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13(ライアン視点)
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「リナリアちゃん、入学おめでとう。制服とても似合っているわ。髪留めも品があって素敵ね」
「本当に良く似合っているね。絵師を呼んで二人を描いて欲しい位だ。入学おめでとう」
入寮後は特に問題なく日々が過ぎて、あっという間に入学式当日となった。
学校の式典用の建物は、校舎とは別棟になっていて生徒全員と保護者が入ってもまだまだ余裕がある程に広い。
緊張するリナリアと共に席に付き、式を終えた私達に両親が声を掛けてきた。
手紙でリナリアの前髪の件を知らせていたからか、二人は驚いた様子もなく、機嫌良さげにリナリアを褒めている。
「ありがとうございます。お義父様、お義母様。この髪留めはライアン様が贈ってくださったものです。とても気に入っていますので、褒めて頂けて嬉しいです」
今日は入学式だけで、実際に組に集まるのは明日からなせいか、そこかしこで生徒と保護者らしい者達が立ち止まり話している。
ここはつまり、入学式という名の社交場なのだ。
「そう、ライアンとても良いものを選んだわ。リナリアちゃんにとても似合っているし、これなら学業の妨げにもならないでしょう」
母は装飾品の選び方にとてもこだわりがある。
侯爵夫人としては当たり前なのかもしれないが、だからこそリナリアに地味なドレスを押し付ける彼女の母に不満があるようだった。
「ありがとうございます。母上にそう言われると自信がつきます」
「ふふ。リナリアちゃん。寮生活はもう慣れたかしら、何か困ったことがあればいつでも私を頼ってね。勿論ライアンには困ったことが無くても甘えていいのよ。あなたはライアンの大切な婚約者なのですからね」
リナリアの手を握りながら母がにこやかに話しているのは、他の家に私の婚約者と上手くいっているのを見せつける目的もあるのだろう。
元々両親はリナリアに優しいし、リナリアも両親に親しみを感じているから嘘ではないが、少し母の姿は大袈裟に見える。
「ありがとうございます。お義母様、寮生活は不安もありましたが、ライアン様が居てくださるのでとても心強いです」
「そう、良かったわ。あら、あそこにいるのは私の従姉妹だわ。丁度いいわリナリアちゃんを紹介しましょう。彼女の娘も二人と同じ組ですからね。あなた、私達彼女に挨拶に行ってきますね」
「ああ、会うのは久し振りだろうゆっくり話しておいで」
まるで元からそうするつもりだったとばかりに、母はリナリアを連れておば上のところへと歩いていく。
母が向かう先は仲の良い従姉妹で、又従姉妹は弟と婚約しているから、彼女がリナリアと親しくなってくれたのはありがたい。
「ライアン、彼女の両親だが」
「父親は来ていましたが、すでに帰ってしまったようですね」
殆どの家は両親揃って入学式に来ていたけれど、リナリアの家は父親だけだった。
しかもリナリアに声も掛けずに帰ってしまっていた。
両親が揃って来るのは、親を介して子供同士の繋がりを作る為だというのに、それ助ける役割もせず帰ってしまうなんて親子仲が悪いと公言しているのと同じだ。
「そうだな。あれが精一杯の譲歩なんだろうが、リナリアに罪はないというのに困ったものだ」
声を潜め言う、譲歩の言葉に内心首を傾げる。
愛人とその娘だけを大切にしているように見えるし、結婚していてそれは不実だろうと思うのに、どうして譲歩なんて言葉が出てくるのか分からない。
「これに詳細が書いてある。落としたりしないように」
「……ありがとうございます」
「手紙に書くには限界がある。週末外泊届けを出して二人で来なさい」
「二人で? リナリアもですか」
「ああ、リナリアの保護者は私になったから」
先程の譲歩以上に理解出来ない言葉を聞いて、馬鹿みたいに口を開いて父を見つめてしまう。
今、なんて言った?
保護者になった?
「それは。まさか」
「仮だが、婚姻手続きをした。リナリアはもう我がムーディ侯爵家の一員だ。学校にもそう届けてある」
「何故そんな」
「彼女を守る為。談話室を借りている、この件についてリナリアにも話すが、手続きはお前の希望だと伝える」
「え、私ですか?」
仮の婚姻手続きは、結婚年齢に達していない者達が結婚を急がなければいけない理由がある場合に行う制度だ。
他国ではあり得ない制度らしいが、この国では年に十数件程度は行われているから珍しいものではない。
婚約と違い、仮でも既婚扱いになるから、もし関係を解消する場合は離縁手続きが必要になる。
結婚年齢に達したら、正式に婚姻届けを出しお披露目をする。
「リナリアの母親が婚約解消しようと動いていてね、それを阻止する為なんだ。仮とはいえ受理されればもう彼女母親やその実家が何を言い出そうが強制出来ないからね」
「何故そんなことに」
「解消は嫌だろ? だからお前は仮の手続きを希望して無事に受理されたから、リナリアに報告するんだ」
わけが分からない。
リナリアの母親は何を考えているんだ。
「本当に良く似合っているね。絵師を呼んで二人を描いて欲しい位だ。入学おめでとう」
入寮後は特に問題なく日々が過ぎて、あっという間に入学式当日となった。
学校の式典用の建物は、校舎とは別棟になっていて生徒全員と保護者が入ってもまだまだ余裕がある程に広い。
緊張するリナリアと共に席に付き、式を終えた私達に両親が声を掛けてきた。
手紙でリナリアの前髪の件を知らせていたからか、二人は驚いた様子もなく、機嫌良さげにリナリアを褒めている。
「ありがとうございます。お義父様、お義母様。この髪留めはライアン様が贈ってくださったものです。とても気に入っていますので、褒めて頂けて嬉しいです」
今日は入学式だけで、実際に組に集まるのは明日からなせいか、そこかしこで生徒と保護者らしい者達が立ち止まり話している。
ここはつまり、入学式という名の社交場なのだ。
「そう、ライアンとても良いものを選んだわ。リナリアちゃんにとても似合っているし、これなら学業の妨げにもならないでしょう」
母は装飾品の選び方にとてもこだわりがある。
侯爵夫人としては当たり前なのかもしれないが、だからこそリナリアに地味なドレスを押し付ける彼女の母に不満があるようだった。
「ありがとうございます。母上にそう言われると自信がつきます」
「ふふ。リナリアちゃん。寮生活はもう慣れたかしら、何か困ったことがあればいつでも私を頼ってね。勿論ライアンには困ったことが無くても甘えていいのよ。あなたはライアンの大切な婚約者なのですからね」
リナリアの手を握りながら母がにこやかに話しているのは、他の家に私の婚約者と上手くいっているのを見せつける目的もあるのだろう。
元々両親はリナリアに優しいし、リナリアも両親に親しみを感じているから嘘ではないが、少し母の姿は大袈裟に見える。
「ありがとうございます。お義母様、寮生活は不安もありましたが、ライアン様が居てくださるのでとても心強いです」
「そう、良かったわ。あら、あそこにいるのは私の従姉妹だわ。丁度いいわリナリアちゃんを紹介しましょう。彼女の娘も二人と同じ組ですからね。あなた、私達彼女に挨拶に行ってきますね」
「ああ、会うのは久し振りだろうゆっくり話しておいで」
まるで元からそうするつもりだったとばかりに、母はリナリアを連れておば上のところへと歩いていく。
母が向かう先は仲の良い従姉妹で、又従姉妹は弟と婚約しているから、彼女がリナリアと親しくなってくれたのはありがたい。
「ライアン、彼女の両親だが」
「父親は来ていましたが、すでに帰ってしまったようですね」
殆どの家は両親揃って入学式に来ていたけれど、リナリアの家は父親だけだった。
しかもリナリアに声も掛けずに帰ってしまっていた。
両親が揃って来るのは、親を介して子供同士の繋がりを作る為だというのに、それ助ける役割もせず帰ってしまうなんて親子仲が悪いと公言しているのと同じだ。
「そうだな。あれが精一杯の譲歩なんだろうが、リナリアに罪はないというのに困ったものだ」
声を潜め言う、譲歩の言葉に内心首を傾げる。
愛人とその娘だけを大切にしているように見えるし、結婚していてそれは不実だろうと思うのに、どうして譲歩なんて言葉が出てくるのか分からない。
「これに詳細が書いてある。落としたりしないように」
「……ありがとうございます」
「手紙に書くには限界がある。週末外泊届けを出して二人で来なさい」
「二人で? リナリアもですか」
「ああ、リナリアの保護者は私になったから」
先程の譲歩以上に理解出来ない言葉を聞いて、馬鹿みたいに口を開いて父を見つめてしまう。
今、なんて言った?
保護者になった?
「それは。まさか」
「仮だが、婚姻手続きをした。リナリアはもう我がムーディ侯爵家の一員だ。学校にもそう届けてある」
「何故そんな」
「彼女を守る為。談話室を借りている、この件についてリナリアにも話すが、手続きはお前の希望だと伝える」
「え、私ですか?」
仮の婚姻手続きは、結婚年齢に達していない者達が結婚を急がなければいけない理由がある場合に行う制度だ。
他国ではあり得ない制度らしいが、この国では年に十数件程度は行われているから珍しいものではない。
婚約と違い、仮でも既婚扱いになるから、もし関係を解消する場合は離縁手続きが必要になる。
結婚年齢に達したら、正式に婚姻届けを出しお披露目をする。
「リナリアの母親が婚約解消しようと動いていてね、それを阻止する為なんだ。仮とはいえ受理されればもう彼女母親やその実家が何を言い出そうが強制出来ないからね」
「何故そんなことに」
「解消は嫌だろ? だからお前は仮の手続きを希望して無事に受理されたから、リナリアに報告するんだ」
わけが分からない。
リナリアの母親は何を考えているんだ。
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