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6章 集う力

283 山頂の異変

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「見て下さいユイトさん、麓があんなに遠く見えます。やっと山頂に辿り着けたんですね」

サクヤが嬉しそうに山の麓を指差す。見ると遥か遠くにドラゴンロックの麓の森が見えた、山を登り始めて数週間ようやく俺達はドラゴンロックの山頂付近へと辿り着けたのた。

「本当に長い道のりだったぜ。帰りの事を思うと今から憂鬱になっちまうな…」

「オウル、僕はそれよりも無事に山を降りられるかの方が心配になってきた。向こうの茂みから血の匂いがする」

オウルさんが弓を構えながら表情を険しくする。狩猟神の耳飾りから警告は発せられないが用心に越した事はない。俺も咲夜の柄に手を掛けいつでも抜刀できる体勢をとった。

「この匂い…流れて大分時間の経った血の匂いだね。多分ドラゴンの血だと思うよ。ボクが様子を見てこようか?」

「生き物の気配は感じられないわね。多分危険は無いと思うわ」

ルメスとテミスもこの異変に気付いた様だ。この先で何か起こったのは確実だか危険は無い様だ、俺は臨戦態勢を保ったままで茂みの奥を確認する為に近づいた。

「なんだコレは…皆!ちょっとこっちへ来てくれ!」

茂みの奥で俺が見た物はレッドドラゴンの死体だった。しかも1体や2体では無い、大量のレッドドラゴンが血を流し大地に平伏していたのだ。

「なんだ…こりゃ全部レッドドラゴンか?」

「一体誰がこんな事を?僕達以外に誰かがこの山にいるって言うのか?」

「もしかして私達以外の冒険者がドラゴンの素材目当てでここまで来たって事はないでしょうか?」

「いや、多分コイツは冒険者の仕業じゃない…どの死体も魔核を一突きで砕かれている、やったヤツはかなりの凄腕だ」

レッドドラゴンの死体を調べるとどの死体の胸にも槍の様な物で貫かれた跡が有った。これだけの事が出来る冒険者が高値で取引される魔核を砕く様な真似をするとは考え難い。

「俺達以外にドラゴンロックをここまで登ってこれそうなヤツは何人か知ってるがコレはソイツらの仕業じゃ無ぇな」

「死体から素材が回収された形跡もないね。襲って来たレッドドラゴンを返り討ちにした様だ。死体の腐敗具合から2、3日前は経っていると思う」

「だから昨日レイとアンを襲ったレッドドラゴン達は集団で行動していたんじゃないでしょうか?初めて自分達より強い敵を知り身を守る為に群れで行動する様になったとは考えられませんか?」

「ユイト君の言う通りかも知れないね…兎に角今はっきりしているのはレッドドラゴンよりも遥かに強い何者かがこの近くにいるって事だけだ。この先は何が起こるか分からない、警戒して先を進もう」
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