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大丈夫って言ったじゃん……。
しおりを挟む「あの第二王子はエラくお前に御執心のようだな」
「第二王子?……あぁ、ウィリアム王子ですか?そ、そうですね、よく会いに来てくださってますよね」
「よくというか、毎日ではないか」
フィンレー様にツッコまれ、顔が熱くなる。……うぬぬっ……フィンレー様の表情が分からなくても揶揄われているのが分かって悔しい。
「お前たちが楽しそうだったから精気を喰うのは少し我慢してやったんだぞ?そう睨むな」
「た、楽しそうって……まあ、確かに楽しかったですけれども……!」
クックッと笑いながらそう言われてますます顔が熱くなった。きっと今、私の顔は真っ赤でしょうね。言われなくてもわかってますよ。
フィンレー様に揶揄われている私は寝る支度も万全で、いざ寝ようとベッドに乗り上げたところでフィンレー様に捕まってしまったのだ。
「前にイレーネに言われたから、今日はちゃんと約束を守って寝る時間に来てやったぞ。嬉しいだろう?」
「あ、はい。ありがとうございます。覚えていてくださったんですね。嬉しいです!」
「そうだろう、そうだろう」と満足気に言いながら近付いてくるフィンレー様に待ったをかけ、ベッドに潜り込むといつ意識を失っても大丈夫なように上布団をスッポリと顎まで被った。よし、これで準備万端。
「お待たせしました。いつでもどうぞ!」
今日は最初から寝てるから精気を食べられても倒れちゃって皆に迷惑をかける心配も無いもんね。
「……イレーネは本当に潔いというかバカ素直というかバカというか……」
「ちょっと待った。最後の方は悪口になっちゃってますけど」
え?私、今からフィンレー様に精気あげるんですよね?あげるのにディスられてる?
「ハハッ。お前は裏表の無いバカ正直で素直な良い奴だと褒めてるんだ。そんなに不貞腐れるな」
「なんか褒められてる気が全然しないんですけど」
「お前のその素直な性格をあの王子も気に入ったんだろうな。王族にもなかなか煩わしい事が多いだろうし」
フィンレー様に言われてウィリアム王子に初めて会った日のことを思い出した。
あの時、話しをしてくれたウィリアム王子はとっても辛そうな顔をしていたっけ。
きっと、お城では私が想像する以上に大変な思いをしているのかもしれない。
ここに来ることで、私に会ってお話しすることで、そんなお城での辛い思いが少しでも和らいだらいいな。
ウィリアム王子がここへ来てくれる度にそう願わずにはいられない。
毎日嬉しそうにしてくれているから、ちょっとはそうであると思いたいけど。
ああ、でも明日、私はちゃんと起きられるのかな。この前倒れた時は意識が回復するまでにそんなに時間はかからなかったから大丈夫かな。……うん、一応フィンレー様に加減してもらえるようにお願いしておこうかな。
「あの、フィンレー様。大丈夫だとは思うんですが、明日はちゃんと起きられるように手加減して精気を食べてもらえると有難いです」
「お?そうかそうか。俺に精気を食われ過ぎて起きれない状態だったら王子が来た時に心配するからなぁ?寝てたらイチャイチャ出来ないしなぁ?お前たちラブラブだもんなぁ?」
「イッ…?!イ、イチャイチャなんてしてませんけど?!」
私の慌てる様子が面白いのか、楽しそうに笑うフィンレー様に暫く揶揄われ……私はベッドに横になったまま顔を真っ赤にしながらそれに耐えたのだった。
そして一頻り笑って満足したらしいフィンレー様は、やっとベッドの傍に近付いてきて私の精気を食べ始めた。
「あ、あの、本当に加減してくださいね?お願いしますよ?」
「わかったわかった。大丈夫だ。任せておけ」
…………そう、言っていたのに。
目を覚ました私は、心配そうに私を覗き込む家族と今にも泣き出しそうに顔を歪めるウィリアム王子の姿が見えた瞬間、約束が守られなかったことを悟った。
ーーーーフィンレー様の言う「大丈夫」は、信用しちゃダメなやつだった……。
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