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第一部
4章-4
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カテリアーナとノワールの前に複数の猫たちが飛び出してきた。
「むっ! 囲まれたか」
ノワールがちっ! と舌打ちをする。
カテリアーナとノワールを囲んだ猫たちは、白と黒の毛のブチ猫、トラ模様のトラ猫、長毛種の猫など様々だ。顔にキズがあたっり、目がすわっていたり、少々ガラの悪い猫たちだが、目の前に現れたもふもふたちにカテリアーナは目を輝かせた。
「そこの姉ちゃん、命が惜しかったら、その妖精石を置いていきな」
「よしよし。もふもふね」
妖精石を要求したブチ猫は、カテリアーナに撫でられて、ゴロゴロと喉を鳴らす。
「ゴロゴロ……ふにゃあ~ん……じゃなくて! 妖精石を寄こせ!」
「いくら可愛い猫ちゃんでも、これをあげるわけにはいかないわ」
「猫ちゃんじゃねえ! 俺たちはケットシーだ!」
「あら? 妖精猫なのね。可愛い」
微笑ましくケットシーたちを見つめるカテリアーナにノワールは呆れ顔だ。
「カティはもふもふしていれば、何でもよいのか?」
「う~ん。ライオンやトラみたいな大型動物にはなかなか手が出せないわね」
「そういう問題ではない。こやつらはこのルゥナの森を根城にしているごろつきどもだぞ」
「でも、猫じゃない。あ、妖精猫だったわね」
和やかにノワールと話をしていたら、いつの間にか猫たちに縄で簀巻きにされていたカテリアーナだった。ノワールと背中合わせの形で……。
◇◇◇
簀巻きにされたカテリアーナとノワールはごろつき猫たちのアジトに連れてこられた。彼らのアジトはツリーハウスのようになっていたのだが、カテリアーナにはキャットタワーにしか見えない。
「油断したわね」
「そうだな」
ごろつき猫たちのリーダーは、最初にカテリアーナに絡んできたブチ猫のようだ。
「大人しく妖精石を渡していれば、こんな目に遭わずに済んだのにな」
「兄貴、娘は高く売れそうだぜ。ハイエルフだろう?」
彼らの会話を聞きとがめたカテリアーナは反論する。
「わたくし、ハイエルフではないわ。人間よ」
ハイエルフという種族はカテリアーナも知っている。子供の頃に読んだ絵本に出てきたからだ。
「そういえば、耳長じゃないな。人間にしてはきれいすぎる。ハーフエルフか?」
妖精と他種族の混血をハーフエルフというのだが、ラストリア王国ではそのような単語は使われないので、カテリアーナは首を傾げる。
「ハーフエルフとは妖精の血が混じっている者のことだ」
カテリアーナ疑問に答えてくれたのは、ノワールだった。
「そうなの? では『妖精の取り替え子』は何と言うの?」
「おい! 娘! お前『妖精の取り替え子』なのか?」
ブチ猫がカテリアーナに詰め寄る。
「そう言われて育ったけれど本当はどうなのか、わたくしにも分からないの」
「『妖精の取り替え子』なんざ、三百年間行われたことはないはずだぜ。もし、本当ならエルファーレンの国王が黙っていないはずだけどな」
だが、カテリアーナが十六歳になるまでエルファーレン王国は人間の国に接触してこなかった。もし、カテリアーナが生まれた時にエルファーレンの国王が『妖精の取り替え子』に気づいていれば、ラストリア王国に抗議してきたはずだ。
「そうであればわたくしは人間ということになるのだけれど……」
ブチ猫は思案するように前足を組む。
「姉ちゃんが人間なら売るわけにはいかねえな。妖精石を置いて、人間の国に帰りな。今回は見逃してやる」
「そういうわけにもいかないわ。わたくし、エルファーレン王国にお嫁にきたのよ」
相手がエルファーレンの国王フィンラスということは黙っておく。
「何で人間が妖精に嫁入りするんだ。そんな話は聞いたことがねえぞ」
その時、地響きとともにツリーハウスが揺れる。
見張り台に立っていたトラ猫がハウスの中に飛び込んでくる。
「兄貴、大変だ! ソゥレの森のやつらが殴り込んできやがった!」
「何だと!?」
ブチ猫は窓際により、地響きがする方向を見やる。窓という名の枠だけだが……。
「ちぃっ! 狙いはこれか?」
カテリアーナはブチ猫が懐から取り出したものを見ると、目を見開く。
「それ、マタタビモドキじゃないの! 今すぐ捨てなさい!」
「何!? これは新種のマタタビだぞ」
「よく似ているけれど、マタタビじゃなくて、マタタビモドキよ! 猫には毒なのよ。捨てなさい!」
マタタビモドキについてカテリアーナは説明し始める。
猫はマタタビが好きだ。大量に与えなければ、酔った状態になるだけで依存性はない。
ところが、マタタビモドキは一度味を知ってしまえば依存してしまう。効果が抜けてくると、禁断症状が出るので、抜け出せない。最後には体がボロボロになって死ぬ。
マタタビモドキはマタタビと似ているため、一見見分けがつかないのだが、薬学に精通したカテリアーナには分かった。
「それは本当なんだろうな? 姉ちゃん」
「この状況で嘘をついてどうするの。わたくしは薬学には詳しいのよ」
「何てこった! 偽物を掴まされたのか」
がっくりとブチ猫はうなだれる。
「それにしても、マタタビモドキというものは聞いたことがない。人間の国にしかないものなのか?」
ノワールが考え込んでいる。
「ノワールが知らないのであれば、そうではないの?」
妖精の国の薬学に詳しいカルスがここにいれば確かめることができたのだが、今頃はエルファーレンの王都に向かっている。
そうこうしているうちに、ソゥレの森の魔の手が迫ってきた。
「むっ! 囲まれたか」
ノワールがちっ! と舌打ちをする。
カテリアーナとノワールを囲んだ猫たちは、白と黒の毛のブチ猫、トラ模様のトラ猫、長毛種の猫など様々だ。顔にキズがあたっり、目がすわっていたり、少々ガラの悪い猫たちだが、目の前に現れたもふもふたちにカテリアーナは目を輝かせた。
「そこの姉ちゃん、命が惜しかったら、その妖精石を置いていきな」
「よしよし。もふもふね」
妖精石を要求したブチ猫は、カテリアーナに撫でられて、ゴロゴロと喉を鳴らす。
「ゴロゴロ……ふにゃあ~ん……じゃなくて! 妖精石を寄こせ!」
「いくら可愛い猫ちゃんでも、これをあげるわけにはいかないわ」
「猫ちゃんじゃねえ! 俺たちはケットシーだ!」
「あら? 妖精猫なのね。可愛い」
微笑ましくケットシーたちを見つめるカテリアーナにノワールは呆れ顔だ。
「カティはもふもふしていれば、何でもよいのか?」
「う~ん。ライオンやトラみたいな大型動物にはなかなか手が出せないわね」
「そういう問題ではない。こやつらはこのルゥナの森を根城にしているごろつきどもだぞ」
「でも、猫じゃない。あ、妖精猫だったわね」
和やかにノワールと話をしていたら、いつの間にか猫たちに縄で簀巻きにされていたカテリアーナだった。ノワールと背中合わせの形で……。
◇◇◇
簀巻きにされたカテリアーナとノワールはごろつき猫たちのアジトに連れてこられた。彼らのアジトはツリーハウスのようになっていたのだが、カテリアーナにはキャットタワーにしか見えない。
「油断したわね」
「そうだな」
ごろつき猫たちのリーダーは、最初にカテリアーナに絡んできたブチ猫のようだ。
「大人しく妖精石を渡していれば、こんな目に遭わずに済んだのにな」
「兄貴、娘は高く売れそうだぜ。ハイエルフだろう?」
彼らの会話を聞きとがめたカテリアーナは反論する。
「わたくし、ハイエルフではないわ。人間よ」
ハイエルフという種族はカテリアーナも知っている。子供の頃に読んだ絵本に出てきたからだ。
「そういえば、耳長じゃないな。人間にしてはきれいすぎる。ハーフエルフか?」
妖精と他種族の混血をハーフエルフというのだが、ラストリア王国ではそのような単語は使われないので、カテリアーナは首を傾げる。
「ハーフエルフとは妖精の血が混じっている者のことだ」
カテリアーナ疑問に答えてくれたのは、ノワールだった。
「そうなの? では『妖精の取り替え子』は何と言うの?」
「おい! 娘! お前『妖精の取り替え子』なのか?」
ブチ猫がカテリアーナに詰め寄る。
「そう言われて育ったけれど本当はどうなのか、わたくしにも分からないの」
「『妖精の取り替え子』なんざ、三百年間行われたことはないはずだぜ。もし、本当ならエルファーレンの国王が黙っていないはずだけどな」
だが、カテリアーナが十六歳になるまでエルファーレン王国は人間の国に接触してこなかった。もし、カテリアーナが生まれた時にエルファーレンの国王が『妖精の取り替え子』に気づいていれば、ラストリア王国に抗議してきたはずだ。
「そうであればわたくしは人間ということになるのだけれど……」
ブチ猫は思案するように前足を組む。
「姉ちゃんが人間なら売るわけにはいかねえな。妖精石を置いて、人間の国に帰りな。今回は見逃してやる」
「そういうわけにもいかないわ。わたくし、エルファーレン王国にお嫁にきたのよ」
相手がエルファーレンの国王フィンラスということは黙っておく。
「何で人間が妖精に嫁入りするんだ。そんな話は聞いたことがねえぞ」
その時、地響きとともにツリーハウスが揺れる。
見張り台に立っていたトラ猫がハウスの中に飛び込んでくる。
「兄貴、大変だ! ソゥレの森のやつらが殴り込んできやがった!」
「何だと!?」
ブチ猫は窓際により、地響きがする方向を見やる。窓という名の枠だけだが……。
「ちぃっ! 狙いはこれか?」
カテリアーナはブチ猫が懐から取り出したものを見ると、目を見開く。
「それ、マタタビモドキじゃないの! 今すぐ捨てなさい!」
「何!? これは新種のマタタビだぞ」
「よく似ているけれど、マタタビじゃなくて、マタタビモドキよ! 猫には毒なのよ。捨てなさい!」
マタタビモドキについてカテリアーナは説明し始める。
猫はマタタビが好きだ。大量に与えなければ、酔った状態になるだけで依存性はない。
ところが、マタタビモドキは一度味を知ってしまえば依存してしまう。効果が抜けてくると、禁断症状が出るので、抜け出せない。最後には体がボロボロになって死ぬ。
マタタビモドキはマタタビと似ているため、一見見分けがつかないのだが、薬学に精通したカテリアーナには分かった。
「それは本当なんだろうな? 姉ちゃん」
「この状況で嘘をついてどうするの。わたくしは薬学には詳しいのよ」
「何てこった! 偽物を掴まされたのか」
がっくりとブチ猫はうなだれる。
「それにしても、マタタビモドキというものは聞いたことがない。人間の国にしかないものなのか?」
ノワールが考え込んでいる。
「ノワールが知らないのであれば、そうではないの?」
妖精の国の薬学に詳しいカルスがここにいれば確かめることができたのだが、今頃はエルファーレンの王都に向かっている。
そうこうしているうちに、ソゥレの森の魔の手が迫ってきた。
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