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番外編
ほのぼの日常編2 くもさんはともだち61(ロニー視点)
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「ディーダ、僕の可愛いお姫様泣かないで」
離れたくない。
ずっとずっとマチルディーダの側にいたい。
泣きじゃくるマチルディーダの涙が嬉しくて、一緒が良いと言う声が嬉しくて、僕はその願いを口にしそうになってしまう。
「ロニー、自分の立場を忘れるな」
くぅちゃんの感情の籠っていない声が耳に届いて、僕はぎゅうっとマチルディーダを抱きしめる。
望みは口に出してはいけない。
くぅちゃんの言葉は意地悪じゃなく、僕への助言だ。
ずっとずっとマチルディーダの側にいたいなんて、それを口にしたらその瞬間僕は婚約者候補から外されてしまうのだから。
マチルディーダの側に無能はいらないと、僕はニール様に言われたんだ。
マチルディーダが生まれてずっと彼女の側に居させて欲しいと願い出た僕に、ニール様は彼女の側にいるための条件を提示したニール様は、僕を蔑む目で見ていた。
その目の理由を知っていたから、僕はそれを受け入れた。
だって、僕は罪の子だから。
ニール様は僕がそうだとご存じだ、でも僕が望むことを許して下さった。
マチルディーダの隣に立つに相応しい人間になること、その為に努力し続けること、ニール様が用意してくださった貴族家の養子になるのは条件の一つだった。
王家の血を受け継ぐマチルディーダに平民の夫は相応しくない。
僕の実の母は平民で父は貴族だけど、僕は平民の両親の子となっているから僕は今平民の子供だ。
今の僕ではどれだけ努力しても身分が足りないんだ。
ブレガ侯爵家の養子にならなければ、そうして相応しい教育を受け実力を付けなければ駄目なんだ。
「マチルディーダ、君に相応しい人間になる。誓うよ、僕は絶対に諦めない。誰もが認める人間になって、君の隣に立てる人間になる。だから、ほんの少しの間だけお別れするだけなんだ」
そうだまた会える、また会えたら今度はずっとずっと一緒に居られるんだ。
だから僕は泣かない、涙は流さない。
両手を離し、マチルディーダの髪を撫でる。
柔らかい髪、泣いているせいなのか少しいつもより高い体温、僕のマチルディーダのすべてを覚えておくんだ。
「しゅこし? ほんとう?」
「うん、絶対にまた一緒に居られる様になる。僕はそのために頑張るから、待っていてくれる? マチルディーダ」
「まってりゅ、まってりゅ」
「手紙を書くよ。沢山、お返事をくれる?」
「おへんじ、しゅる。もじのれんしゅうをたっくさんしゅる、おへんじしゅるっ」
「待ってるからね、マチルディーダ。大好きだよ」
これくらいは許されるだろうか、僕の気持ちを覚えていて欲しいんだ。
「ディーダも、ディーダもしゅきっ! だいしゅき!」
「マチルディーダこんなに泣いて、笑顔でお見送りする約束だったでしょう?」
「おかぁさまぁ。だっていやにゃの」
泣いているマチルディーダの真っ赤になった目が可哀相で、でもその涙の理由が嬉しいなんて僕は意地悪だ。
お義母様がマチルディーダに話してくれていたのに、それでもマチルディーダは僕と離れたくないって泣いてくれているんだから。
「お義母様、あの」
「これは私とマチルディーダが刺繍したものよ。マチルディーダ、ロニーに渡してあげて」
「はぁい」
お義母様がマチルディーダに手渡したのは、剣帯の帯飾りだと思う。
礼服等には剣帯に帯飾りを着けるのが一般的だと家庭教師に習った。その時に帯飾りは未婚の内は母親が、結婚してからは妻が帯飾りに刺繍をするのだと教えられた。
「はい、あげりゅ」
「ありがとう、マチルディーダ。お義母様ありがとうございます」
僕が幼かったから、本当の母が僕に帯飾りを贈ってくれたことはない。
これが貴族のしきたりだったとしたら、平民の母はそもそも帯飾りに刺繍すると知らなかったかもしれない。
どちらにしても、初めての帯飾りだ。剣帯はお義父様が以前下さったものを今着けている。
「蜘蛛の巣と杖と蜘蛛」
「それは私がディーンと結婚した時に贈った帯飾りに刺繍したものと同じなのよ。それにマチルディーダが選んだ刺繍の柄を追加したのよ」
「息子に初めて贈る帯飾りは父親に関わりのある柄を刺繍する事が多いから、魔法使いの杖と蜘蛛ならディーンそのものだな」
お義母様の説明に公爵様が刺繍の柄の意味を教えてくれた。
蜘蛛の巣と魔法使いの杖は見事な刺繍で、これはきっとお義母様が刺して下さったものだろう。
「蜘蛛、くぅちゃんと、こっちはちぃちゃん? それに四葉?」
蜘蛛の巣の上の二匹の蜘蛛の内一つはくぅちゃんの色でこれは多分お義母様の刺繍、もう一つの方のちぃちゃんらしい蜘蛛と四葉の葉っぱ、これがマチルディーダが刺したのだろうか。
「まあ、良く分かったわね。ちぃちゃんと四葉のしろつめくさ。これはね、マチルディーダが刺したのよ。初めての刺繍なの」
「凄い、こんなに難しい刺繍をマチルディーダが、マチルディーダ針で怪我をしなかった?」
「何度か指を刺したけれど、刺繍はそうやって覚えるものだから大丈夫よ」
お義母様はそう言うけれど、ほんの少しの痛みすらマチルディーダに与えたくない。
「マチルディーダ、痛かったよね」
「いたくないもん。だいじょうぶだもん、あのね、あのね」
「マチルディーダ、ゆっくりよゆっくり。落ち着いて、練習した時を思い出して」
マチルディーダは、僕の手をぎゅっと握りながら何かを言おうとしている。
「……ョ、……」
一度言いかけて、口を閉じて、深呼吸。
僕は思わず息を止めてマチルディーダを見ていた。
「ロ、ロニー」
「マチルディーダ」
「ロニー、まってる。ディーダね、まってるロニー、だいしゅき」
何度僕が拗ねても、どれだけ繰り返してもヨニーとしか言えなかった。
奇跡的にロニーと言える事があっても、殆どはヨニーとしか言えなかったのに。
「練習したのよ。名前をちゃんと言える様になりたいって」
「マチルディーダ」
「言えるもん、ディーダ、言えりゅんだから。ヨ、ロニー!」
「練習してくれたんだね、マチルディーダ。ありがとう」
これからマチルディーダの成長を僕は近くで見る事は出来ないけれど、マチルディーダが僕の名前をちゃんと呼んでくれた。
何度も練習して、呼べる様になってくれたんだ。
「大好きだよ。マチルディーダ。僕の大切なお姫様」
「だいしゅき」
何年経っても、僕はこの日を忘れないだろう。
マチルディーダがもしも僕を忘れても、僕はマチルディーダを忘れない。
僕はブレガ侯爵と共に、公爵家を後にした。
数年後、マチルディーダと再会した僕が成長した彼女を今まで以上に溺愛する事になるけれど、それはまだ遠い未来の話だった。
おわり
※※※※※※
殆ど『ほのぼの』が息していなかった、ほのぼの日常編2はこれで終わりです。
ここまでお付き合い頂きましてありがとうございます。
番外編はあと数回で終わりますので、そちらも引き続きお付き合いくださいませ。
離れたくない。
ずっとずっとマチルディーダの側にいたい。
泣きじゃくるマチルディーダの涙が嬉しくて、一緒が良いと言う声が嬉しくて、僕はその願いを口にしそうになってしまう。
「ロニー、自分の立場を忘れるな」
くぅちゃんの感情の籠っていない声が耳に届いて、僕はぎゅうっとマチルディーダを抱きしめる。
望みは口に出してはいけない。
くぅちゃんの言葉は意地悪じゃなく、僕への助言だ。
ずっとずっとマチルディーダの側にいたいなんて、それを口にしたらその瞬間僕は婚約者候補から外されてしまうのだから。
マチルディーダの側に無能はいらないと、僕はニール様に言われたんだ。
マチルディーダが生まれてずっと彼女の側に居させて欲しいと願い出た僕に、ニール様は彼女の側にいるための条件を提示したニール様は、僕を蔑む目で見ていた。
その目の理由を知っていたから、僕はそれを受け入れた。
だって、僕は罪の子だから。
ニール様は僕がそうだとご存じだ、でも僕が望むことを許して下さった。
マチルディーダの隣に立つに相応しい人間になること、その為に努力し続けること、ニール様が用意してくださった貴族家の養子になるのは条件の一つだった。
王家の血を受け継ぐマチルディーダに平民の夫は相応しくない。
僕の実の母は平民で父は貴族だけど、僕は平民の両親の子となっているから僕は今平民の子供だ。
今の僕ではどれだけ努力しても身分が足りないんだ。
ブレガ侯爵家の養子にならなければ、そうして相応しい教育を受け実力を付けなければ駄目なんだ。
「マチルディーダ、君に相応しい人間になる。誓うよ、僕は絶対に諦めない。誰もが認める人間になって、君の隣に立てる人間になる。だから、ほんの少しの間だけお別れするだけなんだ」
そうだまた会える、また会えたら今度はずっとずっと一緒に居られるんだ。
だから僕は泣かない、涙は流さない。
両手を離し、マチルディーダの髪を撫でる。
柔らかい髪、泣いているせいなのか少しいつもより高い体温、僕のマチルディーダのすべてを覚えておくんだ。
「しゅこし? ほんとう?」
「うん、絶対にまた一緒に居られる様になる。僕はそのために頑張るから、待っていてくれる? マチルディーダ」
「まってりゅ、まってりゅ」
「手紙を書くよ。沢山、お返事をくれる?」
「おへんじ、しゅる。もじのれんしゅうをたっくさんしゅる、おへんじしゅるっ」
「待ってるからね、マチルディーダ。大好きだよ」
これくらいは許されるだろうか、僕の気持ちを覚えていて欲しいんだ。
「ディーダも、ディーダもしゅきっ! だいしゅき!」
「マチルディーダこんなに泣いて、笑顔でお見送りする約束だったでしょう?」
「おかぁさまぁ。だっていやにゃの」
泣いているマチルディーダの真っ赤になった目が可哀相で、でもその涙の理由が嬉しいなんて僕は意地悪だ。
お義母様がマチルディーダに話してくれていたのに、それでもマチルディーダは僕と離れたくないって泣いてくれているんだから。
「お義母様、あの」
「これは私とマチルディーダが刺繍したものよ。マチルディーダ、ロニーに渡してあげて」
「はぁい」
お義母様がマチルディーダに手渡したのは、剣帯の帯飾りだと思う。
礼服等には剣帯に帯飾りを着けるのが一般的だと家庭教師に習った。その時に帯飾りは未婚の内は母親が、結婚してからは妻が帯飾りに刺繍をするのだと教えられた。
「はい、あげりゅ」
「ありがとう、マチルディーダ。お義母様ありがとうございます」
僕が幼かったから、本当の母が僕に帯飾りを贈ってくれたことはない。
これが貴族のしきたりだったとしたら、平民の母はそもそも帯飾りに刺繍すると知らなかったかもしれない。
どちらにしても、初めての帯飾りだ。剣帯はお義父様が以前下さったものを今着けている。
「蜘蛛の巣と杖と蜘蛛」
「それは私がディーンと結婚した時に贈った帯飾りに刺繍したものと同じなのよ。それにマチルディーダが選んだ刺繍の柄を追加したのよ」
「息子に初めて贈る帯飾りは父親に関わりのある柄を刺繍する事が多いから、魔法使いの杖と蜘蛛ならディーンそのものだな」
お義母様の説明に公爵様が刺繍の柄の意味を教えてくれた。
蜘蛛の巣と魔法使いの杖は見事な刺繍で、これはきっとお義母様が刺して下さったものだろう。
「蜘蛛、くぅちゃんと、こっちはちぃちゃん? それに四葉?」
蜘蛛の巣の上の二匹の蜘蛛の内一つはくぅちゃんの色でこれは多分お義母様の刺繍、もう一つの方のちぃちゃんらしい蜘蛛と四葉の葉っぱ、これがマチルディーダが刺したのだろうか。
「まあ、良く分かったわね。ちぃちゃんと四葉のしろつめくさ。これはね、マチルディーダが刺したのよ。初めての刺繍なの」
「凄い、こんなに難しい刺繍をマチルディーダが、マチルディーダ針で怪我をしなかった?」
「何度か指を刺したけれど、刺繍はそうやって覚えるものだから大丈夫よ」
お義母様はそう言うけれど、ほんの少しの痛みすらマチルディーダに与えたくない。
「マチルディーダ、痛かったよね」
「いたくないもん。だいじょうぶだもん、あのね、あのね」
「マチルディーダ、ゆっくりよゆっくり。落ち着いて、練習した時を思い出して」
マチルディーダは、僕の手をぎゅっと握りながら何かを言おうとしている。
「……ョ、……」
一度言いかけて、口を閉じて、深呼吸。
僕は思わず息を止めてマチルディーダを見ていた。
「ロ、ロニー」
「マチルディーダ」
「ロニー、まってる。ディーダね、まってるロニー、だいしゅき」
何度僕が拗ねても、どれだけ繰り返してもヨニーとしか言えなかった。
奇跡的にロニーと言える事があっても、殆どはヨニーとしか言えなかったのに。
「練習したのよ。名前をちゃんと言える様になりたいって」
「マチルディーダ」
「言えるもん、ディーダ、言えりゅんだから。ヨ、ロニー!」
「練習してくれたんだね、マチルディーダ。ありがとう」
これからマチルディーダの成長を僕は近くで見る事は出来ないけれど、マチルディーダが僕の名前をちゃんと呼んでくれた。
何度も練習して、呼べる様になってくれたんだ。
「大好きだよ。マチルディーダ。僕の大切なお姫様」
「だいしゅき」
何年経っても、僕はこの日を忘れないだろう。
マチルディーダがもしも僕を忘れても、僕はマチルディーダを忘れない。
僕はブレガ侯爵と共に、公爵家を後にした。
数年後、マチルディーダと再会した僕が成長した彼女を今まで以上に溺愛する事になるけれど、それはまだ遠い未来の話だった。
おわり
※※※※※※
殆ど『ほのぼの』が息していなかった、ほのぼの日常編2はこれで終わりです。
ここまでお付き合い頂きましてありがとうございます。
番外編はあと数回で終わりますので、そちらも引き続きお付き合いくださいませ。
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