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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑25 (デルロイ視点)
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「エマニュエラの母親は何をしたのですか」
守りの魔法陣を悪用する方法なんて、私ではすぐに思いつくことは出来ない。
「守りの魔法陣は、皇女の血で契約し魔法陣と皇女を繋いだ。当時皇帝からの侵略が何よりも恐ろしいもので、皇帝は自分が使役する魔物を使い国々を支配していた」
「だから悪意のある者と魔物の侵入から国を守る魔法陣なのですね」
守りの魔法陣の成り立ちは成人して、魔法陣と血の契約をする時まで詳しい事は教えられない。
国の守りの要となるものだから、その扱いは慎重だ。
「皇女は自分の死後も、自分を受け入れ愛してくれた皇女の夫、当時の王の血と自分の血を受け継ぐ者達にも魔法陣と契約する事で守りの魔法の継続が出来る様に、魔法陣を作り替えた」
「それが今私達が行っている血の契約なのですね」
「そうだ。だが、エマニュエラの母親はその契約を書き変えた。本来であれば王と王妃は王位を継いだ時にその世代を守る者の代表として登録する。それは王位継承の儀と同時に行わなければいけないものだが、あれは強引に魔法陣の契約の王妃を自分と自分の腹の中にいる赤子にしてしまったのだ」
おじい様が何を仰ったのか、私はよく理解が出来なかった。
王妃を自分と自分の腹の中にいる赤子にしたというのは、つまりどういうことなのだろう。
「余の妻王妃が亡くなり、王妃の契約が一時的に空いてしまった。その隙を狙われたのだ。血の契約をしている王族の女性は自分の都合の良い時に魔法陣の間に入ることが出来る。彼女にもその許可が出ていたから自由に出入りできたのだ」
「王妃、おばあ様が亡くなった時」
それは確か私がまだ一歳になるかならないかの時だった筈だ。
その後を追う様に、おじい様も亡くなり父上が王位継承した。
「彼女は自分の命を使い、魔法陣の王妃の契約を自分と自分の腹の子にしてしまった。王位継承以外で王と王妃の魔法陣との契約を解消するのは本人の死しか方法が無いと言うのに、王妃でも無くまだ生まれてもいない者を契約してしまったのだ」
「それがエマニュエラなのですか?」
「ああ。厄介なのは、エマニュエラが正式に王妃となり、自分の意思で王妃として魔法陣と契約をする。その後王位継承の儀式以外で次の王妃は魔法陣と契約出来ない。それを違えれば魔法陣が消滅するという呪いまで付け加えられていた」
あまりの事に私は何も言えなくなってしまった。
それでは、父上と母上がエマニュエラが王妃に相応しくないと分かっていながら、それでも彼女を兄上の婚約者候補にしたのか。
それでも葛藤があって、候補のまま正式に婚約者としていないのか。
「なぜそんなことを」
「エマニュエラの母は、お前の父親の妻になりたかったが選ばれる事はなかった。だが納得しなかった、彼女は魔法使いとして優秀で膨大な魔力を保持していた。誰より美しい顔と優秀さも持っていたから、自分が王妃になれると疑いもしなかったのだろう」
「どうして選ばれなかったのですか、父上は母上を愛していたからですか」
「誰より優秀で膨大な魔力を持っていても、その性質が悪かった。残虐で利己的過ぎる性格は王妃の器ではないと余も息子も判断したのだ」
それはエマニュエラも同じだ、彼女の性格は母親譲りだったのか。
「お前の母親を未来の王妃と認めたくなかったのだろう。誰もが王妃と認めても、魔法陣の契約はそうではない。それはつまり真実の王妃では無いということだ」
「魔法陣に今登録されている王妃はエマニュエラだというのですね」
「そうだ。余は彼女が魔法陣を書き変え呪いを行った後、自分の魔力のすべてを使い魔法陣の書き換えを行おうとした。王位継承の儀式は新たな王と王妃を魔法陣と結びつける。その時余の命と魔力を使えば書き換えが出来る筈だった」
でも出来なかったのだろう。そうでなければエマニュエラが候補にすらなる筈がない。
「情けない事だが、余の魔力は彼女に及ばなかった。余は彼女が隠して施していた呪いに命を奪われてしまった」
「その呪いというのは」
ゴクリと唾を飲み込む。
「彼女の魔力を超える者以外誰も魔法陣を書き変えられない。彼女の子が正式に魔法陣に王妃の契約をしない限り王の魔力は魔法陣に吸われ続ける」
魔力が魔法陣に吸われ続ける。それでは父上のお体が不調なのは、魔法陣に魔力を吸われ続けたせいで魔力不足になっているのか。
「なぜそんなに詳しく分かっているのですか、エマニュエラの母親が説明を?」
「余が魔法陣を書き変えようとした時に、あの者の声が聞こえたのだ。すでに息絶えていたのだから聞こえる筈などないというのに。余と息子を嘲笑いながら呪いと魔法陣の書き換えについて話し消えた」
それではエマニュエラを兄上の妻として、王妃にするしか道がないのか。
「余は呪いに抗い、最後の力でほんの少しだけ魔法陣を書き変える事しか出来なかった。強い魔力を持つ者だけでなく、光属性の魔力を持つ者が王妃になった時魔法陣を書き変えられると」
「光属性の魔力、それはまさかボナクララのことですか?」
そう言って、気が付いた。
まさか、父上はボナクララを兄上の妃にしたかった? 今もそう思っているのか?
※※※※※※
ディーンの魔力量はエマニュエラの母親を軽く超えるので、余裕で魔法陣を書き変えました。
守りの魔法陣を悪用する方法なんて、私ではすぐに思いつくことは出来ない。
「守りの魔法陣は、皇女の血で契約し魔法陣と皇女を繋いだ。当時皇帝からの侵略が何よりも恐ろしいもので、皇帝は自分が使役する魔物を使い国々を支配していた」
「だから悪意のある者と魔物の侵入から国を守る魔法陣なのですね」
守りの魔法陣の成り立ちは成人して、魔法陣と血の契約をする時まで詳しい事は教えられない。
国の守りの要となるものだから、その扱いは慎重だ。
「皇女は自分の死後も、自分を受け入れ愛してくれた皇女の夫、当時の王の血と自分の血を受け継ぐ者達にも魔法陣と契約する事で守りの魔法の継続が出来る様に、魔法陣を作り替えた」
「それが今私達が行っている血の契約なのですね」
「そうだ。だが、エマニュエラの母親はその契約を書き変えた。本来であれば王と王妃は王位を継いだ時にその世代を守る者の代表として登録する。それは王位継承の儀と同時に行わなければいけないものだが、あれは強引に魔法陣の契約の王妃を自分と自分の腹の中にいる赤子にしてしまったのだ」
おじい様が何を仰ったのか、私はよく理解が出来なかった。
王妃を自分と自分の腹の中にいる赤子にしたというのは、つまりどういうことなのだろう。
「余の妻王妃が亡くなり、王妃の契約が一時的に空いてしまった。その隙を狙われたのだ。血の契約をしている王族の女性は自分の都合の良い時に魔法陣の間に入ることが出来る。彼女にもその許可が出ていたから自由に出入りできたのだ」
「王妃、おばあ様が亡くなった時」
それは確か私がまだ一歳になるかならないかの時だった筈だ。
その後を追う様に、おじい様も亡くなり父上が王位継承した。
「彼女は自分の命を使い、魔法陣の王妃の契約を自分と自分の腹の子にしてしまった。王位継承以外で王と王妃の魔法陣との契約を解消するのは本人の死しか方法が無いと言うのに、王妃でも無くまだ生まれてもいない者を契約してしまったのだ」
「それがエマニュエラなのですか?」
「ああ。厄介なのは、エマニュエラが正式に王妃となり、自分の意思で王妃として魔法陣と契約をする。その後王位継承の儀式以外で次の王妃は魔法陣と契約出来ない。それを違えれば魔法陣が消滅するという呪いまで付け加えられていた」
あまりの事に私は何も言えなくなってしまった。
それでは、父上と母上がエマニュエラが王妃に相応しくないと分かっていながら、それでも彼女を兄上の婚約者候補にしたのか。
それでも葛藤があって、候補のまま正式に婚約者としていないのか。
「なぜそんなことを」
「エマニュエラの母は、お前の父親の妻になりたかったが選ばれる事はなかった。だが納得しなかった、彼女は魔法使いとして優秀で膨大な魔力を保持していた。誰より美しい顔と優秀さも持っていたから、自分が王妃になれると疑いもしなかったのだろう」
「どうして選ばれなかったのですか、父上は母上を愛していたからですか」
「誰より優秀で膨大な魔力を持っていても、その性質が悪かった。残虐で利己的過ぎる性格は王妃の器ではないと余も息子も判断したのだ」
それはエマニュエラも同じだ、彼女の性格は母親譲りだったのか。
「お前の母親を未来の王妃と認めたくなかったのだろう。誰もが王妃と認めても、魔法陣の契約はそうではない。それはつまり真実の王妃では無いということだ」
「魔法陣に今登録されている王妃はエマニュエラだというのですね」
「そうだ。余は彼女が魔法陣を書き変え呪いを行った後、自分の魔力のすべてを使い魔法陣の書き換えを行おうとした。王位継承の儀式は新たな王と王妃を魔法陣と結びつける。その時余の命と魔力を使えば書き換えが出来る筈だった」
でも出来なかったのだろう。そうでなければエマニュエラが候補にすらなる筈がない。
「情けない事だが、余の魔力は彼女に及ばなかった。余は彼女が隠して施していた呪いに命を奪われてしまった」
「その呪いというのは」
ゴクリと唾を飲み込む。
「彼女の魔力を超える者以外誰も魔法陣を書き変えられない。彼女の子が正式に魔法陣に王妃の契約をしない限り王の魔力は魔法陣に吸われ続ける」
魔力が魔法陣に吸われ続ける。それでは父上のお体が不調なのは、魔法陣に魔力を吸われ続けたせいで魔力不足になっているのか。
「なぜそんなに詳しく分かっているのですか、エマニュエラの母親が説明を?」
「余が魔法陣を書き変えようとした時に、あの者の声が聞こえたのだ。すでに息絶えていたのだから聞こえる筈などないというのに。余と息子を嘲笑いながら呪いと魔法陣の書き換えについて話し消えた」
それではエマニュエラを兄上の妻として、王妃にするしか道がないのか。
「余は呪いに抗い、最後の力でほんの少しだけ魔法陣を書き変える事しか出来なかった。強い魔力を持つ者だけでなく、光属性の魔力を持つ者が王妃になった時魔法陣を書き変えられると」
「光属性の魔力、それはまさかボナクララのことですか?」
そう言って、気が付いた。
まさか、父上はボナクララを兄上の妃にしたかった? 今もそう思っているのか?
※※※※※※
ディーンの魔力量はエマニュエラの母親を軽く超えるので、余裕で魔法陣を書き変えました。
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