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1章 リザードマンと女神の籠手

010 模擬戦

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「クソ真面目な大将が冗談を言うなんて珍しい、明日は槍でも降るのかねぇ?」

「そうよアルフ、イール村を襲ったリザードマンは数百匹いたそうじゃない、それをたった2人でなんて…」

「僕も直接見た訳じゃないがユイト君とサクヤちゃんが2人で追い払ったそうだ、村の皆が口を揃えて言っていたよ、そうなんだろ?父さん」

アルフさんがベータさんに問いかける。

「俺はやぐらから見ていたぜ、2人とも凄いなんてもんじゃなかった、2人が戦い始めて5分後にはヤツら半分以上仲間を失って逃げて行きやがった」

ベータさんの話を聞いた2人は俺とサクヤをマジマジと見つめてきた。

「そうだ、軽く模擬戦をしないかい?僕も話を聞いただけなんで是非実際に2人の実力を見て見たいんだ」

「模擬戦ですか?俺は構いませんが…サクヤはどうする?」

はひ、ははひほほっへーへふ!はい、わたしもオッケーです!

ベータさんの用意してくれたお菓子を全滅させサクヤは答えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺達は風車の前にある広場で村人達に囲まれていた、何が始まるのかと村中の住人が集まってきたのだ。

「ガンマは偵察役スカウトだから見学に回ってくれ、ユイト君と僕、サクヤちゃんとイオタの組み合わせでいいかな?」

「わかりました、ルールはどうしますか?」

「そうだね、上からモノを言う様で申し訳ないんだが僕とイオタが君達の実力が充分だと判断した時点で終了しよう」

VRMMOナイアルの強豪クランがやっていた入隊試験を思い出す、確かに相手の力量を確認するにはいい方法だ、『赤き風』の2人の実力がわからない以上全力でいかせてもらう、これだけ持ち上げられて不合格になったら恥ずかしてしまう、明日から外を歩けない。

「それじゃあ僕達からはじめよう」

促された俺は人垣の中心でアルフさんから3メートル程離れて対峙する。

「ガンマ!合図を頼む」

「あいよ大将、それじゃいくぜ?試合開…」

俺はの鞘に納められた咲夜の柄を握り腰を落とす、アルフさんは剣を上段に構えていつでも振り下ろせる体勢だ。

「始!」

試合開始の合図と同時に地を蹴る、辺りの時間が止まっている様に感じられた、一瞬で間合いを詰め咲夜を鞘から解き放つ、刃のままだとアルフさんの剣をダメにしてしまうと判断し途中で手首を返した、背の部分がアルフさんの刃の根元にぶつかり…

『キィーーーーン!!』

鋭い金属音が周囲に響き渡る、勝敗は決した。

少しの間宙をクルクルと舞ったアルフさんの剣が地面に刺さる。

「あ…アレ?僕の剣は?へ?」

何が起こったか分からずギャラリーは声を出せない、アルフさんも何が起きたか分からずに混乱している。

「俺の勝ち、でいいですか?」

混乱しているアルフさんの肩をポンと叩き話しかける。

「あ…あぁもちろんだ、何をされたか全く分からなかった、僕の完敗だ」

アルフさんが敗北を宣言すると周囲の村人達が歓声をあげる。

「かっこ良いですユイトさん!よーしわたしも頑張りますよ!」

興奮したサクヤが次は私の番だと体の周りに無数の火球を漂わせスタンバイしている。

「さぁイオタさん!いざ尋常に勝負です!」

ビシッと!人差し指をイオタさんに向けるサクヤ、人を指差すな、お行儀悪いぞやめなさい。

イオタさんは火球の数と熱量に圧倒され。

「参りました…」

と何とか声を絞り出した。
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