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憤怒

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「シャーロット!!また私の身代わりになるなんて!!さっき私が言った事をもう忘れてしまったの!?」

「オリビア様…………」


慌てて下りて来たオリビア様に思い切り抱き締められて怒られた。…………く、苦しい。


「ごめんなさい。でも、オリビア様もオーウェン様も無事で良かったです。」


「もう、貴方ってば……。」


オリビア様が眉尻を下げ目を潤ませる。


騒ぎを聞きつけ使用人達がバタバタと集まり出した。

お兄様とオーウェン様が周りに指示を出しているのを横目に見ながら、アンソニーが私達の方へ近付いて来る。

アンソニーとオリビア様は今日が初対面なのだけれど、アンソニーはオリビア様には目もくれず私を見据えてズンズンと歩いて来た。


「シャーロットは馬鹿なの?」

「…………はい?」


何よいきなり!

開口一番に「馬鹿」呼ばわりされる筋合いは無いんですけど!?


睨んでくるアンソニーに私も負けじと睨み返す。


「君は王女としての自覚があるのか?王女が身代わりになるなんて有り得ない!こんな奴らの心配をするよりも、まず自分の心配をしろよ!」


オリビア様とオーウェン様を指差しながらアンソニーが一気に捲し立てる。


ーーこんな奴ら?


アンソニーの言い草にカチンときた私は足早にアンソニーの目の前まで行き仁王立ちをした。


なんかじゃないわ。私にとってオリビア様とオーウェン様は存在なの。」


私がグイッと一歩前へ出るとアンソニーが勢いに負けて一歩下がる。


「貴方こそ、自分の立場が分かっているのかしら?お母様を味方に付けている時点で、この国での貴方の置かれている状況はかなり悪いのよ。お母様が国一番の嫌われ者だって知らなかったの?それともそれを承知で来たのかしら?何の魂胆があるのか知らないけれど、自国の情報を敵国に売り飛ばしてる人の考えそうな事なんてすぐにバレるんだからね。そもそも、そんな人に私の大切な人達をとやかく言う筋合いなんて最初からないのよ!」


私は言われた何倍にもして言い返し、唖然として固まっているアンソニーを思い切り睨んでやった。

今まで、こんなに他人に対して怒ったり言い返したりした事はなかった。

私もやれば出来るじゃないの。


「シャーロット~!!私も貴方が大好きよ~!愛してるわ!!」

「グエッ」


オリビア様が私に飛び付き力強く抱き締められて、思わず変な声が出てしまった。

ギュウギュウ抱き締められながらも、私は隣にいたルーカスにドヤ顔をして見せる。


「ルーカス聞いてた?私だってやれば出来るのよ。今の言い方ってば、悪役っぽかったでしょ!」

「…………うん、聞いてたけどね…………お姉様の悪役の基準って何なの?さっきのセリフだとオリビア様とオーウェンをお姉様に更に惚れさせるだけだった気がするよ。''悪''というか……なんかもうカッコ可愛いよね。」

「なんで!?」


私がショックを受けていると、ルーカスがやれやれといった感じに肩を竦めて周りを見ろと促した。

促された先には、頬を染めウットリとした表情で私を見つめるオリビア様とオーウェン様が…………そして、さっきまで唖然としていたアンソニーが今度は目をキラキラと輝かせて私を見ているではないか。………………本当になんで?


「僕にあんな事を言ったのはシャーロットが初めてだよ。とても興味深いね。僕もシャーロットの大切な存在になったのなら、あの2人と同じように君に特別扱いしてもらえるの?」

「……………………はい?」

「僕もシャーロットの特別枠に入れるように頑張ろうかな。」



ーーいやいや、頑張らなくて結構ですけど?


目を輝かせて迫ってくるアンソニーにたじろいでいると、後ろからただならぬ気配を感じて背中がゾクリとした。

振り返れば、お兄様達4人から大量に殺気が溢れ出ていて思わず後退りする。



「ボヴェルデンへ強制送還させようかな。」

「私とシャーロットの間に割り込むなんて許さないわ……!」

「…………シャーロット様に害をなす者は排除しなくては。」

「ヤバいなぁ。アンソニー的にヒロインポジションがお姉様に変わっちゃってるじゃん!…………やっぱり昨日アイツらをくっつけちゃったから……でもアイツらがくっついてもこんなシナリオじゃなかった筈なのに……。」



ーーなんか各々ブツブツ呟いていて怖いわ。



「今まではイザベラ様に命令されてシャーロットに纏わりついていたんだけど、これからは本気で君を落としにいこうかな。」

「嫌です。」



ーー貴方、サラッとお母様と共犯だって自供しちゃってますけど大丈夫ですか。

どこに敵だと分かっていて仲良くする人がいるんだよ。絶対無理。

コラコラ、何勝手に手を握ってるんですか。離してよ!

ほ、ほら!後ろの4人からの殺気が強くなったじゃないの!!貴方ワザとやってるでしょ?やめてよ!


怖い怖い!!私が怖いから~!!



なんとかアンソニーの手を振り払って逃げる私は、2階の柱の陰に隠れて私達を見下ろしている人物に気づかなかった。






「…………あの子……本当に私の邪魔をするつもりなのね。」


ギリギリと右手親指の爪を噛み忌々しそうにシャーロットを2階から睨みつけるイザベラ。




その姿を冷ややかな目で見上げるヘンリーに、イザベラもまた気付いていないのであった。

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