上 下
4 / 27

設定

しおりを挟む
ルーカスの説明によると、ゲームの始まりはお兄様の婚約者を選ぶパーティーだったそうだ。
その中から選ばれた5人の候補者をお城に長期滞在させ、最終的に一人を選ぶ。
何故候補者が、5人もいるのかというと、オリビア様を亡くしたお兄様が暫くは婚約者なんていらないと渋っていた為に、時間をかけてお兄様を落とす策だったのだろう。
そしてその候補者の中にヒロインが選ばれ、誰かと結ばれるまでがゲーム内容なのだとか。

…………そう、。お兄様の婚約者候補としてお城に滞在しているのにも関わらず、必ずしもお兄様と恋人同士になるとは限らないらしい。……何だそれ。

ヒロインの攻略対象者はお兄様の他に、お兄様付き護衛のオーウェン様、後にお母様と共謀?する為に送られてくるという隣国の第三王子、ヒロインが通う学園の先生と、三人もお兄様以外の攻略対象者がいる。

なんだかストーリーの内容にモヤモヤするモノを感じるけれど前向きに考えてみよう。オリビア様が死んでしまう事件を阻止すれば、そもそもゲームのストーリーが始まらないのではないのか?
婚約者候補としてヒロインがお城にさえ来なければ、お兄様やついでに護衛のオーウェン様との接点はゼロになる。
多分、隣国の第三王子とも。

ヒロイン予定者には申し訳ないけれど、お兄様と関わりの無い所で幸せになって欲しい。


ということで、私とルーカスは全力でお茶会でのお母様の陰謀を阻止する事にしたのだ。




ーーお茶会当日。私は自分の部屋でルーカスと緊張しながら開催時刻を待っていた。

昨夜は緊張のあまり全然眠れなかった。
今も心臓がドキドキしっぱなしで気持ち悪くなってきたし。何かお喋りでもして気を紛らわせないと……。

私は、ルーカスにゲームの話しを聞いていた時にふと疑問に思った事を質問してみる。


「ねえ、ちなみに私とルーカスはゲームの中ではどういった立ち位置だったの?お兄様の味方?それとも、お母様の子だから悪役とか?」


たとえゲームの中であっても、お兄様の味方でありたい。
もし悪役だったなら立ち直れないかも……。


ドキドキしながらルーカスをジッと見つめて答えを待っていると、ルーカスはウットリとした表情で私を見つめ返して微笑んだ。


「今日のお姉様はとっても綺麗だね。まあ、いつも綺麗で可愛いんだけど。……こんなにな綺麗で可愛いお姉様が脇役だったのは悔しいけれど、あまりストーリーには関係ないただのモブだったよ。お姉様も僕も、少ししか出番の無い、ただのモブだったさ。安心した?」

「フフッ。ええ、安心したわ。お兄様を苦しめる悪役じゃなくて本当に良かった。」


パチンとウィンクして戯けて見せるルーカスに笑いながら、ちょっとだけ緊張が解れたような気がした。


「ありがとう、ルーカス。」

「そろそろ行こうか。お姉様、頑張ろうね。」


返事をする代わりに、緊張で少し指先の冷たくなったルーカスの手をギュッと握り手を繋いだ。

ルーカスは一瞬目を瞠ったけれど、震える私の手に気付いてギュッと握り返してくれた。

私の手を引きリードしてくれているルーカスをチラッと見上げる。

ルーカスは少し頬を染めながらも、しっかりと手を繋ぎ私の隣を歩いてくれている。


私はその手の温もりにホッとしつつ、気合いを入れ直してルーカスと2人、お茶会へと続く廊下を歩いたのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗
恋愛
私は、恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』の悪役令嬢アルフィアに生まれ変わった。 彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。その性格故に、ゲームの主人公を虐めて、最終的には罪を暴かれ罰を受けるのが、彼女という人間だ。 当然のことながら、私はそんな悲惨な末路を迎えたくはない。 私は、ゲームの中でアルフィアが取った行動を取らなければ、そういう末路を迎えないのではないかと考えた。 だが、それを実行するには一つ問題がある。それは、私が『Magical stories』の一つのルートしかプレイしていないということだ。 そのため、アルフィアがどういう行動を取って、罰を受けることになるのか、完全に理解している訳ではなかった。プレイしていたルートはわかるが、それ以外はよくわからない。それが、私の今の状態だったのだ。 だが、ただ一つわかっていることはあった。それは、アルフィアの性格だ。 彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。それならば、彼女のような性格にならなければいいのではないだろうか。 そう考えた私は、地味に謙虚に生きていくことにした。そうすることで、悲惨な末路が避けられると思ったからだ。

神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。 そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。 日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する

白バリン
ファンタジー
 田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。  ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。  理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。  「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。  翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。  数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。  それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。  田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。  やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。  他サイトでも公開中

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵
ファンタジー
 貧乏な伯爵家に生まれたレイラ・アルタイスは貴族の中でも珍しく、全部の魔法属性に適性があった。  けれども、嫉妬から悪女という噂を流され、婚約者からは「利用する価値が無くなった」と婚約破棄を告げられた。  おまけに、冤罪を着せられて王都からも追放されてしまう。  婚約者をモノとしか見ていない婚約者にも、自分の利益のためだけで動く令嬢達も関わりたくないわ。  そう決めたレイラは、公爵令息と形だけの結婚を結んで、全ての魔法属性を使えないと作ることが出来ない魔道具を作りながら気ままに過ごす。  けれども、どうやら魔道具は世界を恐怖に陥れる魔物の対策にもなるらしい。  その事を知ったレイラはみんなの助けにしようと魔道具を広めていって、領民達から聖女として崇められるように!?  魔法を神聖視する貴族のことなんて知りません! 私はたくさんの人を幸せにしたいのです! ☆8/27 ファンタジーの24hランキングで2位になりました。  読者の皆様、本当にありがとうございます! ☆10/31 第16回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。  投票や応援、ありがとうございました!

処理中です...