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2章 交易都市の錬金術士

044 狂気の終焉

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「あなたは!何をしたか分かっているのですか!!平民が!!貴族を傷つけるなどあってはならない事なのです!」

ビズミスが雄叫びを上げる、タリアムを取り戻す為に付けた傷はもう再生を始めていた、凄まじい生命力だな。

「埒があかないな」

「死刑です!貴方は死刑ですよぉぉぉ!!」

ビズミスの触手が三度みたび光線を乱射しようと発光を始める、しかしそうはさせない、鬼神化した俺にとってその予備動作は隙だらけだ。

「隙だらけなんだよ!『五月雨さみだれ』!!」

ビズミスに飛び込みながら無数の剣閃を放つ、光線を放とうとしていた触手を全て斬り飛ばしビズミスの背後に着地する

「!?何を!何をしたのです!?何故平民が私から奪おうとするのですか!?私は許可してない、許可していないのです!!」

「完全に狂ってる、もう人間ですらない」

「ふざけるなぁぁ!!私こそが人間!貴族こそが人間なのです!!あなた方平民は家畜!!貴族から搾取され貴族を崇め敬うべき存在なのです!!」

憐れだ、こんな姿になってまで自分を狂信的な迄に信じている、ビズミスの世界は自分1人で完結しているのであろう。

「もう終わりにしよう、お前は歪み過ぎた」

咲夜を肩の高さに水平に構えビズミスに刃先を向ける、ビズミスは怒りに満ちた顔で俺を睨みつけていた。

「『凍牙とうが』」

俺は赤黒い球体に咲夜の切っ先を突き刺し即座に引き抜く。

刺された場所を中心にビズミスが氷像へと姿を変える。

「な!?何ですかこれは!寒い!寒い!誰か私を暖めなさい!命令です!これは命れ…」

ビズミスが何か叫ぶが言い終わる前に全身が氷に包まれ、砕けた。

「最後まで自分勝手なヤツだったな」

月の光がビズミスだったモノの凍った破片をキラキラと照らしていた。

鬼神化を解くと全身に痛みが走り倦怠感に襲われる、鬼神化の反動だ。

「流石に辛いな…全身が筋肉痛みたいだ」

「私もクタクタです、でも助けられて本当に良かったです」

「そうだな、本当に良かった」

サクヤと2人並んで座り込む、身体はキツいが前回鬼神化した時ほどではない、少しはスキルを使いこなせる様になったのだろうか。

アイギスとタリアムが俺達に向け駆け寄ってくる。

カッパーさんは騎士達と勝鬨をあげていた、ビズミスの狂気はここに終わったのだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

領主館を囲む林、1本の木の上で戦いの一部始終を見ていた人物がいた。

全身を黒いローブで包み性別もわからない。

「あ~あ、せっかく面白いオモチャを見つけたのに壊されちゃった、まぁいっか、次のオモチャを探しに行こっと」

呟くと木の上から姿を消す、夜空に輝く月だけがその言葉を聞いていた。
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