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お兄様が元気になりました!

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「いいかい?イレーネ。体調が悪くなったらすぐに言うんだよ」

「はい」

「いい?イレーネ。お母様のそばから離れないでちょうだいね?」

「はい」

「イレーネ、大丈夫?大人しくしてるんだよ?挨拶が済んだら様子を見にくるからね」

「はい」


お父様、お母様、お兄様に囲まれ、私は何度も大人しく返事をする。


お兄様の部屋で意識を無くしてから、私は2日間、目を覚さなかったらしい。目覚めたら自分のベッドに寝かされていた。周りには心配そうに私を覗き込んでいる家族の姿が。みんな泣いていて、その中にはお兄様もいた。

ーー良かった。お兄様がちゃんと生きている。

それが嬉しくて嬉しくて、私もみんなと一緒に泣いた。

お父様とお母様は私がお兄様の部屋で倒れていたと聞いてショックのあまり卒倒しそうになったとか。心配かけてごめんなさい。
あれからお兄様はすぐに意識を取り戻して早々と動けるようになったらしい。
お兄様の回復力が凄まじかったのに対し、私はというと目を覚ましてから暫くは体に力が入らなくて全く起き上がることが出来なかった。
でも、お兄様の成人披露パーティーには絶対に出たくって、全力で体力回復に努めた。その甲斐あってか、今日の披露パーティーに参加する許可が下りたのだ。……心配されまくってるけどね。
実際、まだ長く立っていると辛いからヤバイと思ったら倒れちゃう前に早々に別の部屋に避難しようと思う。これ以上みんなに迷惑はかけられないからね。


「イレーネ、本当に大丈夫?イレーネがこんなに素直な返事をするなんて……やっぱり心配だな」

「……お兄様、何気に失礼ですよ。私はいつも素直です」


私が恨めし気にジロリと睨むと、お兄様は肩をすくめて苦笑しつつ労わるように私の頭を優しく撫でてくれた。


「ちょっとでも体調がおかしいと思ったらすぐに休むんだよ」

「はい、お兄様」


私はいつも良い子ですから何度でも素直なお返事をしますとも。
ドヤ顔で頷く私に目を細めながらお兄様が私を軽々と抱き上げる。


「そろそろ時間かな。僕の可愛いお姫さま。僕と一緒に会場へ行ってくれるかい?」

「喜んで!!」


ギュッとお兄様の首に抱き付いて2人でクスクスと笑い合った。

お兄様に抱かれたまま、パーティー会場となっている大広間へと向かう。


お兄様が、無事にこの日を迎えられて良かった。今日はまた一段と凛々しく見えるお兄様の横顔を見つめながら、心の底からそう思った。

集まっていただいた皆様に私の世界一カッコいいお兄様を見ていただかなくては!!

フンッフンッ!と鼻息荒く意気込んでいるうちにいつの間にか大広間の扉の前まで到着していた。


「さあ、イレーネ。中に入るよ」

「はい!」




いざっ、出陣っっ!!!





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