上 下
117 / 256
番外編

ほのぼの日常編2 くもさんはともだち27(蜘蛛視点)

しおりを挟む
「ゆるさにゃいっ! でていってえっ!」

 マチルディーダの体が発光している、これは魔力暴走の前兆だ。
 興奮したマチルディーダの魔力は、いつもの何十倍もの大きさに急激に膨れ上がっている。
 主の魔力も、蜘蛛の魔力も超える大きさに、さすがの蜘蛛も震えが起きる。

「落ち着けディーダ!」

 蜘蛛の叫び声は、マチルディーダに届いていない。
 膨大な魔力が一度に放出されたら、マチルディーダの体が裂けてしまう!!

「ディーダ、落ち着けっ魔力を抑えるんだっ!」

 マチルディーダを包み込み、その魔力を蜘蛛が受ければ何とかなるだろうか。
 急激に大きくなり過ぎたこの魔力が爆発したら、マチルディーダの体がもたない。

「魔力を吸い込むしかないか」

 マチルディーダの体を蜘蛛の糸で包み、魔力を吸収する事は出来るだろう。だが、それで守れるだろうか。

「なんだこの魔力は、こんな子供の魔力とは思えない。あやつの血か忌々しいっ」
「父上、怖いっ」

 マチルディーダ目掛けて飛び降りようとした途端、男が杖を構えるのが見えた。
 今ここで蜘蛛がマチルディーダに飛び掛かれば、男は蜘蛛を攻撃するかもしれない。
 こんな男の攻撃蜘蛛は平気だが、男から攻撃を受けた蜘蛛を見たマチルディーダが衝撃を受け更に暴走を加速させるかもしれない。

「邪魔だ」

 男を排除しながら、マチルディーダを蜘蛛が守る。
 それならば出来るが力を分散させたら魔力を吸う力が足りなくなる、だが蜘蛛の体などマチルディーダを守れるなら壊れてしまっても構わない。

「ディーダのおとおさまとおかあさまを、ぶじょくしゅるなんてゆるしゃにゃい!」
「ディーダ、力を抑えろ! メイナ、お前達ロニーを連れてディーダから離れろっ」

 メイナ達に指示を出しながら、男を糸で拘束しマチルディーダの下へと落ちていく。

「ゆるさにゃいっ、ゆるさにゃいっ!!」

 マチルディーダの魔力はどんどん大きくなり、蜘蛛の魔力を遥かに超えてしまった。

「ディーダ!!」

 マチルディーダを守る為の力、今の蜘蛛じゃ駄目だ。
 力が欲しい、マチルディーダを守れるだけの力。
 今の蜘蛛では弱すぎる、だが諦めない。蜘蛛の命等いくらでも捧げる、絶対にマチルディーダを守る。

『イッショニマモロウ。アネサマをマモル。チカラヲアゲル』

 天井から落ちる僅かな時間、蜘蛛の体は何かに導かれて変化した。
 力が満ちて蜘蛛が変わる、それに気が付いた瞬間蜘蛛はマチルディーダともう一人の体を抱きしめた。

「いやぁぁぁぁっ!!」
「ディーダ。落ち着け大丈夫だ、ディーダ」

 長い二本の腕が、無数の糸が、マチルディーダ達を抱き込んだ。
 二本の腕? これはなんだ蜘蛛の前足とは違うもの、だが蜘蛛のものだ。
 糸? いいやこれは糸じゃない、薄い緑色の何か? まるで人の髪の様なもの。

「マチルディーダ」

 急激に光が吸収されていく、魔力が何かに吸い込まれていく。
 蜘蛛じゃない、蜘蛛はマチルディーダ達を抱いているだけ蜘蛛の魔力はマチルディーダを守っているだけだ。
 魔力を吸い込んでいるのはマチルディーダと一緒に蜘蛛が包み込んでいる誰か、これは……ダニエラ?

「おかあ、さまぁ?」
「マチルディーダ、気持ちを静めて。さあ息を吸ってゆっくりと吐いて」
「ダニエラ、なぜ」

 視線を動かすと、すぐそばに車椅子が倒れていた。
 あの時ダニエラが丁度ここに来ていたのか? でも、それにしては早すぎる。

「くぅちゃん?」

 ダニエラの腕の中で、マチルディーダが蜘蛛を見て不思議そうな声をあげた。
 蜘蛛を見つめている間も、マチルディーダの魔力はダニエラに吸われ続けている。
 蜘蛛の目には魔力が吸われていく様がはっきりと見えている、ダニエラの腹に向かい膨大な量の魔力が吸い込まれていく。
 何故ダニエラがマチルディーダのあの膨大な魔力を吸えるのか、ダニエラの魔力の器はそんなに大きく無いはずなのに、限界を超える量を吸い込んでいるんだ。

「マチルディーダ、落ち着いた?」
「おかあさまぁ、おかあさまぁっ」

 わあわあとマチルディーダは泣き出して、彼女のその声が何かの声に重なった。

『あなたに食べられたら、愛しいあの人のもとに行けるのかしら』

 なんだ、今の声は。
 さっきの声とも違う、声が聞こえる。

「良かったわ、マチルディーダ。私どうやってここに来たのか分からないけれど、あなたが無事で良かった」

『離れたくなかった、でもあの日穢された私は望まぬ子を宿してしまったの。

「マチルディーダが危ないって、教えられたの。魔力が爆発しそうだって、それで気が付いたらここにいたの」
「おかあさま、くるしぃの?」

 小さなマチルディーダの手がダニエラの頬に触れた。
 魔力の光はもう見えない、その代わりダニエラの顔が青くなっていく。
 ダニエラがマチルディーダを抱きしめている、そのドレスの裾がなぜか濡れている様に見えた。

「ダニエラ。……まさか、メイナ! ダニエラのドレスが濡れている、これはまさかっ!」

 マチルディーダが生まれた時、あの時と同じ。
 急に産気づいたダニエラが破水した時と同じではないか?

『マリョクヲスイスギタ。コノママダトオカアサマガシンジャウ』
『ハヤクソトニデナイト、オカアサマガシンジャウワ』

 先程聞こえた声、蜘蛛に力をくれると言ったあの声が再び聞こえた。
 お母様? 外に出る? それじゃあこの声は。

『私と娘を食べて、もうこの世に生きているのが辛いの。
 ルチアナは、王子殿下の婚約者ではいられなくなってしまった。
 私達はブレガ家にいられなくなってしまった』

 こちらの声とは違う、この声と違う声。

「奥様っ。は、破水されている!」
「治癒師、いいや産婆を呼べ、早くっ。お子が生まれる準備を早くっ」

 蜘蛛の指摘にメイナがダニエラに近付き、そして声を上げた。
 バタバタと使用人達が慌て始め、私兵たちも散って行く。
 
『主。大変だ、ダニエラが破水したっ!』
『今、部屋に向かっているっ!』

 慌てて主に声を繋げた蜘蛛に、声がまた聞こえた。

『ねえ、あなたに食べられたら私達はディーンの側にいられるのかしら。
 ずっと後悔していたわ、あの時逃げたりしなければ良かった。
 ディーンに恨まれても、嘆かれても側に居続ければ良かった。
 穢された私を見せたくなくて、私は逃げたの。
 逃げたことをずっとずっと後悔していたの』

「何の声だ」

 知らず蜘蛛は声に出していた。
 どこからこの声が聞こえる、声はディーンと主の名を呼んだ。
 聞いた事がある声、少し違うがでもこの声は。

「くぅちゃん、私を立たせて。あなたはくぅちゃんよね?」

 混乱する蜘蛛に、ダニエラは不思議な事を聞いて来た。
 ダニエラは、蜘蛛を忘れたのか? 何故そんな聞き方をする。

「ダニエラ、何を言っている。蜘蛛の姿を忘れたのか」
「くぅちゃん気が付いていないの? あなたは今人の形をしているわ。薄い緑色の髪は蜘蛛時の体と同じ色なのね、くぅちゃん。マチルディーダとロニーに声が聞こえない様に出来る?」
「……分かった。そんなの簡単だ」

 ダニエラに言われて、マチルディーダの周囲に音を遮断する魔法を掛ける。
 ダニエラは今、人の形と言った。
 ダニエラに言われて手を見れば、蜘蛛のそれは人の手だった。
 二本の手、二本の足。
 ダニエラを支えながら立ち上がれば、なぜか蜘蛛はこの家のメイドの服を着ていた。

「辺境伯、この度はネルツ家への侮辱、ダニエラ・ネルツはしっかりと受け取りました。とても不愉快です」

 顔を歪め体重を蜘蛛に預けながら、ダニエラはそれでも男を見据え口を開いた。

「ダ、ダニエラ私は別に侮辱など。だいたいお前が悪いのだ。夫が亡くなったのなら大人しく辺境に来れば良かったのに、聖殿の間で婚姻の儀式をする等恥知らずな真似をして、子まで得て。恥知らずな行いをシード神は許さなかったではないか。マチル女神に縋らねばならぬ程の弱い子を生む羽目になったのではないか」

 辺境の地はシード神の教えを頑なに守るのだと聞いた事があるが、この男の言い分はそれとは違う様に聞こえる。
 何が恥知らずだ、何が神が許さなかっただ、ふざけるな。

「あなたを頼る理由なんて何一つありませんわ。私は夫を愛しています、彼に守られ幸せに暮らしています。子供達と共に」
「だがその結果、王家はその娘との婚約を止めてしまったではないか。マチルなんて名が付く子が王妃になんてなれはしないんだ。生まれた時から王家に疎まれた子と言われ続けるだろう。そんな可哀相な子を私は息子の妻に貰ってやろうと慈悲の心で言っているというのに、今ならその子供と一緒にお前を引き取ってやろうと言っているのに、それを断るなんて」

 呆れた話だ。
 この男が何を言いたいのか、魔物の蜘蛛には理解出来ない。
 何故ダニエラがこの男に引き取ってもらわないといけないのだ。
 ダニエラの夫は主ただ一人だ。

「言いたい事はそれだけでしょうか。言いたい事をすべて仰ったのであればどうぞお引き取り下さい。そして二度と私の前にその顔を見せないで頂けますか。私だけを侮辱するのなら笑って聞いて差し上げますけれど、私の大切な夫と娘への侮辱を平気な顔で告げるあなたを私は決して許しはしません」
「ダニエラ、本当にあんな男がいいというのか。その無様な姿はあの男を思う故だと」
「無様? 寝言は寝てから言って頂けますか。……こんな言葉現実に使う日が来るとは思いませんでしたわ。呆れた方ですわね」

 無様とこの男はダニエラを侮辱した。
 可愛い子を、主の子を宿した腹を無様だと。

「ダニエラ、これを殺していいか」
「くぅちゃん、裁くのは私達では無いわ。お父様よ」

 ダニエラは冷静だった。
 崩れ落ちそうになりながら、それでも気丈だった。

「私が愛しているのは、夫として生涯私の隣にいるのはディーンだけです。私が産むのは彼の子だけ」

『産みたかった、あの人の子を。
 愛しているわ、ルチアナ、でもあなたが憎かった、彼の子ではないあなたの存在が悲しかった』

 また声が聞こえた。
 何故こんな声が聞こえる。

「私と子供達の幸せに、あなたはいらないわ。夫と子供を侮辱する家にマチルディーダを嫁がせたりしません」
「後悔する事になるぞ。誰がマチルなんて名を付けた娘を欲しがる?」
「この子を愛する人は沢山いますから、ご心配なく。さあ、お帰りはあちらです」

 優雅に右手をの扉の方へ向け、ダニエラは笑った。
 笑って、そして崩れ落ちた。

「ダニエラッ!」
 
 慣れない人間の腕で、蜘蛛はダニエラの体を支えた。
 
「おかあさまぁ!」

 崩れ落ちる様に倒れ込んだダニエラに、マチルディーダが縋りついた。

『ねえ、蜘蛛さん私を食べて。そうしたら私はあの人の元に行けるでしょう?』

 知らない声を、でもどこかで聞いた事がある声を聞きながら蜘蛛はダニエラの体を支え続けたのだ。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

ひとりぼっち令嬢は正しく生きたい~婚約者様、その罪悪感は不要です~

参谷しのぶ
恋愛
十七歳の伯爵令嬢アイシアと、公爵令息で王女の護衛官でもある十九歳のランダルが婚約したのは三年前。月に一度のお茶会は婚約時に交わされた約束事だが、ランダルはエイドリアナ王女の護衛という仕事が忙しいらしく、ドタキャンや遅刻や途中退席は数知れず。先代国王の娘であるエイドリアナ王女は、現国王夫妻から虐げられているらしい。 二人が久しぶりにまともに顔を合わせたお茶会で、ランダルの口から出た言葉は「誰よりも大切なエイドリアナ王女の、十七歳のデビュタントのために君の宝石を貸してほしい」で──。 アイシアはじっとランダル様を見つめる。 「忘れていらっしゃるようなので申し上げますけれど」 「何だ?」 「私も、エイドリアナ王女殿下と同じ十七歳なんです」 「は?」 「ですから、私もデビュタントなんです。フォレット伯爵家のジュエリーセットをお貸しすることは構わないにしても、大舞踏会でランダル様がエスコートしてくださらないと私、ひとりぼっちなんですけど」 婚約者にデビュタントのエスコートをしてもらえないという辛すぎる現実。 傷ついたアイシアは『ランダルと婚約した理由』を思い出した。三年前に両親と弟がいっぺんに亡くなり唯一の相続人となった自分が、国中の『ろくでなし』からロックオンされたことを。領民のことを思えばランダルが一番マシだったことを。 「婚約者として正しく扱ってほしいなんて、欲張りになっていた自分が恥ずかしい!」 初心に返ったアイシアは、立派にひとりぼっちのデビュタントを乗り切ろうと心に誓う。それどころか、エイドリアナ王女のデビュタントを成功させるため、全力でランダルを支援し始めて──。 (あれ? ランダル様が罪悪感に駆られているように見えるのは、私の気のせいよね?) ★小説家になろう様にも投稿しました★

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

処理中です...