上 下
22 / 25

グイグイきますね……

しおりを挟む

あれから婚約の話はあれよあれよという間に進んで、数日後には正式なウィリアム王子の婚約者として認定された。

うん?正式な婚約者?

と、首を傾げる私にウィリアム王子が


「フフッ、大丈夫だよ。これは形式的なものだから。正式な形で僕とイレーネが婚約したってことをちゃんと書類に残しておかないと後々面倒な事になるから、ね?」


なんて、うっとりするくらい綺麗な笑顔でそう言うから、ドキドキと煩い胸を押さえて必死にコクコクと頷いて納得したけど。一応、納得したけど、これでいいのか?


「うぅ……ウィリアム王子の顔が良すぎて思考回路が停止してしまう……」

「フフッ、イレーネは本当に僕の顔が好きだよね。イレーネと出会って初めてこの顔に生まれてきて良かったと思えたよ」

「え?ウィリアム王子は自分の顔が嫌いなんですか?」


そんなに綺麗なのに?きっと世界中の老若男女が羨ましがるお顔立ちをしていますよ?


首を傾げて不思議がる私にウィリアム王子が肩を竦めてみせる。


「こんな金髪碧眼なんて王族丸出しの色、僕には似合っていないっていつも思っているよ」


自嘲気味にそう言って笑うウィリアム王子がなんだかとっても悲しそうに見えて、思わずウィリアム王子の両手を取りギュッと強く握った。


「私はウィリアム王子に初めて会った時から、その青空みたいに透き通った綺麗な瞳も、陽の光を浴びてキラキラ光る綺麗な金色の髪も、カッコいいウィリアム王子にすごく似合っているなって思ってドキドキしながら見惚れてたんです!だから、そんな事言わないでくださいっ!」


あ、ヤバッ。興奮し過ぎて鼻息が荒くなってしまった。ウィリアム王子が目を瞠いて固まっている。えぇ……どうしよう。変態っぽくて引いちゃった?

手を握ったままウィリアム王子を窺っていると、王子はすぐにとろんと蕩けるように甘い笑みを浮かべて私を見つめ返した。


「フフッ、イレーネは初めて会った時から僕にドキドキしてくれてたの?凄く嬉しいよ」


うっそりと笑んで繋いでいる私の手の甲にチュッとキスを落としたウィリアム王子はやっぱり綺麗で、それでいてとってもカッコよくて。

ウィリアム王子と一緒にいると、私の心臓はドキドキしっぱなしで困る。

…………困るのに、ウィリアム王子は頻繁にウチにやって来るようになった。婚約が正式に決まってから、ほぼ毎日。

王子なんだから色々と忙しい筈なのに、毎日来るもんだから、ちょっと心配になって聞いてみた。


「大丈夫。あんなに嫌だった王子としての勉強も公務も、それを終わらせたらイレーネに会えると思うとサクサクこなせるようになったんだ。だから周りも文句は言わないし。……まあ、もし文句があっても、誰にも何も言わせないし」

「で、でも、毎日ウチに来てくれてることで、ウィリアム王子の立場とかが悪くなったりしたら……」

「僕のお城での立場なんてもともと無いようなものだからいいんだ。お城よりも、侯爵家の……イレーネの傍に居る方がいい。…………ダメ?」

「うぅ……ダメとかじゃ全然無いんですけど、ドキドキしっぱなしで私の心臓がもたないかもです……」


上目遣いに「ダメ?」って言うウィリアム王子の可愛さにノックアウトされ悶える。カッコいいのに可愛いとか、最強かよ。


「フフッ、嬉しいな。もっともっと僕にドキドキしてくれたらいいのに」

「あぅっ……それだと私、死んじゃいますぅ……」


私の耳元で囁くウィリアム王子が、本当に楽しそうに笑ってくれているから。

私の傍がいいって言ってくれるから。

ドキドキし過ぎて困る件については、私がウィリアム王子のカッコ良さに慣れるまでのことだと思って我慢することにしよう。うん、そうしよう。


チラッとウィリアム王子に目をやると、王子がすぐに気付いてニッコリと満面の笑みを向けてくる。

…………はぁ、カッコいい……!!


果たして、ウィリアム王子のカッコ良さに慣れる日がくるのだろうかと、ドキドキと煩い胸を押さえながら暫く悶え続けていた私なのであった。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】別れを告げたら監禁生活!?

みやこ嬢
恋愛
【2023年2月22日 完結、全36話】 伯爵令嬢フラウの婚約者リオンは気難しく、ほとんど会話もない関係。 そんな中、リオンの兄アルドが女性を追い掛けて出奔してしまう。アルドの代わりにリオンが侯爵家の跡取りとなるのは明らか。 フラウは一人娘で、結婚相手には婿入りをしてもらわねばならない。急遽侯爵家の跡継ぎとなったリオンに配慮し、彼からは言い出しにくいだろうからと先回りして婚約の撤回を申し出る。アルド出奔はみな知っている。こんな事情なら婚約破棄しても周りから咎められずに済むし、新たな婚約者を見つけることも容易だろう、と。 ところが、リオンはフラウの申し出を拒否して彼女を監禁した。勝手に貴族学院を休まされ、部屋から出してもらえない日々。 フラウは侯爵家の別邸から逃げることができるのか。 *** 2023/02/18 HOTランキング入りありがとうございます♡

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

死に役はごめんなので好きにさせてもらいます

橋本彩里(Ayari)
恋愛
フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。 前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。 愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。 フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。 どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが…… まったりいきます。5万~10万文字予定。 お付き合いいただけたら幸いです。 たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます!

役立たずの聖女はいらないと他国に追いやられましたが、色々あっても今のほうが幸せです

風見ゆうみ
恋愛
リーニ・ラーラルは男爵令嬢であり、ノーンコル王国の聖女だ。 聖なる力が使えることで、王太子殿下であるフワエル様の婚約者になったわたしは、幼い頃から精一杯、国に尽くそうとしていた。 わたしは他の国の聖女に比べると落ちこぼれで、フワエル様に愛想を尽かされてしまう。 そして、隣国であるソーンウェル王国の優秀な聖女、ルルミー様と落ちこぼれのわたしを交換すると言われ、わたしはソーンウェル王国に向かうことになる。 ソーンウェル王国に迎えられたことにより、わたしが落ちこぼれだった理由やルルミー様の真実を知ることになる。 ※「小説家になろう」さんでも公開しています。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...