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グイグイきますね……
しおりを挟むあれから婚約の話はあれよあれよという間に進んで、数日後には正式なウィリアム王子の婚約者として認定された。
うん?正式な婚約者?
と、首を傾げる私にウィリアム王子が
「フフッ、大丈夫だよ。これは形式的なものだから。正式な形で僕とイレーネが婚約したってことをちゃんと書類に残しておかないと後々面倒な事になるから、ね?」
なんて、うっとりするくらい綺麗な笑顔でそう言うから、ドキドキと煩い胸を押さえて必死にコクコクと頷いて納得したけど。一応、納得したけど、これでいいのか?
「うぅ……ウィリアム王子の顔が良すぎて思考回路が停止してしまう……」
「フフッ、イレーネは本当に僕の顔が好きだよね。イレーネと出会って初めてこの顔に生まれてきて良かったと思えたよ」
「え?ウィリアム王子は自分の顔が嫌いなんですか?」
そんなに綺麗なのに?きっと世界中の老若男女が羨ましがるお顔立ちをしていますよ?
首を傾げて不思議がる私にウィリアム王子が肩を竦めてみせる。
「こんな金髪碧眼なんて王族丸出しの色、僕には似合っていないっていつも思っているよ」
自嘲気味にそう言って笑うウィリアム王子がなんだかとっても悲しそうに見えて、思わずウィリアム王子の両手を取りギュッと強く握った。
「私はウィリアム王子に初めて会った時から、その青空みたいに透き通った綺麗な瞳も、陽の光を浴びてキラキラ光る綺麗な金色の髪も、カッコいいウィリアム王子にすごく似合っているなって思ってドキドキしながら見惚れてたんです!だから、そんな事言わないでくださいっ!」
あ、ヤバッ。興奮し過ぎて鼻息が荒くなってしまった。ウィリアム王子が目を瞠いて固まっている。えぇ……どうしよう。変態っぽくて引いちゃった?
手を握ったままウィリアム王子を窺っていると、王子はすぐにとろんと蕩けるように甘い笑みを浮かべて私を見つめ返した。
「フフッ、イレーネは初めて会った時から僕にドキドキしてくれてたの?凄く嬉しいよ」
うっそりと笑んで繋いでいる私の手の甲にチュッとキスを落としたウィリアム王子はやっぱり綺麗で、それでいてとってもカッコよくて。
ウィリアム王子と一緒にいると、私の心臓はドキドキしっぱなしで困る。
…………困るのに、ウィリアム王子は頻繁にウチにやって来るようになった。婚約が正式に決まってから、ほぼ毎日。
王子なんだから色々と忙しい筈なのに、毎日来るもんだから、ちょっと心配になって聞いてみた。
「大丈夫。あんなに嫌だった王子としての勉強も公務も、それを終わらせたらイレーネに会えると思うとサクサクこなせるようになったんだ。だから周りも文句は言わないし。……まあ、もし文句があっても、誰にも何も言わせないし」
「で、でも、毎日ウチに来てくれてることで、ウィリアム王子の立場とかが悪くなったりしたら……」
「僕のお城での立場なんてもともと無いようなものだからいいんだ。お城よりも、侯爵家の……イレーネの傍に居る方がいい。…………ダメ?」
「うぅ……ダメとかじゃ全然無いんですけど、ドキドキしっぱなしで私の心臓がもたないかもです……」
上目遣いに「ダメ?」って言うウィリアム王子の可愛さにノックアウトされ悶える。カッコいいのに可愛いとか、最強かよ。
「フフッ、嬉しいな。もっともっと僕にドキドキしてくれたらいいのに」
「あぅっ……それだと私、死んじゃいますぅ……」
私の耳元で囁くウィリアム王子が、本当に楽しそうに笑ってくれているから。
私の傍がいいって言ってくれるから。
ドキドキし過ぎて困る件については、私がウィリアム王子のカッコ良さに慣れるまでのことだと思って我慢することにしよう。うん、そうしよう。
チラッとウィリアム王子に目をやると、王子がすぐに気付いてニッコリと満面の笑みを向けてくる。
…………はぁ、カッコいい……!!
果たして、ウィリアム王子のカッコ良さに慣れる日がくるのだろうかと、ドキドキと煩い胸を押さえながら暫く悶え続けていた私なのであった。
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