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番外編
おまけ 愛のかたち8 (陛下視点)
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「辺境伯については対策を考えるが、その前にダニエラが早産となった罪を償わせねばならぬな」
あの馬鹿は自分の息子の婚約者にとマチルディーダに求婚し断られたのを不服とし、息子とネルツ家に押しかけダニエラとマチルディーダを脅した。
どれだけ恐ろしい思いをしたのか、そのせいでダニエラは産気づき予定より三ヶ月も早く出産したのだ。
ただでさえ双子の出産は命の危険が大きいというのに、それに早産までとなれば母子ともに無事なのは奇跡だと言う他無い。
「デルロイよ、あれの命で償わせねば気が収まらぬであろうな」
愚かな行いを悔いているなら兎も角、第一王子とダニエラ達を害する話をしているとは、呆れるばかりだ。
「あの時本当はそうしたかったのです。けれどダニエラのことを思うと、血を流す等不吉過ぎて出来ませんでした。私は本当に意気地がない」
デルロイは後悔している様だが、娘の出産時に罪の償いとしても命を狩るのは不吉すぎる。
その様な決断をこの優しき弟には出来ないだろう。
「それは当然だ。出産時に残虐なことをすれば、残虐な子が生まれると言うではないか。だがまだあれの命は狩れぬのだ。国境を元魔法師団長が守っているというのは相手国の脅威だからな」
とは言うものの、辺境伯をそのままにはしておけない。殺すのは簡単だが国の守りに不安が出てくる。
そうだ、彼の地にウーゴを派遣してはどうだろう。
あやつを傀儡とし、ウーゴを守りとする。
辺境伯夫人と前辺境伯はデルロイとニールの弱点であるダニエラをあやつから守るために画策し婿としてくれた。
辺境伯夫人は親子ほど年の違う男との結婚を、それがニールの助けになるのなら本望だと引き受けてくれた。
それに、前辺境伯自身まだ辺境伯を退くには若かったというのに、あやつを婿に入れる為代替わりまでしてくれたのだ。
余の頼みだからではなく、デルロイとニールの為に面倒ことを引き受けてくれたあの二人なら、今のデルロイの不安を話せば喜んで余に協力するだろう。
「そなたは何もしなくていいのだ。辛い決断はすべて余が行う」
デルロイの大切なものは、すべて余が守る。
デルロイに一筋たりとも傷を付けず、勿論デルロイが愛する家族も余が守る。
「兄上、私も孫がいる年齢ですよ。いつまでも兄上に守られているばかりではありません」
「勿論、そなたは優秀だ。だが第一王子は我が息子、あれが関わることは余の責任であろう。辺境伯がネルツ家に押しかけたのも第一王子が絡んでいる可能性もある」
「それは……」
第一王子の性格で、辺境伯と共謀するとは考え難いのだが、目的が一つならあり得ないとも言えないのかもしれない。
何せ第一王子には戦力を持たせていない。近衛には第一王子の命令には従わないよう通達してある。
王家の影も、第一王子には命令権がないどころか未だに存在を教えてすらいないのだ。
あれが何か事を起こそうとしても、平民の傭兵等を使わなければならない。
「王妃の件があるから、余は第一王子の周囲に余の配下を置いている。何か策略しようとしてもそれらが上手く阻止するようにしてある」
「では、第一王子を王太子にすることはありませんか」
「あれには無理だろう。国が荒れるだけだ。だが第二は優しすぎる」
本当ならばニールが良いのだが、ニールはデルロイと同じく権力には興味が無い。
「第二王子殿下が王太子になるのであれば、ニールは宰相を努めてもいいと申しております」
「おおっ、そうかっ! そう言えばニール達は昨日第二王子の夜会に出ていたな」
それならば心配はいらない。
ニールなら上手くやってくれるだろう。
しかし、あれだけ嫌がっていたというのに、どういう心境の変化だろう。
だがこれ以上良い話はない。
予想外の朗報に喜んでいた余のもとに、驚く知らせが飛び込んで来た。
あの馬鹿は自分の息子の婚約者にとマチルディーダに求婚し断られたのを不服とし、息子とネルツ家に押しかけダニエラとマチルディーダを脅した。
どれだけ恐ろしい思いをしたのか、そのせいでダニエラは産気づき予定より三ヶ月も早く出産したのだ。
ただでさえ双子の出産は命の危険が大きいというのに、それに早産までとなれば母子ともに無事なのは奇跡だと言う他無い。
「デルロイよ、あれの命で償わせねば気が収まらぬであろうな」
愚かな行いを悔いているなら兎も角、第一王子とダニエラ達を害する話をしているとは、呆れるばかりだ。
「あの時本当はそうしたかったのです。けれどダニエラのことを思うと、血を流す等不吉過ぎて出来ませんでした。私は本当に意気地がない」
デルロイは後悔している様だが、娘の出産時に罪の償いとしても命を狩るのは不吉すぎる。
その様な決断をこの優しき弟には出来ないだろう。
「それは当然だ。出産時に残虐なことをすれば、残虐な子が生まれると言うではないか。だがまだあれの命は狩れぬのだ。国境を元魔法師団長が守っているというのは相手国の脅威だからな」
とは言うものの、辺境伯をそのままにはしておけない。殺すのは簡単だが国の守りに不安が出てくる。
そうだ、彼の地にウーゴを派遣してはどうだろう。
あやつを傀儡とし、ウーゴを守りとする。
辺境伯夫人と前辺境伯はデルロイとニールの弱点であるダニエラをあやつから守るために画策し婿としてくれた。
辺境伯夫人は親子ほど年の違う男との結婚を、それがニールの助けになるのなら本望だと引き受けてくれた。
それに、前辺境伯自身まだ辺境伯を退くには若かったというのに、あやつを婿に入れる為代替わりまでしてくれたのだ。
余の頼みだからではなく、デルロイとニールの為に面倒ことを引き受けてくれたあの二人なら、今のデルロイの不安を話せば喜んで余に協力するだろう。
「そなたは何もしなくていいのだ。辛い決断はすべて余が行う」
デルロイの大切なものは、すべて余が守る。
デルロイに一筋たりとも傷を付けず、勿論デルロイが愛する家族も余が守る。
「兄上、私も孫がいる年齢ですよ。いつまでも兄上に守られているばかりではありません」
「勿論、そなたは優秀だ。だが第一王子は我が息子、あれが関わることは余の責任であろう。辺境伯がネルツ家に押しかけたのも第一王子が絡んでいる可能性もある」
「それは……」
第一王子の性格で、辺境伯と共謀するとは考え難いのだが、目的が一つならあり得ないとも言えないのかもしれない。
何せ第一王子には戦力を持たせていない。近衛には第一王子の命令には従わないよう通達してある。
王家の影も、第一王子には命令権がないどころか未だに存在を教えてすらいないのだ。
あれが何か事を起こそうとしても、平民の傭兵等を使わなければならない。
「王妃の件があるから、余は第一王子の周囲に余の配下を置いている。何か策略しようとしてもそれらが上手く阻止するようにしてある」
「では、第一王子を王太子にすることはありませんか」
「あれには無理だろう。国が荒れるだけだ。だが第二は優しすぎる」
本当ならばニールが良いのだが、ニールはデルロイと同じく権力には興味が無い。
「第二王子殿下が王太子になるのであれば、ニールは宰相を努めてもいいと申しております」
「おおっ、そうかっ! そう言えばニール達は昨日第二王子の夜会に出ていたな」
それならば心配はいらない。
ニールなら上手くやってくれるだろう。
しかし、あれだけ嫌がっていたというのに、どういう心境の変化だろう。
だがこれ以上良い話はない。
予想外の朗報に喜んでいた余のもとに、驚く知らせが飛び込んで来た。
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