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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑50 (エマニュエラ視点)
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ああ、苛々するわ。
いつもの様に王宮に出向いた私は、王妃殿下から王太子殿下と私の婚約が正式に決まったと教えられた。
幼い頃に王太子殿下の婚約者候補となってから十年近くの歳月が過ぎ、漸く決まった婚約だというのに、嬉しいよりも憤りの方が強いのは、その後に聞かされた婚約披露の夜会について聞かされたせいだった。
私の婚約と同時に、ボナクララもデルロイ殿下と婚約するのだというのだ。
不愉快この上ないことに、婚約披露は同時に行うのだと言う。
愚鈍なボナクララも婚約者候補から、正式な婚約に進むのだと言われた時はなんの冗談かと耳を疑ったけれど、殿下達はとても仲が良い兄弟だから、婚約披露も同時に行うのだと言う王妃殿下の顔に熱い紅茶が注がれた茶器を投げつけたくなった。
私の婚約相手は王太子殿下、ボナクララの相手は第二王子殿下でしかなく結婚後は臣籍降下する予定のデルロイ殿下だというのに、一緒に婚約披露するなんて私を軽んじているとしか思えない。
誰よりも美しく聡明な私と間抜けなボナクララを、一緒に祝おうとするなんて正気を疑う決定だ。
王太子殿下の婚約と一緒に等、ボナクララが恐縮してしまうのではと、双子の片割れを心配する顔で王妃殿下へ進言しても「一緒に披露するのはダヴィデの希望なのですから、いいのです」というにべもない返事にがっかりした
双子に生まれた私とボナクララは、何かと一緒に片付けられるのが昔からおもしろくなかった。
まさか婚約披露まで一緒なんておもしろくないどころではない、ボナクララに怪我でもさせて婚約披露の場に出られないようにしたいと思うほどの憤りを感じてしまった。
「ねえ、止まって」
ボナクララが邪魔でも今すぐどうにか出来るわけではない、もしあの子を手に掛けるとしても私が疑われない様に準備しなければならないのは分かっていても、屋敷に戻ったら婚約を喜ぶボナクララがいるのだと思うと周囲にいる者すべてを痛めつけたい衝動に駆られる。
だがその衝動も今は抑えなければならない。
私は内心の憤りを隠し静々と王妃殿下の部屋から出ると、鬱憤を晴らす策を練り始めた。
これから王太子殿下とのお茶会の為彼のサロンに向かう、その途中で私付きとして前を歩く女官に嫌がらせをするのはどうだろうと思いついた。能力の低い女官に対する些細な嫌がらせだ、それで私の気が晴れるのだから女官も本望だろう。
「は、はい。サデウス様、何かございましたでしょうか」
急に私に止まれと言われ戸惑った様子の女官は、振り返りながら助けを求める様に私の背後に立つ護衛に一瞬視線を向ける。
この女官は王妃殿下の配下の一人、つまりこの女官の失態は王妃殿下の失態になる。
あのつんと澄ました王妃殿下が私は大嫌いだ。
体があまり丈夫ではない国王陛下を健気に支える賢妃と名高い王妃殿下、あの女がこの王宮に君臨している間は私はこの国の貴族女性の二番目でしかない。
「お前、もう少し気遣いは出来ないのかしら? お前が足早に歩くから、わたくし足が痛くなってしまったわ」
「も、申し訳ございませんっ。治癒師をお呼びしすぐに治療を……」
足が痛くなったのは女官のせいではないけれど、新しい靴が合わないのか痛みがあるのは本当だから私は嘘は言っていない。
バサリと扇を広げ、護衛騎士に視線を向ける。
今日の護衛の中で一番のお気に入りにどうせなら運んで貰おうと、護衛と視線を合わせる。
「もう痛くて歩けないわ、お前のせいよ。これからダヴィデ様にお会いするというのに、お忙しい彼をお待たせしてしまうなんて、私婚約者失格だと言われてしまうわ」
言いながら、ちらりちらりと周囲を見渡す。
ここは王宮の中でも人通りの多い廊下だ、私達を見ている者はそれなりにいる。
人々の視線に晒されてオロオロとしている女官を見ているのは、気分が良かった。
「私、すぐに治癒師を呼んで参りますので、どうかそちらの部屋でお休み下さい」
王妃殿下の部屋の近く、彼女と会う約束がある貴族達が待つための小部屋がこの辺りにはいくつかあるからその一つで休んでいろと言うのだろう。
王太子殿下の婚約者であるこのエマニュエラ・サデウスを、一般貴族が使う部屋で休めだなんて良く言えたものだわと呆れてしまう。
「お前はそいつもいつも私に嫌がらせをしているのは、どうしてなの?」
ハンカチを出し目元に当てる。
「嫌がらせなんて、とんでもないことでございます。私はそんなつもりでは」
泣き出しそうに歪む女官の顔を見ているだけで、先程までの憤りが収まっていく。
やはり気分が悪い時は、弱い者を甚振るに限ると満足している時だった。
「そんなところで立ち止まってどうしたのですか?」
おっとりとした口調で私に声を掛けて来る者がいたのだ。
いつもの様に王宮に出向いた私は、王妃殿下から王太子殿下と私の婚約が正式に決まったと教えられた。
幼い頃に王太子殿下の婚約者候補となってから十年近くの歳月が過ぎ、漸く決まった婚約だというのに、嬉しいよりも憤りの方が強いのは、その後に聞かされた婚約披露の夜会について聞かされたせいだった。
私の婚約と同時に、ボナクララもデルロイ殿下と婚約するのだというのだ。
不愉快この上ないことに、婚約披露は同時に行うのだと言う。
愚鈍なボナクララも婚約者候補から、正式な婚約に進むのだと言われた時はなんの冗談かと耳を疑ったけれど、殿下達はとても仲が良い兄弟だから、婚約披露も同時に行うのだと言う王妃殿下の顔に熱い紅茶が注がれた茶器を投げつけたくなった。
私の婚約相手は王太子殿下、ボナクララの相手は第二王子殿下でしかなく結婚後は臣籍降下する予定のデルロイ殿下だというのに、一緒に婚約披露するなんて私を軽んじているとしか思えない。
誰よりも美しく聡明な私と間抜けなボナクララを、一緒に祝おうとするなんて正気を疑う決定だ。
王太子殿下の婚約と一緒に等、ボナクララが恐縮してしまうのではと、双子の片割れを心配する顔で王妃殿下へ進言しても「一緒に披露するのはダヴィデの希望なのですから、いいのです」というにべもない返事にがっかりした
双子に生まれた私とボナクララは、何かと一緒に片付けられるのが昔からおもしろくなかった。
まさか婚約披露まで一緒なんておもしろくないどころではない、ボナクララに怪我でもさせて婚約披露の場に出られないようにしたいと思うほどの憤りを感じてしまった。
「ねえ、止まって」
ボナクララが邪魔でも今すぐどうにか出来るわけではない、もしあの子を手に掛けるとしても私が疑われない様に準備しなければならないのは分かっていても、屋敷に戻ったら婚約を喜ぶボナクララがいるのだと思うと周囲にいる者すべてを痛めつけたい衝動に駆られる。
だがその衝動も今は抑えなければならない。
私は内心の憤りを隠し静々と王妃殿下の部屋から出ると、鬱憤を晴らす策を練り始めた。
これから王太子殿下とのお茶会の為彼のサロンに向かう、その途中で私付きとして前を歩く女官に嫌がらせをするのはどうだろうと思いついた。能力の低い女官に対する些細な嫌がらせだ、それで私の気が晴れるのだから女官も本望だろう。
「は、はい。サデウス様、何かございましたでしょうか」
急に私に止まれと言われ戸惑った様子の女官は、振り返りながら助けを求める様に私の背後に立つ護衛に一瞬視線を向ける。
この女官は王妃殿下の配下の一人、つまりこの女官の失態は王妃殿下の失態になる。
あのつんと澄ました王妃殿下が私は大嫌いだ。
体があまり丈夫ではない国王陛下を健気に支える賢妃と名高い王妃殿下、あの女がこの王宮に君臨している間は私はこの国の貴族女性の二番目でしかない。
「お前、もう少し気遣いは出来ないのかしら? お前が足早に歩くから、わたくし足が痛くなってしまったわ」
「も、申し訳ございませんっ。治癒師をお呼びしすぐに治療を……」
足が痛くなったのは女官のせいではないけれど、新しい靴が合わないのか痛みがあるのは本当だから私は嘘は言っていない。
バサリと扇を広げ、護衛騎士に視線を向ける。
今日の護衛の中で一番のお気に入りにどうせなら運んで貰おうと、護衛と視線を合わせる。
「もう痛くて歩けないわ、お前のせいよ。これからダヴィデ様にお会いするというのに、お忙しい彼をお待たせしてしまうなんて、私婚約者失格だと言われてしまうわ」
言いながら、ちらりちらりと周囲を見渡す。
ここは王宮の中でも人通りの多い廊下だ、私達を見ている者はそれなりにいる。
人々の視線に晒されてオロオロとしている女官を見ているのは、気分が良かった。
「私、すぐに治癒師を呼んで参りますので、どうかそちらの部屋でお休み下さい」
王妃殿下の部屋の近く、彼女と会う約束がある貴族達が待つための小部屋がこの辺りにはいくつかあるからその一つで休んでいろと言うのだろう。
王太子殿下の婚約者であるこのエマニュエラ・サデウスを、一般貴族が使う部屋で休めだなんて良く言えたものだわと呆れてしまう。
「お前はそいつもいつも私に嫌がらせをしているのは、どうしてなの?」
ハンカチを出し目元に当てる。
「嫌がらせなんて、とんでもないことでございます。私はそんなつもりでは」
泣き出しそうに歪む女官の顔を見ているだけで、先程までの憤りが収まっていく。
やはり気分が悪い時は、弱い者を甚振るに限ると満足している時だった。
「そんなところで立ち止まってどうしたのですか?」
おっとりとした口調で私に声を掛けて来る者がいたのだ。
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