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3章 小さな英雄と狩猟神の耳飾り

065 朱雀

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ガルと2人であの女魔族を倒す、一瞬でも隙を作って貰えれば俺があの女に大技を叩き込む、しかしガルを危険に晒す訳にもいかない、まずは俺が注意を引くか。

「ガル、俺の合図でアイツに矢を放ってくれ、まず俺が突っ込む」

「わかったよ、ユイト兄ちゃん大丈夫なの?辛そうだし肩だって怪我してるじゃないか」

「心配してくれてありがとな、大丈夫さ、これが終わったらゆっくりと休むよ」

強がっては見たものの全身の疲労はピークに達している、肩の傷は見た目程ダメージはないが問題は鬼神化の反動だ、あまり長くは戦えそうにない、一回の攻撃であの魔族を仕留める。

「じゃあ行ってくるよ、合図するまで攻撃するんじゃないぞ」

ガルの頭をポンと叩き女へと駆け出す、両脚が重い、鉛でもつけられている様だ。

「おい!醜い化け物!俺を狙え!」

あの女魔族は自分の美しさを強調していた、それを否定してやれば俺を攻撃してくるのでは無いだろうか?

「醜い!?誰がそんな事を言ったんだい!?お前かぁぁぁぁぁ!」

「ここまで思い通りに反応してくれるとはね!『イージス』!!」

俺目掛けて叩きつけられた腕をイージスで防ぐ、受け止められた赤黒い腕がすぐ目の前にある、あの時のビズミスの身体と非常に似ている、固体とも液体とも言い難い謎の物質だ。

「ヤツ迄後3メートルと云った所か、ここまで近づけばもう大丈夫かな?」

今の俺でもここまで近づけばあの技を当てる事が出来るだろう、後はガルを信じるしかないか。

「ガル!今だ!」

ガルを見ればもう弓を構えていつでも攻撃できる態勢になっていた、大した物だ、あの歳で化け物相手に怯える事も無い。

「東の風で遊べや精霊、我が矢に纏て敵を撃て『トルネードアロー』!!」

驚いた、ガルのヤツ魔法も使えたのか、流石は村一番の勇者の子だ、ガルの放った矢は風を竜巻の様に纏い女魔族へと吸い込まれる様に飛んでいく。

「!?ガキが!!撃ち落としてやるよ!!」

腕がガルの放った矢を撃ち落とそうと俺から離れる。

「良くやった!後は任せろ!」

これだけ隙が有れば十分だ、俺は咲夜へ意識を集中し気を練る、ガルの放った矢は女の腕に絡め取られ地面へと叩きつけられた。

「一撃で決める!『朱雀』!!」

咲夜の刃が紅い焔に包まれる、最上位剣スキルの一つ『朱雀』全てを焼き尽くす必殺の一撃だ、咲夜を一振りすると焔は美しい鳥の形となり女へと飛んで行った。

「美しい!美しいじゃないかい!許さないよ!私より美しい物は存在しちゃいけないんだ!」

異変に気付いた女が朱雀を撃ち落とそうと腕を叩きつける、だが無駄だ。

「なんだい!?腕が!私の美しい腕が!消えない!?あぁぁぁっ!燃える!燃えてしまう!」

「お前には似合いの最期だ、せめて美しく燃え尽きろ」

女の体が焔に包まれる、焔は女を燃やし尽くすまで美しく紅い光を放っていた。
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