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5章 邪なる者達

110 貴族と平民

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爆発音を聞いた俺達が玄関に駆けつけると庭でラッカさんが20名程の鎧を着た男達と対峙していた、植木が数本根元から吹き飛んでいる、さっきの爆発音の原因だろう。

「正面切ってバルメス家に喧嘩を売って来た度胸は褒めてやるよ、でも次は容赦しない、魔導妃ラッカの力をその目に焼き付けな!」

「お待ち下さい!我々は公爵邸に不審な者共が入ったとの話を聞き治安維持の為に館を訪問しただけで御座います!公爵夫人様と敵対するつもりはございません!」

鎧姿の男達を怒鳴りつけるラッカさんの頭上には小さな雷雲が渦巻いていた、時折紫電が走り辺りにバチバチと音が響く。

「だからそれはウチが招待した大切なお客様だって言ってるだろ!まさかウチに誰か訪ねて来た事は知ってるのに家宝の馬車で出迎えた事は知らないなんて言わないだろうね!?ウチがあの馬車で出迎えするのは大切なお客様だけだって貴族のアンタ達なら知っている筈だ!」

「それは…その通りで御座いますが…しかし我々としましても…」

ラッカさんに怒鳴られた男はしどろもどろに口をモゴモゴさせている、反論が思いつかないのだろう。

「公爵夫人様、ご機嫌麗しゅう御座います、王都にお帰りになられてるとは存じませんでした、この度は不躾に館をお訪ねして申し訳ございません、確かに仰った通りバルメス家の馬車によってどなたかをお出迎えになったのは確認されております、しかし同時に馬車に乗り込んだのは平民だと言う目撃情報が御座いまして…」

「エナハイ家の坊主か、こいつらの頭はアンタって事でいいんだね?確かにウチが招いたお客様は貴族でなく平民だよ、それの何に問題が有る?」

男達の最後尾にいた他よりも豪華な鎧を着た男が前に出てラッカさんへ跪く、ハンサムだがどこか執念深い様な印象を受ける顔だ。

「ああ!これを悲劇と云わず何と申せばよろしいのか!バルメス家の馬車で館に招かれる事は全ての貴族の憧れ!招かれた者は社交界で半年…いや1年は皆の話題にされるでしょう!その様な僥倖が何故平民風情に!」

男は芝居掛かった仕草でナヨナヨと地面に倒れむ、何だか良く分からないが俺達は凄い待遇で館へ招かれたみたいだ、社交界なんて全く興味無いがちょっと優越感を感じてしまう。

「大切なお客様に貴族も平民も関係無いよ、大体アンタの家の連中が平民を馬鹿にするのは昔から一言言ってやりたかったんだ、私達貴族が踏ん反り返っていられるのは税を納めてくれる平民がいるからだ、その代わりに私達貴族は平民が安心して暮らせる様に国を運営する、私が何か間違った事を言ってるかい?」

ラッカさんの言葉に男は何も言い返せ無い、その時玄関から庭の様子を見ていた俺と男の視線が交わった。
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