121 / 256
番外編
ほのぼの日常編2 くもさんはともだち31(蜘蛛視点)
しおりを挟む
「父上殿、生まれたかもしれない」
いくらなんでも早すぎないか? でも、蜘蛛とダニエラの繋がりが子が生まれたのだと伝えて来た。
「なんだと、いくらなんでも早すぎるだろう。まだ部屋に着いて幾らも経っていない」
「まだ一人だけだと思う。多分まだ男の赤子の方は生まれていないと思う」
ダニエラの腹にもう一人の魔力を感じる。
魔力の大きさは、ダニエラの腹の中にいる子の方が上だ。
明らかに魔力量が違う。
蜘蛛に力をくれたのは、多分腹の中にいる子の方だろう。
先に生まれた方の魔力量は多分ダニエラ並みで、マチルディーダとアデライザより低い様だ。
つまり、先程マチルディーダの魔力を吸いこんだのは男の赤子の方という事だ。
「そうか、もう一人。でも無事に生まれたのだな。父上すぐに向かいましょう」
「あ、あの。ぼ、僕も後で、マチルディーダが目覚めたら一緒にお義母様と子供達に会ってもいいでしょうか」
ロニーは恐る恐る父上殿に尋ねた。
アデライザが生まれた時、ロニーはこんな風では無かった。
父上殿とニール様が許していたし、ダニエラはロニーをマチルディーダと差別することなく接していたからだろうと思うが、蜘蛛が不愉快になる態度でマチルディーダに接していたしアデライザが生まれた時も当然の様に名前が付く前の子供に会っていた。
名前が付く前に赤子に会えるのは、母親に近しい者だけだという。
使用人はその対象では無いが、基本子供を産んだばかりの疲れ果てた母親に会える人間は限られているそうだ。
「アデライザの時お前は誰にも聞かずにその場にいただろう」
「……それは」
「……おまえがいなければダニエラが寂しがる。マチルディーダが目覚める頃にはもう一人も生まれているだろうから、おまえがマチルディーダを連れて来い」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる、これは貴族の礼ではなく使用人が雇い主にするような礼だ。
主がダニエラから聞いた話を蜘蛛は教えて貰っていたが、こんな風にロニーが変わるとは思っていなかった。
「蜘蛛、行くぞ」
「ああ、マチルディーダ、よく休むのだぞ」
部屋の隅に控えていた乳母がマチルディーダを抱っこしている、その側に近付きマチルディーダの額に触れる。
人の手だとこんなに簡単に触れられるのだと、不思議な気持ちになりながらマチルディーダに一刻程で自然に効果が切れる眠りの魔法を掛ける。
魔力暴走を起こし掛けたのだから、ぐっすりと眠った方が良い。
それにしても、明らかに人外の蜘蛛が近づいても動じないこの乳母は凄いな。
「待たせて申し訳ない」
父上殿とニール様の側に向かうと、三人一緒に温室部屋を出た。
「父上殿は本当に認めたのか」
「何をだ」
「ロニーの事だ」
「今のところ、あれが一番妥当なのだから仕方が無いだろう」
そういう選び方なのか? まさか、主の兄とダニエラの結婚もそういう選択の仕方だったのか?
「あれに流れている血は、蜘蛛から見てもどうしようもないが」
「どうしようも無い血を継いだのは、本人のせいではないからな。大切なのは血ではなく、どんな人間なのかということだ」
主は母親の事も兄の事も許せずにいて、だからロニーにその姿を重ね見て苦しんでいる。
ロニー自身に恨みが無くても、あれに憎い兄の姿を重ねてしまうのだ。
二人も主の兄ピーターを恨んでいると思うが、その子供への恨みは無いのか? いや、ピーターを恨みその血を恨むなら、半分だけ同じ血が流れている主の事も疎ましく思うのか?
「血は、関係ないのだな」
「……血縁があるからと恨むなら、ダニエラを害そうとした王妃と姉妹である私の妻の事も恨まなくてはならなくなるだろう」
「ああ、そう言えば姉妹だったな」
だが王妃の体に蜘蛛の分身体が入り込むと知っても、母上殿は蜘蛛に何も言わなかった。
血は関係ない、そうなるとロニーを心から愛せないと苦しんでいる主に問題があるのか。
「だが、ロニーは父親に良く似た顔をしているから、父親の影を見てしまう気持ちも分からないではない」
「蜘蛛は主の話をしているわけではないぞ」
長い長い廊下を三人共早足で歩きながらする話では無いと思うが、こういう時でも無いと聞けない内容だ。
少なくとも、主がいる前で聞くのは蜘蛛でも無理だ。
「そうか、ならそういう事にしておこう。蜘蛛、人の心というのは複雑なんだ。だから私はつい試してしまう」
「それはロニーに選ばせたことを言っているのか」
「それもだが、それ以外にも色々とある」
主が言っていた通り、ロニーがブレガ侯爵家の養子の道を選ばなければマチルディーダの婚約者候補には慣れなったという事か。
ロニーの父親の事があるから、自分が望む未来より、その場の欲や楽な道を選ぶ様ではマチルディーダの夫には到底なれないだろう。
マチルディーダの夫は次期侯爵家当主なのだから。
あれ? まてよ、当主はどうなるんだ?
「ネルツ家の当主は誰になるんだ。男児が生まれるならそちらに移るのか?」
「いいや。マチルディーダ自身が、外に出るのを望まない限り今のままだ」
「そうなのか? 女性は家を継がないものなのだろう?」
「普通はな、だがマチルディーダはネルツ家の跡継ぎとして、すでに王家に届けて陛下に認められている。一度届けを認められたら後から男が生まれた程度では変更できない」
つまりどういう事なんだ?
「たとえ最初に生まれたのが男でも、ある程度育ってからでなければ跡継ぎの届けは出さないものだ。生まれた子がどんな風に育つか分からないからな後々次男のほうが良かったとしても変えられない。それだけ跡継ぎの変更は難しいんだ。だから、マチルディーダと王子の婚約が取りやめになった時点で跡継ぎはマチルディーダだと届けを出したんだ。ネルツ家に男児が生まれ、マチルディーダが健康に育って万が一ダニエラに似てきたら、その時に王家が何を言い出すか分からないからな」
あの王子ならそういう事もあるだろう。
今のところ、マチルディーダもアデライザもどちらかと言えば主に似ていると思う、二人共主と同じタレ目なのだ。そこがそもそもダニエラとは違う。
「アデライザはすでに婚約しているが、今度はどうするんだ?」
「蜘蛛、さすがに生まれたばかりで普通は婚約者を決めたりはしないんだ」
「そうなのか? でもアデライザは」
「あれは、息子がどうしてもアデライザと一緒にいると言うから決まっただけだ。父上にも私にも出なかったというのに、あれに出るとはな」
ニール様の息子、ジェリンドはマチルディーダの一つ上だったか、つまり今のマチルディーダ位の年齢で伴侶を自ら決めたと言う事か。
「出るとは?」
「王家の血筋にたまに出る、相手を一目見た瞬間生涯の相手だと分かるというか決めるというか、そういうものだ」
「それは、陛下や先程の男の行動とどう違う」
失礼だとは思うが、陛下が父上殿に執着しているのも、あの男の言動も蜘蛛には求愛行動にしか見えないんだが。
それとも魔物の目にそう見えるだけで、人の感覚では違うのだろうか。
「だいぶ違うな」
「そうなのか?」
「陛下達のはどちらかといえば主従関係に近いんだが、息子のは、とにかく自分のものにしたいという欲求が主なんだ。あれに比べたらロニーがマチルディーダにしているのなんて執着とも言えない」
いや、それは間違っていると思うぞ、ロニーのは十分執着……あれがそうだと言えない程酷いのか?
「よくそれでアデライザと離れて暮らしているな」
「幼い子供を母親から引き離す真似をしたら嫌われると言い含めているからな。今はアデライザの教育を自分がするのだと言って必死に勉強しているな」
マチルディーダと一つしか違わないんだよな? そんな子供がアデライザの教育を自分がするとはどういう事だ。
ん? 一人に執着? 何だかそれは似ていないか?
「第一王子がダニエラに見せているのは、それなのか?」
「そうだ」
嫌なことに気がついてしまった。
何となく憂鬱になった蜘蛛は、ダニエラの娘達の将来が心配になっていた。
※※※※※※※
アデライザは、ジェリンドに溺愛されて幸せになります。
いくらなんでも早すぎないか? でも、蜘蛛とダニエラの繋がりが子が生まれたのだと伝えて来た。
「なんだと、いくらなんでも早すぎるだろう。まだ部屋に着いて幾らも経っていない」
「まだ一人だけだと思う。多分まだ男の赤子の方は生まれていないと思う」
ダニエラの腹にもう一人の魔力を感じる。
魔力の大きさは、ダニエラの腹の中にいる子の方が上だ。
明らかに魔力量が違う。
蜘蛛に力をくれたのは、多分腹の中にいる子の方だろう。
先に生まれた方の魔力量は多分ダニエラ並みで、マチルディーダとアデライザより低い様だ。
つまり、先程マチルディーダの魔力を吸いこんだのは男の赤子の方という事だ。
「そうか、もう一人。でも無事に生まれたのだな。父上すぐに向かいましょう」
「あ、あの。ぼ、僕も後で、マチルディーダが目覚めたら一緒にお義母様と子供達に会ってもいいでしょうか」
ロニーは恐る恐る父上殿に尋ねた。
アデライザが生まれた時、ロニーはこんな風では無かった。
父上殿とニール様が許していたし、ダニエラはロニーをマチルディーダと差別することなく接していたからだろうと思うが、蜘蛛が不愉快になる態度でマチルディーダに接していたしアデライザが生まれた時も当然の様に名前が付く前の子供に会っていた。
名前が付く前に赤子に会えるのは、母親に近しい者だけだという。
使用人はその対象では無いが、基本子供を産んだばかりの疲れ果てた母親に会える人間は限られているそうだ。
「アデライザの時お前は誰にも聞かずにその場にいただろう」
「……それは」
「……おまえがいなければダニエラが寂しがる。マチルディーダが目覚める頃にはもう一人も生まれているだろうから、おまえがマチルディーダを連れて来い」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる、これは貴族の礼ではなく使用人が雇い主にするような礼だ。
主がダニエラから聞いた話を蜘蛛は教えて貰っていたが、こんな風にロニーが変わるとは思っていなかった。
「蜘蛛、行くぞ」
「ああ、マチルディーダ、よく休むのだぞ」
部屋の隅に控えていた乳母がマチルディーダを抱っこしている、その側に近付きマチルディーダの額に触れる。
人の手だとこんなに簡単に触れられるのだと、不思議な気持ちになりながらマチルディーダに一刻程で自然に効果が切れる眠りの魔法を掛ける。
魔力暴走を起こし掛けたのだから、ぐっすりと眠った方が良い。
それにしても、明らかに人外の蜘蛛が近づいても動じないこの乳母は凄いな。
「待たせて申し訳ない」
父上殿とニール様の側に向かうと、三人一緒に温室部屋を出た。
「父上殿は本当に認めたのか」
「何をだ」
「ロニーの事だ」
「今のところ、あれが一番妥当なのだから仕方が無いだろう」
そういう選び方なのか? まさか、主の兄とダニエラの結婚もそういう選択の仕方だったのか?
「あれに流れている血は、蜘蛛から見てもどうしようもないが」
「どうしようも無い血を継いだのは、本人のせいではないからな。大切なのは血ではなく、どんな人間なのかということだ」
主は母親の事も兄の事も許せずにいて、だからロニーにその姿を重ね見て苦しんでいる。
ロニー自身に恨みが無くても、あれに憎い兄の姿を重ねてしまうのだ。
二人も主の兄ピーターを恨んでいると思うが、その子供への恨みは無いのか? いや、ピーターを恨みその血を恨むなら、半分だけ同じ血が流れている主の事も疎ましく思うのか?
「血は、関係ないのだな」
「……血縁があるからと恨むなら、ダニエラを害そうとした王妃と姉妹である私の妻の事も恨まなくてはならなくなるだろう」
「ああ、そう言えば姉妹だったな」
だが王妃の体に蜘蛛の分身体が入り込むと知っても、母上殿は蜘蛛に何も言わなかった。
血は関係ない、そうなるとロニーを心から愛せないと苦しんでいる主に問題があるのか。
「だが、ロニーは父親に良く似た顔をしているから、父親の影を見てしまう気持ちも分からないではない」
「蜘蛛は主の話をしているわけではないぞ」
長い長い廊下を三人共早足で歩きながらする話では無いと思うが、こういう時でも無いと聞けない内容だ。
少なくとも、主がいる前で聞くのは蜘蛛でも無理だ。
「そうか、ならそういう事にしておこう。蜘蛛、人の心というのは複雑なんだ。だから私はつい試してしまう」
「それはロニーに選ばせたことを言っているのか」
「それもだが、それ以外にも色々とある」
主が言っていた通り、ロニーがブレガ侯爵家の養子の道を選ばなければマチルディーダの婚約者候補には慣れなったという事か。
ロニーの父親の事があるから、自分が望む未来より、その場の欲や楽な道を選ぶ様ではマチルディーダの夫には到底なれないだろう。
マチルディーダの夫は次期侯爵家当主なのだから。
あれ? まてよ、当主はどうなるんだ?
「ネルツ家の当主は誰になるんだ。男児が生まれるならそちらに移るのか?」
「いいや。マチルディーダ自身が、外に出るのを望まない限り今のままだ」
「そうなのか? 女性は家を継がないものなのだろう?」
「普通はな、だがマチルディーダはネルツ家の跡継ぎとして、すでに王家に届けて陛下に認められている。一度届けを認められたら後から男が生まれた程度では変更できない」
つまりどういう事なんだ?
「たとえ最初に生まれたのが男でも、ある程度育ってからでなければ跡継ぎの届けは出さないものだ。生まれた子がどんな風に育つか分からないからな後々次男のほうが良かったとしても変えられない。それだけ跡継ぎの変更は難しいんだ。だから、マチルディーダと王子の婚約が取りやめになった時点で跡継ぎはマチルディーダだと届けを出したんだ。ネルツ家に男児が生まれ、マチルディーダが健康に育って万が一ダニエラに似てきたら、その時に王家が何を言い出すか分からないからな」
あの王子ならそういう事もあるだろう。
今のところ、マチルディーダもアデライザもどちらかと言えば主に似ていると思う、二人共主と同じタレ目なのだ。そこがそもそもダニエラとは違う。
「アデライザはすでに婚約しているが、今度はどうするんだ?」
「蜘蛛、さすがに生まれたばかりで普通は婚約者を決めたりはしないんだ」
「そうなのか? でもアデライザは」
「あれは、息子がどうしてもアデライザと一緒にいると言うから決まっただけだ。父上にも私にも出なかったというのに、あれに出るとはな」
ニール様の息子、ジェリンドはマチルディーダの一つ上だったか、つまり今のマチルディーダ位の年齢で伴侶を自ら決めたと言う事か。
「出るとは?」
「王家の血筋にたまに出る、相手を一目見た瞬間生涯の相手だと分かるというか決めるというか、そういうものだ」
「それは、陛下や先程の男の行動とどう違う」
失礼だとは思うが、陛下が父上殿に執着しているのも、あの男の言動も蜘蛛には求愛行動にしか見えないんだが。
それとも魔物の目にそう見えるだけで、人の感覚では違うのだろうか。
「だいぶ違うな」
「そうなのか?」
「陛下達のはどちらかといえば主従関係に近いんだが、息子のは、とにかく自分のものにしたいという欲求が主なんだ。あれに比べたらロニーがマチルディーダにしているのなんて執着とも言えない」
いや、それは間違っていると思うぞ、ロニーのは十分執着……あれがそうだと言えない程酷いのか?
「よくそれでアデライザと離れて暮らしているな」
「幼い子供を母親から引き離す真似をしたら嫌われると言い含めているからな。今はアデライザの教育を自分がするのだと言って必死に勉強しているな」
マチルディーダと一つしか違わないんだよな? そんな子供がアデライザの教育を自分がするとはどういう事だ。
ん? 一人に執着? 何だかそれは似ていないか?
「第一王子がダニエラに見せているのは、それなのか?」
「そうだ」
嫌なことに気がついてしまった。
何となく憂鬱になった蜘蛛は、ダニエラの娘達の将来が心配になっていた。
※※※※※※※
アデライザは、ジェリンドに溺愛されて幸せになります。
59
お気に入りに追加
2,666
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
ひとりぼっち令嬢は正しく生きたい~婚約者様、その罪悪感は不要です~
参谷しのぶ
恋愛
十七歳の伯爵令嬢アイシアと、公爵令息で王女の護衛官でもある十九歳のランダルが婚約したのは三年前。月に一度のお茶会は婚約時に交わされた約束事だが、ランダルはエイドリアナ王女の護衛という仕事が忙しいらしく、ドタキャンや遅刻や途中退席は数知れず。先代国王の娘であるエイドリアナ王女は、現国王夫妻から虐げられているらしい。
二人が久しぶりにまともに顔を合わせたお茶会で、ランダルの口から出た言葉は「誰よりも大切なエイドリアナ王女の、十七歳のデビュタントのために君の宝石を貸してほしい」で──。
アイシアはじっとランダル様を見つめる。
「忘れていらっしゃるようなので申し上げますけれど」
「何だ?」
「私も、エイドリアナ王女殿下と同じ十七歳なんです」
「は?」
「ですから、私もデビュタントなんです。フォレット伯爵家のジュエリーセットをお貸しすることは構わないにしても、大舞踏会でランダル様がエスコートしてくださらないと私、ひとりぼっちなんですけど」
婚約者にデビュタントのエスコートをしてもらえないという辛すぎる現実。
傷ついたアイシアは『ランダルと婚約した理由』を思い出した。三年前に両親と弟がいっぺんに亡くなり唯一の相続人となった自分が、国中の『ろくでなし』からロックオンされたことを。領民のことを思えばランダルが一番マシだったことを。
「婚約者として正しく扱ってほしいなんて、欲張りになっていた自分が恥ずかしい!」
初心に返ったアイシアは、立派にひとりぼっちのデビュタントを乗り切ろうと心に誓う。それどころか、エイドリアナ王女のデビュタントを成功させるため、全力でランダルを支援し始めて──。
(あれ? ランダル様が罪悪感に駆られているように見えるのは、私の気のせいよね?)
★小説家になろう様にも投稿しました★
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
王家の面子のために私を振り回さないで下さい。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。
愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。
自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。
国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。
実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。
ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる