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誅罰
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朝から陽がキラキラと新緑を照らし空が青く澄み渡る今日、お兄様とオリビア様は結婚式を挙げる。
純白のドレスを身に纏ったオリビア様は普段から見惚れるくらいの美女だけれど、腰までの長さのある真っ直ぐで綺麗なブロンドの髪を今日はフワフワと緩くカールさせてハーフアップにしているのは新鮮で、綺麗で、間違い無く今日の主役はオリビア様だった。
式前、続々と祝いの挨拶に訪れる客人達をお兄様と捌き、やっと身内だけの時間が出来た。
今、控室に居るのはお父様、王妃様、お兄様に私とルーカス。
後はオリビア様の両親である公爵夫妻だけ。
私はオリビア様に近寄り、そっと純白の手袋をはめた手を握った。
「オリビア様、とても綺麗です。幼い頃から姉妹のように接してくださっていたオリビア様と、今日から本当の姉妹になれるなんて、こんな幸せなことはありません。」
「ふふっ。ありがとうシャーロット。私も貴方とやっと本当の姉妹になれて嬉しいわ。」
私の手を握り返して嬉しそうに微笑むオリビア様。本当に綺麗です。
この喜ばしい雰囲気の中、皆、なごやかに談話し、そろそろ式が始まるからと綺麗な花嫁に後ろ髪を引かれつつ、皆で部屋を後にする。
式場で待ち構えるお兄様のもとへオリビア様が歩み寄るスタイルなので、オリビア様はもう暫くこの控室に待機予定になっていた。
=============
シンと静まり返った控室に、ガチャリと、扉の開く音が響く。
ベールを頭から被って椅子に座っていた花嫁は、部屋に入って来た人物を見るなり椅子から腰を上げ後退る。
入って来た人物の青白く常軌を逸したその顔は、もはや正気を保っているとは言えなかった。
「イザベラ様……!」
ゆらりゆらりと近づいてくるイザベラは、ガシッと花嫁の手首を掴むとギリギリとその手に力を込める。
「どいつもこいつも……何故私の邪魔をするの……何故私の言う事を聞かない?私に必要の無いモノなんて要らない……逆らうモノなんて要らないのよ!!」
次の瞬間、花嫁の掴まれた手首にチクリと痛みが走り、イザベラがニタリと笑った。
「フ……フフッ……これでお前は終わりよ…………次は一番邪魔なヘンリーを……」
「次なんてありません。」
「!?」
そう言って、イザベラに手首を掴まれている花嫁はその手を振り解き、頭から被っていたベールを床にバサリと落とした。
床にはベールと一緒に外された綺麗なブロンドのウィッグも落ちている。
イザベラは花嫁の顔を見て目を見開いた。
「シャーロット!!」
「お母様、貴方にはもう次なんて無いのですよ?」
シャーロットがニコリと微笑んだ直後、扉が勢いよく開き、大勢の警備隊員と共にヘンリーが控室に入って来る。
ヘンリーはイザベラとシャーロットの間に割って入ると、背中にシャーロットを隠しイザベラから距離を取った。
そして瞬く間にイザベラを警備隊が拘束し、暴れようとするその動きを封じた。
「私を騙したのか!!」
「騙す?貴方が常日頃から私達の命を狙っていると百も承知なのに、控室に花嫁を1人で残す筈がないでしょう。警備もおらず、部屋に花嫁だけのこの状況は普通に考えれば罠だと誰もがすぐに気付く筈です。」
鬼の形相で睨むイザベラを、ヘンリーも冷ややかに睨み返す。
「貴方は既にその判断も出来なくなってしまったようですね。」
「なんですって!?」
「貴方はもう終わりです。」
ヘンリーがそう言い終えるとほぼ同時に、背後からドサっと鈍い音がした。
振り返るとシャーロットが意識無く倒れており、ヘンリーは床に膝をついて優しく抱き起こす。
「「シャーロット!!」」
「お姉様!!」
遅れて控室に入って来た王妃とオリビア、ルーカスが慌ててシャーロットに駆け寄った。
シャーロットは皆の呼び掛けに、ピクリとも反応を示さない。
「フ……フハハ……アーハハハッ!!」
取り押さえられても、なお暴れようともがくイザベラは髪を乱しながら狂気じみた顔で高笑いし、皆に囲まれる中で目を閉じるシャーロットを睨んだ。
「終わりなのはシャーロットよ!もう二度と目を覚まさないわ!最期まで私の邪魔をして本当に馬鹿な子ね。いい気味よ!!」
「…………黙れ。」
高笑いし続けるイザベラは夥しい殺気を受け、ビクッと体を震わす。
イザベラはこの場にいる全員から殺意を感じ、体がカタカタと震えるのを止めることが出来ない。
「その汚らわしい口でシャーロットの名を呼ぶな。」
ヘンリーの怒気と殺意のこもった声が控室に響き渡った。
純白のドレスを身に纏ったオリビア様は普段から見惚れるくらいの美女だけれど、腰までの長さのある真っ直ぐで綺麗なブロンドの髪を今日はフワフワと緩くカールさせてハーフアップにしているのは新鮮で、綺麗で、間違い無く今日の主役はオリビア様だった。
式前、続々と祝いの挨拶に訪れる客人達をお兄様と捌き、やっと身内だけの時間が出来た。
今、控室に居るのはお父様、王妃様、お兄様に私とルーカス。
後はオリビア様の両親である公爵夫妻だけ。
私はオリビア様に近寄り、そっと純白の手袋をはめた手を握った。
「オリビア様、とても綺麗です。幼い頃から姉妹のように接してくださっていたオリビア様と、今日から本当の姉妹になれるなんて、こんな幸せなことはありません。」
「ふふっ。ありがとうシャーロット。私も貴方とやっと本当の姉妹になれて嬉しいわ。」
私の手を握り返して嬉しそうに微笑むオリビア様。本当に綺麗です。
この喜ばしい雰囲気の中、皆、なごやかに談話し、そろそろ式が始まるからと綺麗な花嫁に後ろ髪を引かれつつ、皆で部屋を後にする。
式場で待ち構えるお兄様のもとへオリビア様が歩み寄るスタイルなので、オリビア様はもう暫くこの控室に待機予定になっていた。
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シンと静まり返った控室に、ガチャリと、扉の開く音が響く。
ベールを頭から被って椅子に座っていた花嫁は、部屋に入って来た人物を見るなり椅子から腰を上げ後退る。
入って来た人物の青白く常軌を逸したその顔は、もはや正気を保っているとは言えなかった。
「イザベラ様……!」
ゆらりゆらりと近づいてくるイザベラは、ガシッと花嫁の手首を掴むとギリギリとその手に力を込める。
「どいつもこいつも……何故私の邪魔をするの……何故私の言う事を聞かない?私に必要の無いモノなんて要らない……逆らうモノなんて要らないのよ!!」
次の瞬間、花嫁の掴まれた手首にチクリと痛みが走り、イザベラがニタリと笑った。
「フ……フフッ……これでお前は終わりよ…………次は一番邪魔なヘンリーを……」
「次なんてありません。」
「!?」
そう言って、イザベラに手首を掴まれている花嫁はその手を振り解き、頭から被っていたベールを床にバサリと落とした。
床にはベールと一緒に外された綺麗なブロンドのウィッグも落ちている。
イザベラは花嫁の顔を見て目を見開いた。
「シャーロット!!」
「お母様、貴方にはもう次なんて無いのですよ?」
シャーロットがニコリと微笑んだ直後、扉が勢いよく開き、大勢の警備隊員と共にヘンリーが控室に入って来る。
ヘンリーはイザベラとシャーロットの間に割って入ると、背中にシャーロットを隠しイザベラから距離を取った。
そして瞬く間にイザベラを警備隊が拘束し、暴れようとするその動きを封じた。
「私を騙したのか!!」
「騙す?貴方が常日頃から私達の命を狙っていると百も承知なのに、控室に花嫁を1人で残す筈がないでしょう。警備もおらず、部屋に花嫁だけのこの状況は普通に考えれば罠だと誰もがすぐに気付く筈です。」
鬼の形相で睨むイザベラを、ヘンリーも冷ややかに睨み返す。
「貴方は既にその判断も出来なくなってしまったようですね。」
「なんですって!?」
「貴方はもう終わりです。」
ヘンリーがそう言い終えるとほぼ同時に、背後からドサっと鈍い音がした。
振り返るとシャーロットが意識無く倒れており、ヘンリーは床に膝をついて優しく抱き起こす。
「「シャーロット!!」」
「お姉様!!」
遅れて控室に入って来た王妃とオリビア、ルーカスが慌ててシャーロットに駆け寄った。
シャーロットは皆の呼び掛けに、ピクリとも反応を示さない。
「フ……フハハ……アーハハハッ!!」
取り押さえられても、なお暴れようともがくイザベラは髪を乱しながら狂気じみた顔で高笑いし、皆に囲まれる中で目を閉じるシャーロットを睨んだ。
「終わりなのはシャーロットよ!もう二度と目を覚まさないわ!最期まで私の邪魔をして本当に馬鹿な子ね。いい気味よ!!」
「…………黙れ。」
高笑いし続けるイザベラは夥しい殺気を受け、ビクッと体を震わす。
イザベラはこの場にいる全員から殺意を感じ、体がカタカタと震えるのを止めることが出来ない。
「その汚らわしい口でシャーロットの名を呼ぶな。」
ヘンリーの怒気と殺意のこもった声が控室に響き渡った。
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