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番外編
おまけ 主の発明の理由は?前編(蜘蛛視点)
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ダニエラがマチルディーダを妊娠中のお話なので、くぅちゃんはちょっと話し方がぎこちないです。
「主、今日は具合が悪いわけではないノカ」
ある日森にやって来た主と共に迷宮の中に入っていた蜘蛛は、あることに気が付いて主に尋ねた。
「私はいつも通りだ。ダニエラが心配で集中出来ていないかもしれないが」
無表情に魔物を狩りながらどんどん迷宮の奥へ進んでいる主は、ダニエラの名前を出してため息をついた。
主の伴侶であるダニエラは妊娠して半年と少し過ぎた。
人間の妊娠は魔物の蜘蛛には分からないことだらけだが、ダニエラは常に吐き気と寝不足に苦しんでいるので心配だ。
何せ食べてもすぐに吐いてしまうし、眠っても熟睡出来ずすぐに目を覚ましてしまう。
人間は妊娠の初期の頃悪阻というものがあるらしくそれはかなり辛いそうなのだが、ダニエラはその悪阻がとても酷い様で、最近では殆どベッドの中で過ごしているのだ。
「食事が出来なクテモ、主の魔力である程度賄えるトハ思うが、ダニエラの調子はそんなに悪イノカ」
「私の魔力でいいならいくらでもダニエラに分けるが、食事が出来なければ体力が落ちる」
出産は命懸けだし、体力が必要だという。
魔物の様に簡単に産まれるわけではないのだ。
「最近では起き上がるのも一苦労という程弱っているが、ダニエラは少しでも歩くと言って無理しようとするんだ」
「そうか、心配ダナ」
心配でも、蜘蛛ではダニエラの側付きのタオやメイナの様に何かをしてやれはしない。
蜘蛛が出来ることはなんだろう。
少しでもダニエラが食べられるものを探すことだろうか。
「……ダニエラの為に蜘蛛に出来ることがあれば言ってくれ」
「蜘蛛っ! ありがとう。私はあまり気が利く方ではないからそう言ってもらえるのはとても助かるよ」
こういうところ、主はとても素直だと思う。
人相手には遠慮等が出て来るが、蜘蛛に対しては自分の使役獣だという思いがあるのか気持ちを隠さない。
「早速、相談に乗ってもらえるか」
「相談、分かっタ」
主の顔はダニエラを心配する顔から、魔法馬鹿の顔になる。
この迷宮の魔物はそれなりに強敵の筈だが、魔法すら殆ど使わず剣でばっさばっさと切り捨てて、主が作った素材収集の魔道具で自動で必要な物を集めている。
蜘蛛は主の肩に乗って周囲を警戒しているだけだから、呑気なものだ。
「蜘蛛で役に立てるならいくらでも聞くぞ」
「ありがとう蜘蛛」
迷宮を攻略中には見えない呑気な笑顔。これは、あれだ、何かを思いついた時の顔だ。
相談というからには、今の話の流れから言ってダニエラのことだと思うのだが、主のこの顔の意味が分からない。
何か役に立ちそうな魔法陣でも思いついたのだろうか。
「排泄物を消すものを考えたんだ」
「ハ?」
蜘蛛は人の言葉の理解力が急に落ちたのだろうか。
今主は排泄と言った様に聞こえたのだが、排泄というのは確か人の言葉で糞尿を体外に出すことだった筈だ。
つまり排泄物というのは……。
なぜ今その相談を蜘蛛はされているのか分からないのだが、蜘蛛は何か聞き違えたのだろうか。
「主、蜘蛛はナンノ相談をされているのダロウ」
「魔物は排泄はしないのだったか?」
「蜘蛛はしないが、魔物も排泄をするものは多かったと思うゾ」
魔物の中でも食事をするものは排泄する。
蜘蛛にはそういう機能は備わっていない。魔物や動物を食べても、全て魔素に変わってしまう。
「そうか、それなら蜘蛛では実験できないか」
「実験、そうか。主はその排泄物を消すものを今持っているのダナ」
蜘蛛は今日、主が頻繁に水を飲むので何か理由があるのかと考えていた。その割に排尿する様子が無いから具合が悪いのかと思い先程聞いたのだ。
「そうだ。やっと完成したので実験をしていたんだ」
「それは……成功したのか?」
「排出したいと思わなくなるのでは無く、排泄物が確実に無くなっている気配があるから成功だと思う」
「そうか、それハ良かっタナ」
嬉しそうな主の顔を見る分には良かったと言っていいのだろうが、一体急にどうしたというのだろう。
「主が使うノカ?」
まさかと思いながら、恐る恐る尋ねる。
この予想は外れてくれた方が良いのではないか? その心配は嫌な方に的中してしまった。
「ダニエラの為に考えたんだ! きっと喜んでくれると思う」
得意そうな笑顔で主は魔法陣を考えるのがどれだけ大変だったか話し始めたけれど、慎ましい貴族女性のダニエラに、まさか主はそんな話をしているのではないよな?
「主、それはダニエラに頼まれたノカ?」
「いいや」
「それでは何故」
「ダニエラは最近ベッドから体を起こすのも大変そうで、手洗いに行く時はタオやメイナに体を支えながら行っているんだが、私が抱き上げて運ぶと言っても嫌がるんだ。私なら力もあるし介助だって完璧に出来ると思うんだが」
思うんだがじゃ無い。と思うのは蜘蛛だけか?
あ、主まさかそれを実行したりしていないよな。
いくらダニエラの心が天の空の様に広いと言っても、彼女は上級貴族の女性だぞ。
夫にそんな話をされたら、いたたまれない気持ちになるのではないか。
蜘蛛の心配を考えもせず、主は楽しそうに話を続けたのだ。
※※※※※※
双子を出産の時にちょろっと出て来た魔道具の指輪開発の時のお話です。
ダニエラは元々ディーンが使っていた魔道具だと思っていますが、実は……というものです。
ダニエラ父の学生時代のプロットを作っていたら、なんだか物凄くBでLな感じになりそうで、どうしたものかと考えています。
基本思考が腐っているせいか、ついその雰囲気が漂ってきちゃうんですよね。ははは。
「主、今日は具合が悪いわけではないノカ」
ある日森にやって来た主と共に迷宮の中に入っていた蜘蛛は、あることに気が付いて主に尋ねた。
「私はいつも通りだ。ダニエラが心配で集中出来ていないかもしれないが」
無表情に魔物を狩りながらどんどん迷宮の奥へ進んでいる主は、ダニエラの名前を出してため息をついた。
主の伴侶であるダニエラは妊娠して半年と少し過ぎた。
人間の妊娠は魔物の蜘蛛には分からないことだらけだが、ダニエラは常に吐き気と寝不足に苦しんでいるので心配だ。
何せ食べてもすぐに吐いてしまうし、眠っても熟睡出来ずすぐに目を覚ましてしまう。
人間は妊娠の初期の頃悪阻というものがあるらしくそれはかなり辛いそうなのだが、ダニエラはその悪阻がとても酷い様で、最近では殆どベッドの中で過ごしているのだ。
「食事が出来なクテモ、主の魔力である程度賄えるトハ思うが、ダニエラの調子はそんなに悪イノカ」
「私の魔力でいいならいくらでもダニエラに分けるが、食事が出来なければ体力が落ちる」
出産は命懸けだし、体力が必要だという。
魔物の様に簡単に産まれるわけではないのだ。
「最近では起き上がるのも一苦労という程弱っているが、ダニエラは少しでも歩くと言って無理しようとするんだ」
「そうか、心配ダナ」
心配でも、蜘蛛ではダニエラの側付きのタオやメイナの様に何かをしてやれはしない。
蜘蛛が出来ることはなんだろう。
少しでもダニエラが食べられるものを探すことだろうか。
「……ダニエラの為に蜘蛛に出来ることがあれば言ってくれ」
「蜘蛛っ! ありがとう。私はあまり気が利く方ではないからそう言ってもらえるのはとても助かるよ」
こういうところ、主はとても素直だと思う。
人相手には遠慮等が出て来るが、蜘蛛に対しては自分の使役獣だという思いがあるのか気持ちを隠さない。
「早速、相談に乗ってもらえるか」
「相談、分かっタ」
主の顔はダニエラを心配する顔から、魔法馬鹿の顔になる。
この迷宮の魔物はそれなりに強敵の筈だが、魔法すら殆ど使わず剣でばっさばっさと切り捨てて、主が作った素材収集の魔道具で自動で必要な物を集めている。
蜘蛛は主の肩に乗って周囲を警戒しているだけだから、呑気なものだ。
「蜘蛛で役に立てるならいくらでも聞くぞ」
「ありがとう蜘蛛」
迷宮を攻略中には見えない呑気な笑顔。これは、あれだ、何かを思いついた時の顔だ。
相談というからには、今の話の流れから言ってダニエラのことだと思うのだが、主のこの顔の意味が分からない。
何か役に立ちそうな魔法陣でも思いついたのだろうか。
「排泄物を消すものを考えたんだ」
「ハ?」
蜘蛛は人の言葉の理解力が急に落ちたのだろうか。
今主は排泄と言った様に聞こえたのだが、排泄というのは確か人の言葉で糞尿を体外に出すことだった筈だ。
つまり排泄物というのは……。
なぜ今その相談を蜘蛛はされているのか分からないのだが、蜘蛛は何か聞き違えたのだろうか。
「主、蜘蛛はナンノ相談をされているのダロウ」
「魔物は排泄はしないのだったか?」
「蜘蛛はしないが、魔物も排泄をするものは多かったと思うゾ」
魔物の中でも食事をするものは排泄する。
蜘蛛にはそういう機能は備わっていない。魔物や動物を食べても、全て魔素に変わってしまう。
「そうか、それなら蜘蛛では実験できないか」
「実験、そうか。主はその排泄物を消すものを今持っているのダナ」
蜘蛛は今日、主が頻繁に水を飲むので何か理由があるのかと考えていた。その割に排尿する様子が無いから具合が悪いのかと思い先程聞いたのだ。
「そうだ。やっと完成したので実験をしていたんだ」
「それは……成功したのか?」
「排出したいと思わなくなるのでは無く、排泄物が確実に無くなっている気配があるから成功だと思う」
「そうか、それハ良かっタナ」
嬉しそうな主の顔を見る分には良かったと言っていいのだろうが、一体急にどうしたというのだろう。
「主が使うノカ?」
まさかと思いながら、恐る恐る尋ねる。
この予想は外れてくれた方が良いのではないか? その心配は嫌な方に的中してしまった。
「ダニエラの為に考えたんだ! きっと喜んでくれると思う」
得意そうな笑顔で主は魔法陣を考えるのがどれだけ大変だったか話し始めたけれど、慎ましい貴族女性のダニエラに、まさか主はそんな話をしているのではないよな?
「主、それはダニエラに頼まれたノカ?」
「いいや」
「それでは何故」
「ダニエラは最近ベッドから体を起こすのも大変そうで、手洗いに行く時はタオやメイナに体を支えながら行っているんだが、私が抱き上げて運ぶと言っても嫌がるんだ。私なら力もあるし介助だって完璧に出来ると思うんだが」
思うんだがじゃ無い。と思うのは蜘蛛だけか?
あ、主まさかそれを実行したりしていないよな。
いくらダニエラの心が天の空の様に広いと言っても、彼女は上級貴族の女性だぞ。
夫にそんな話をされたら、いたたまれない気持ちになるのではないか。
蜘蛛の心配を考えもせず、主は楽しそうに話を続けたのだ。
※※※※※※
双子を出産の時にちょろっと出て来た魔道具の指輪開発の時のお話です。
ダニエラは元々ディーンが使っていた魔道具だと思っていますが、実は……というものです。
ダニエラ父の学生時代のプロットを作っていたら、なんだか物凄くBでLな感じになりそうで、どうしたものかと考えています。
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