上 下
157 / 244
番外編

おまけ お菓子の思い出(蜘蛛視点)

しおりを挟む
「焼き立てですのでお気をつけくださいませ」

 メイナがにこにことしながら運んできたのは、ほかほかと湯気のたつ焼き菓子だ。
 薄く切った林檎だろうか、それが数枚小さなパイ生地の上に並べて焼かれた様に見える。
 林檎の上にはこんがりと飴状に焦げたものがところどころに見え、これはダニエラ好みの菓子だと蜘蛛には分かった。

「まあ、懐かしいお菓子。メイナが作ってくれたのね」

 ここはウィストン公爵家のダニエラの部屋だ。
 普通なら菓子を焼くのは公爵家の料理人だと思うが、どうしてメイナが焼いたものだとダニエラは分かったのだろう。不思議だ。
 結婚前にダニエラが使っていたというこの部屋は、今は主と二人で使える様に少々家具を変更されているが壁紙やカーテン等はダニエラが使っていた当時のままだ。
 大人向けに変更しようとした父上殿を、主がそのままにしていて欲しいと願って止めたのだ。
 ちなにみ、主の兄は一度も公爵家に泊ったことは無かったらしい。

「はい、奥様。久しぶりに調理室を覗いたところ、いつでも使える様に整えられていて材料も沢山あったものですから、つい作ってしまいました」

 日頃無表情に近いメイナが照れた様な顔で返事をしていて、タオはお茶をテーブルに準備しながら微笑ましそうにメイナを見ている。
 メイナに菓子が作れたとは思わなかった。確かメイナは伯爵家の出身じゃなかっただろうか。
 下級の貴族ならともかく、公爵家の令嬢の侍女に仕えられる程の貴族家の令嬢だった者が菓子を作れるとは思わなかった。

「ダニエラ、よく分かりましたね」
「ふふ、このパイはねメイナの得意なものなの。懐かしいわ、私も幼いころお手伝いしたから覚えているのよ」

 今何と言った? ダニエラが何を手伝ったと?
 侍女として仕事をしているメイナはともかく、子供の頃虫ですら遠くに飛ぶ蝶を見た程度の箱入りのダニエラが菓子を作る手伝いをしたというのか?
 驚きすぎて蜘蛛は声も出ないが、主はもっと驚いている様だ。

「あの、もしかしたらなのですが、他のお菓子を作るのも手伝ったことがありますか」
「他のお菓子?」
「ええ、例えばクッキーとかお菓子ではありませんが、食事パンというものです」

 食事パンと主が言うものを蜘蛛は思い出した。
 そういえば、主が王家の森で良く食べていた。

「食事パン? 昔だと焼いたお肉と刻んだ葉物野菜を入れたものとか、衣をつけて揚げ焼きした物を挟んだものかしら、それともお芋潰してタレと和えたもの?」
「は、はい」
「クッキーは、そうね、焼く時に飴を入れたものとか? かわいい型抜きのものかしら」
「はい、そ、そうです」

 主の声が震えているのは、昔を思いだしているせいだろう。
 蜘蛛も今声を出したらそんな声しか出ないかもしれない。

「でもどうしてディーンがそれを知っているの? 結婚してから私それを食べた事がないのに」
「そうですね。今仰ったものはこちらの調理室でしか作っていません」

 ダニエラとメイナが首を傾げて主を見ている。
 ダニエラが結婚前というなら、主が今言ったものが結びつかないのは当然だろう。

「ニール様が何度も下さったのです」
「お兄様が?」
「はい、学生の頃に何度か、それから卒業後私が魔法師団に勤める様になってからも」

 度々ニール様は主にそれらをくれたのだ。
 妹の戯れだと言って、少し焦げたクッキーや、形が崩れたパイ。そうだ、まさにこのパイだ。それから薄く切ったパンに肉や野菜を挟んだもの。
 蜘蛛の空間収納は時が止まるから、主はニール様にそれらを貰う度に蜘蛛に預けにきて、少しずつ大切に食べていたのだ。主は預かってくれる礼だと蜘蛛にも毎回分けてくれた。
 蜘蛛は人の食べ物に興味は無かったが、主が一緒に食べたがっていると気が付いていたからほんの少しだけ貰って食べていたんだ。

「お兄様がディーンに……それなら私がメイナとタオと作ったものだわ。作ったといっても私は薄く切った林檎を並べたり、切ったバターを乗せたり、クッキーの型を抜いた程度だけれど」

 それはそうだろう。主が学生の頃なら、ダニエラはかなり幼い筈だ。
 そんな幼いダニエラに刃物を使わせたり、火を使わせたりなんて蜘蛛だって恐ろしくてできない。

「ダニエラが菓子を作る手伝いをしたのか? それが調理室?」
「ふふ、子供の頃簡単で美味しいお菓子や食事の作り方の本を読んでね、作ってみたいと言ったらお父様が調理室を部屋の近くに作って下さったの。メイナやタオは元々料理が出来たから、料理人が本を見て二人に教えてくれて私は簡単なお手伝いをしたのよ。とても楽しくてね」

 どうしてそれをニール様は主にくれたのか分からない。
 料理人が作った様な完璧な出来では無かったが、どれも主は喜んで食べていた。
 卒業した日の夜、王家の森に来た主は蜘蛛と一緒にクッキーを食べたんだ。
 あの味を、蜘蛛はまだ覚えている。

『母は私の努力など無駄と、兄を気遣えない私などいらないのだ』

 悲しそうにそう言いながら、主はクッキーを齧った。
 
『私は母に愛されないけれど、私にはニール様がいる。私を認めて下さったあの人が』

 そう言いながら悲しむ主を見ながら、いつか主が愛する人と菓子を食べる日が来ることを蜘蛛は祈っていた。
 主の悲しみも苦しみも理解して、共に喜び共に泣いてくれる人が出来る日を心の底から願っていたんだ。

「お兄様によく食べて頂いたわ。美味しいから沢山作って欲しいと言われて、嬉しくて何度も作ったわね。メイナ」
「はい。幼い頃の奥様はとても上手にクッキーの型抜きをされていました。私もタオも奥様と調理室を使うのが大好きでした。あの本は当時の奥様の宝物でしたね。このパイもあの本にのっていたものです」
「私、林檎を並べるのも得意だったわ」

 自慢げに言うダニエラは、パイを食べて「そうそうこの味よ」と微笑んでいる。

「懐かしいです。こんなに温かかったのですね」

 ニール様が主に渡す頃には当然菓子も料理も冷めていた。
 家族との食事に楽しかった思い出の無い主は、敬愛するニール様が「ちゃんと食事をとれ」と言って主に下さったそれらを食べるのが幸せだったんだ。
 まさか『妹の戯れ』がダニエラの調理の手伝いを意味していたとは、当時思いもしなかったが。

「ディーン、確か料理出来るのよね」
「はい、冒険者に習った大雑把なものですが」
「でも一人で料理が作れるのよね」

 懐かしそうにパイを食べていたダニエラは、突然キラキラとした目で主を見始めた。

「はい」

 不穏なものを感じながら、主は素直に頷いた。
 主はダニエラの問いに嘘をついたりしないのだ。

「じゃあ、ネルツ家にも調理室を作って、一緒に料理をしましょう!」
「ダニエラ、あなたが料理? 一緒って私とですか?」
「そうよ、ディーンと作るの。幼い頃は林檎を並べる程度しかさせて貰えなかったけれど、もう私も大人だもの。自分でスープを作ったり卵を焼いたりしてみたいわ。それをディーンに食べて貰うの」

 きらきらした目で両手を組んで言うダニエラを、一体誰が止められるだろうか。
 蜘蛛には無理だ、メイナやタオにも無理だ、勿論主はもっと無理だ。

「ダニエラが料理ですか」
「そうよ、あなたと一緒に作るの。後はメイナとタオね。一人でなんて無茶はしないわ。そんな事したら危ないって私分かっているもの」

 自慢げにそんなことを言い切る人間に火や刃物を使わせていいのだろうか。
 いや、蜘蛛も今は人の形になれるのだから、まず蜘蛛が料理を覚えればいいのか。
 よし、それなら安全だ。

「ダニエラと料理、ダニエラが作ったものを食べる」
「私もあなたが作ったものを食べたいわ。でも普段は料理人の作ったものを食べるのよ。それは変わらないわ。特別な時だけ二人で作りましょう」
「分かりました。専用の場所を用意します。それまで待っていてくださいますか」

 よし、それまで蜘蛛は料理を覚えるぞ。
 ダニエラの安全は蜘蛛が守るんだから、当然だ。
 もしダニエラが作ったものが焦げだらけでも、主はきっと喜んで全部食べるだろう。
 あの、王家の森で寂しくクッキーを齧っていた主はもういない。主の側にはダニエラがいるんだから。
 ダニエラと食べる食事が主にとっての幸せなんだ。

 随分日が過ぎてからネルツ家に出来た調理室で、案外器用にダニエラが料理をする姿を見て、主と蜘蛛が驚くのだがそれはまた別の話。

※※※※※※
おまけのおまけ

「お兄様、昔私が作ったお菓子や料理をディーンに渡していたと聞いたのですが」
「ん? そんなことあったか」

 ディーンがいない時、お兄様にそっと聞いてみた。
 作るといっても、幼い子供の手伝い程度だけれど、出来はそんなに良く無かった筈。

「ああ、何度か持って行ったな。ディーンは放っておくと食事を抜くから、非常食としてだ」
「そうだったのですね。今の彼は食事を疎かにすることはありませんが、昔はそうだったのですね」

 お兄様が気にしていたら、ディーンは喜んで食べただろうと想像はつく。
 それが、あんな拙い出来のものでも。

「それがどうした」
「出来の悪いものではなく、ちゃんと料理人が作ったもので良かったのではありませんか」
「それだとあれが遠慮するだろう」

 成程、確かに彼なら遠慮して恐縮してしまうかもしれない。
 お兄様はさすが考えているし、ディーンの性格を理解しているわ。

「さすがお兄様です。良く彼の考え方を理解していますね」
「当然だ」

 当然だって、お兄様最近そういうところ隠さなくなって来た気がしますが、私の気のせいでしょうか。

「お兄様、たまには彼の息抜きに二人でお酒を飲んだりしてあげて下さいませね」
「それはお前がすればいいだろう」
「妻とは妻の、親友とは親友との時間が必要な時があると思います。お兄様はディーンの友なのですから」

 二人が仲が良いと思うと、何だか嬉しくて笑ってしまう。
 
「そうか、あれは頭が固いから、疲れることもあるだろう。たまには労わってやるか」

 親友を否定しないお兄様に、内心でニヤニヤとしながら私は「お願いします」と頭を下げたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』 *書籍化2024年9月下旬発売 ※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。 彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?! 王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。 しかも、私……ざまぁ対象!! ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!! ※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。 感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。

回帰令嬢ローゼリアの楽しい復讐計画 ~拝啓、私の元親友。こまめに悔しがらせつつ、あなたの悪行を暴いてみせます~

星名こころ
恋愛
 ルビーノ公爵令嬢ローゼリアは、死に瀕していた。親友であり星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたとして断罪され、その場から逃げ去って馬車に轢かれてしまったのだ。  瀕死のローゼリアを見舞ったアンジェラは、笑っていた。「ごめんね、ローズ。私、ずっとあなたが嫌いだったのよ」「あなたがみんなに嫌われるよう、私が仕向けたの。さようならローズ」  そうしてローゼリアは絶望と後悔のうちに人生を終えた――はずだったが。気づけば、ローゼリアは二年生になったばかりの頃に回帰していた。  今回の人生はアンジェラにやられっぱなしになどしない、必ず彼女の悪行を暴いてみせると心に誓うローゼリア。アンジェラをこまめに悔しがらせつつ、前回の生の反省をいかして言動を改めたところ、周囲の見る目も変わってきて……?  婚約者候補リアムの協力を得ながら、徐々にアンジェラを追い詰めていくローゼリア。彼女は復讐を果たすことはできるのか。 ※一応復讐が主題ではありますがコメディ寄りです。残虐・凄惨なざまぁはありません

お幸せに、婚約者様。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
恋愛
 前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

いえ、絶対に別れます

木嶋うめ香
恋愛
結婚して一年たったのだから、もういいわよね。 私実家に帰ります。 拙作『いえ、絶対に別れます』は、第16回恋愛小説大賞で優秀賞を頂き、レジーナブックス様より書籍化致しました。 書籍版はかなり書き直ししており(書籍版はフェデリカとキリアンのエピソードを増やし、かなり読みやすくなっていると思います)台詞等が変わっているため、一旦番外編は削除して書籍版に沿った内容に書き直して再UP致します。 またブルーノ編も一旦削除し大幅修正します。 こちらは再UPの際は、この作品と切り離して別作品として連載していく予定です。 遅筆なりに今後も頑張りますので、皆様どうぞよろしくお願い致します。

悪役令嬢は断罪回避のためにお兄様と契約結婚をすることにしました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
☆おしらせ☆ 8/25の週から更新頻度を変更し、週に2回程度の更新ペースになります。どうぞよろしくお願いいたします。 ☆あらすじ☆  わたし、マリア・アラトルソワは、乙女ゲーム「ブルーメ」の中の悪役令嬢である。  十七歳の春。  前世の記憶を思い出し、その事実に気が付いたわたしは焦った。  乙女ゲームの悪役令嬢マリアは、すべての攻略対象のルートにおいて、ヒロインの恋路を邪魔する役割として登場する。  わたしの活躍(?)によって、ヒロインと攻略対象は愛を深め合うのだ。  そんな陰の立役者(?)であるわたしは、どの攻略対象ルートでも悲しいほどあっけなく断罪されて、国外追放されたり修道院送りにされたりする。一番ひどいのはこの国の第一王子ルートで、刺客を使ってヒロインを殺そうとしたわたしを、第一王子が正当防衛とばかりに斬り殺すというものだ。  ピンチだわ。人生どころか前世の人生も含めた中での最大のピンチ‼  このままではまずいと、わたしはあまり賢くない頭をフル回転させて考えた。  まだゲームははじまっていない。ゲームのはじまりは来年の春だ。つまり一年あるが…はっきり言おう、去年の一年間で、もうすでにいろいろやらかしていた。このままでは悪役令嬢まっしぐらだ。  うぐぐぐぐ……。  この状況を打破するためには、どうすればいいのか。  一生懸命考えたわたしは、そこでピコンと名案ならぬ迷案を思いついた。  悪役令嬢は、当て馬である。  ヒロインの恋のライバルだ。  では、物理的にヒロインのライバルになり得ない立場になっておけば、わたしは晴れて当て馬的な役割からは解放され、悪役令嬢にはならないのではあるまいか!  そしておバカなわたしは、ここで一つ、大きな間違いを犯す。  「おほほほほほほ~」と高笑いをしながらわたしが向かった先は、お兄様の部屋。  お兄様は、実はわたしの従兄で、本当の兄ではない。  そこに目を付けたわたしは、何も考えずにこう宣った。  「お兄様、わたしと(契約)結婚してくださいませ‼」  このときわたしは、失念していたのだ。  そう、お兄様が、この上なく厄介で意地悪で、それでいて粘着質な男だったと言うことを‼  そして、わたしを嫌っていたはずの攻略対象たちの様子も、なにやら変わってきてーー

愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧
恋愛
 声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。  婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。  待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。 新しい風を吹かせてみたくなりました。 なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。

処理中です...