出来て幸せですよ!お姉様の周りにいる人達が、ちょっとお姉様愛が強すぎてヤンデレっぽい気もしますが、お姉様が幸せなら問題ナシです!」
「フフッ。その中には貴方も含まれているのよね?」
「勿論です!お姉様を想う気持ちは誰にも負けません!!」
親指を立ててドヤ顔をする僕の頬に、王妃様はクスクスと笑いながら優しくキスを落とす。
不意を突かれたキス攻撃に真っ赤になってアタフタしている僕とお姉様を王妃様は慈しむように見つめ、それはそれは幸せそうに笑った。
「私の可愛い可愛い子供達。これからは誰よりも幸せになるんですよ。」
「はいっ!」
僕は元気よく返事をして王妃様にギュッと抱き付いた。
ーーこの世界に転生して良かった。
僕の知っている『ヒカラビ』とはかなり違って優しい性格のお姉様。
悪役になろうと頑張っても悪役になれず、僕達にとっては只々「可愛い」が増すだけのお姉様。
今日から、みんなで幸せになろうね。
みんなで、幸せにするからね。
抱き付いたまま王妃様と顔を見合わせると、お互いに自然と笑みがこぼれた。
僕と王妃様が笑い合っているのを見て、お姉様もオーウェンと嬉しそうに笑っている。
「「シャーロット」」
本日の主役であるお兄様とオリビア様が、お姉様に歩み寄る。
2人に抱き締められたお姉様は花が綻ぶように笑い、2人の背中に手を回した。
「あー、ズルーい!!僕も入れてよー!」
頬を膨らませて駆け寄る僕に、お兄様が手を差し伸べてくれる。
「ルー、おいで。」
お兄様の手を取ると、みんなが僕を笑顔で迎え入れてくれて、僕を真ん中にしてギューッと力強く抱き締められた。
「く、苦しい~!!」
顔を真っ赤にしながらもがく僕を見て、みんなが声を上げて笑った。
その様子を、お父様と王妃様が肩を寄せ合い微笑みながら見守っている。
「お父様とお母様も、こっちに来てよー!」
僕の呼び掛けにみんなが驚き、笑い声が止んだ。
僕はお姉様の腕をグイッと掴んでアピールする。
「ほら、お姉様も一緒に呼んでよ。」
ーーお姉様、今がチャンスだよ。
今まで、言いたくても言えなかった、お姉様が一番言いたかった言葉。
今なら、言えるから。
「ほら、お姉様!」
「………………お、お母様……」
「声が小さいっ!!」
「お母様!!」
震えながらも力いっぱいに叫んだお姉様と僕めがけて王妃様が駆け寄り、2人まとめて思い切り抱き締められた。
王妃様の目からは大粒の涙がポロポロと溢れ出ている。
お姉様も僕も、王妃様の腕の中で顔をグシャグシャにして泣いた。
「愛しているわ。私の可愛い子供達。」
王妃様のその言葉通りに、僕は……お姉様は、これからもずっとみんなから愛されて過ごすのだろう。
お姉様の物語は、まだまだ始まったばかりだ。
悪役なんかじゃなく、この物語のヒロインとして幸せになって欲しい。
まあ、こんなにもみんなから愛されてるんだから、間違いなく幸せになるだろうけど。
…………でもでも、お姉様を一番愛しているのは、誰が何と言ってもこの僕なんだからね!!
ーー完ーー
睡眠薬で眠っていたお姉様は式のギリギリに目を覚まし、かなり朦朧としていたのだけれど、出席したいというお姉様の意思を汲んでオーウェンに支えられる形で結婚式に参列した。
純白の正装着を披露した主役の2人は皆に祝福され幸せそうに微笑んでいる。
そして、そんな2人を見てお姉様が大粒の涙を流して喜んでいた。
体調が万全では無いお姉様は、王族が居る場所からは少し離れて体調が悪くなったらすぐに退室できるよう扉の近くにオーウェンと居る。
僕は顔をクシャクシャにして大泣きするお姉様を目を細めてジッと見つめた。
ーーああ、可愛い。号泣するお姉様とか、超レアじゃん!!可愛すぎるんですけどー!?
心の中では悶えながらも、平常心を装っていた僕に王妃様がコッソリと耳打ちをする。
「ふふっ。泣いてるシャーロットも可愛いわね。」
「そーなんですよ!!この世界にスマホがあれば、嬉し涙に頬を濡らすレアなお姉様の写真を撮りまくって保存しておくのに~!!」
王妃様に言われて、僕のオタク魂に火がついてしまい思わず熱く語ってしまった。
は、恥ずかしい!!
顔を赤くする僕の頭をクスクスと笑いながら撫でてくれる王妃様は、とても穏やかな顔をしている。
「やっと、ひと息つけるわね。」
「…………はい。……あの、あの人、これからどうなりますか?」
僕もお姉様も、長年苦しめられていたお母様から、今日やっと解放された。
別に今更あの人がどうなろうと知ったこっちゃ無い。
けれど、この先にまたあの人が僕の……お姉様の人生に関わってくるのだけは阻止したいから。
王妃様は僕の考えている事が分かったのか、肩を抱き寄せて優しく微笑んだ。
「イザベラは毒が回ってもう二度と起き上がるのは困難な体になるでしょうね。罪人だけれど、一応隣国の王族だから寝たきり状態でもボヴェルデンに帰してあげようと思うの。」
「そんな!それでは体が回復してしまえば、いつまた復讐しに来るかわからないじゃないですか!!」
僕はカッとなって思わず王妃様に向かって叫んでしまった。
いくら体が弱ってると言ったって、みすみすボヴェルデンに逃がすようなことをするなんてっ!!
「ルーカス落ち着いて。言ったでしょう?イザベラは二度と起き上がれないって。イザベラの体内の毒はもう解毒出来ないわ。それにね、近々この国の周辺の国同士で戦争が始まる予定なの。標的になっているのはボヴェルデンよ。武力に乏しいボヴェルデンには厳しい状況だけど、それに更に追い討ちをかけているのがアンソニーの情報漏洩ね。はっきり言ってボヴェルデンは敗戦し滅びるでしょう。……まあ、イザベラの命が尽きるのが早いかボヴェルデンが滅びるのが早いのかは私にも分からないけれど。」
そこまで言うと、王妃様は満足気に微笑んでお姉様を愛しそうに見つめると、目を細める。
「いずれにせよ、ロッティーを苦しめる事は、もう二度と、絶対に無いわ。」
美しく笑う王妃様に、背中がゾクリとした。
…………王妃様とお兄様は絶対に敵にしては駄目な人達だ。
そんな予定はこの先、永遠に無い事に心からホッとする。
僕が苦笑していると、王妃様は何かを思い出したように「そういえば」と切り出した。
「忘れていたけれど、ヒロインはどうなったのかしら?ストーリーが大きく変わってしまっとしても、ヒロインはどこかで登場するのだと思っていたわ。」
「ああ、それなら登場してましたよ。」
「あら、いつ?」
僕がサラリと答えたのに王妃様が驚いて目を丸くしている。
「オリビア様の代わりにお姉様が毒を飲んだ次の日くらいかな?どんな設定だか分かりませんが、急にヒロインが学園に編入して来たんですよ。そして学年も違うのに、なんでだか僕にわざわざ挨拶をしに来てくれました。」
ヒロインはお姉様と同じ学年の筈で、学年も違う中途編入の生徒がわざわさ僕に、しかも直々に挨拶に来るなんて普通なら考えられない。
それが行われているのならば、ゲームの強制力が働いているに違いない。
お姉様が学園にいない時で助かった。
僕は敢えてその強制力に乗っかって、ヒロインと積極的に接触した。
そして攻略対象である学園の先生とヒロインが運命的だと思わせるような出会い方を誘導し、まんまと恋仲にさせるのに成功したのだ。
「今では学園内イチのバカップルです。」
ヒロインとの経緯を説明し終えると、王妃様はなんとも言えない表情をして僕をジッと見つめる。
「ルーカスもなかなかやるわね。」
「いやいや、王妃様とお兄様にはとても及びませんよ。」
ニヤリと笑う僕に、王妃様はフフッと微笑んだ。
そしてずっと僕の肩を抱いていた手に力を込めてギュッと抱き締めてくれる。
「この世界は正規のゲームの話では無かったかもしれないわね。シャーロットが誰からも愛されて幸せになる…………シャーロットのファン達の為に作られた、そんな裏ゲームの世界だったんじゃないかしら。」
「えー?それならそれで最高じゃないですか!お姉様至上主義の世界なら、僕はこの世界に転生出来て幸せですよ!お姉様の周りにいる人達が、ちょっとお姉様愛が強すぎてヤンデレっぽい気もしますが、お姉様が幸せなら問題ナシです!」
「フフッ。その中には貴方も含まれているのよね?」
「勿論です!お姉様を想う気持ちは誰にも負けません!!」
親指を立ててドヤ顔をする僕の頬に、王妃様はクスクスと笑いながら優しくキスを落とす。
不意を突かれたキス攻撃に真っ赤になってアタフタしている僕とお姉様を王妃様は慈しむように見つめ、それはそれは幸せそうに笑った。
「私の可愛い可愛い子供達。これからは誰よりも幸せになるんですよ。」
「はいっ!」
僕は元気よく返事をして王妃様にギュッと抱き付いた。
ーーこの世界に転生して良かった。
僕の知っている『ヒカラビ』とはかなり違って優しい性格のお姉様。
悪役になろうと頑張っても悪役になれず、僕達にとっては只々「可愛い」が増すだけのお姉様。
今日から、みんなで幸せになろうね。
みんなで、幸せにするからね。
抱き付いたまま王妃様と顔を見合わせると、お互いに自然と笑みがこぼれた。
僕と王妃様が笑い合っているのを見て、お姉様もオーウェンと嬉しそうに笑っている。
「「シャーロット」」
本日の主役であるお兄様とオリビア様が、お姉様に歩み寄る。
2人に抱き締められたお姉様は花が綻ぶように笑い、2人の背中に手を回した。
「あー、ズルーい!!僕も入れてよー!」
頬を膨らませて駆け寄る僕に、お兄様が手を差し伸べてくれる。
「ルー、おいで。」
お兄様の手を取ると、みんなが僕を笑顔で迎え入れてくれて、僕を真ん中にしてギューッと力強く抱き締められた。
「く、苦しい~!!」
顔を真っ赤にしながらもがく僕を見て、みんなが声を上げて笑った。
その様子を、お父様と王妃様が肩を寄せ合い微笑みながら見守っている。
「お父様とお母様も、こっちに来てよー!」
僕の呼び掛けにみんなが驚き、笑い声が止んだ。
僕はお姉様の腕をグイッと掴んでアピールする。
「ほら、お姉様も一緒に呼んでよ。」
ーーお姉様、今がチャンスだよ。
今まで、言いたくても言えなかった、お姉様が一番言いたかった言葉。
今なら、言えるから。
「ほら、お姉様!」
「………………お、お母様……」
「声が小さいっ!!」
「お母様!!」
震えながらも力いっぱいに叫んだお姉様と僕めがけて王妃様が駆け寄り、2人まとめて思い切り抱き締められた。
王妃様の目からは大粒の涙がポロポロと溢れ出ている。
お姉様も僕も、王妃様の腕の中で顔をグシャグシャにして泣いた。
「愛しているわ。私の可愛い子供達。」
王妃様のその言葉通りに、僕は……お姉様は、これからもずっとみんなから愛されて過ごすのだろう。
お姉様の物語は、まだまだ始まったばかりだ。
悪役なんかじゃなく、この物語のヒロインとして幸せになって欲しい。
まあ、こんなにもみんなから愛されてるんだから、間違いなく幸せになるだろうけど。
…………でもでも、お姉様を一番愛しているのは、誰が何と言ってもこの僕なんだからね!!
ーー完ーー
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