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落ち着かない帰路
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あー、もう、どうしよう・・・・・・。
辺境伯領から王都発の列車の中。
背中を丸めて、顔を両手で覆う。
子供たちと遊んだ後、私は慌てて辺境伯邸へ走り帰り、辺境伯様に飛びつかんばかりの勢いで帰ると言った。
幸い、ヴィクトは自室で勉強だったから、引き留められないうちに、荷物なんてないからそのまま辺境伯様に帰りの運賃を頂いて(借りるつもりだったけど、ヴィクトが強引に連れてきたからと帰宅運賃は持つと押しきられた)、駅までまた走ると列車へ飛び乗った。
ヴィクトへの想いを自覚した私の心の中は大嵐。
大混乱だった。
だって、だって、そんなのはダメでしょう。
婚約者がいる身で他の人を・・・・・・とか!
ただでさえ、オーフェルとリスミィのことで潔癖気味きなってるっていうのに、自分がこんな事態に陥るなんて────うわぁぁぁぁ! どうすればいいの!?
悶々としているうちにどんどん王都へと列車は近づいていく。
というか、勢いで帰ってるけれど、怒られるわよね、私?
無断外泊した以上、それは覚悟の上だけど今はそれどころじゃない。
とりあえず、帰ったらお父様とお母様に謝って、なるべくリスミィと出くわさないように部屋に引き籠ろう。それからどうするか考えよう。
どのみち式は近い。早く自分の中で整理をつけないといけない。
──そっか。帰ったらオーフェルとも顔を合わせることになるのか・・・・・・。
そのことに余計心がどっと重くなる。
同時に脳裏に浮かぶのは──
「~~っ! 待って待ってってば!」
誰もいないのに、何が待ってなのか。
頭に浮かぶのはヴィクトの顔だった。
これは私がヴィクトに会いたいと心のどこかで思っているからなのだろうか。やたらヴィクトの顔が浮かんで仕方ない。
「~~~~」
顔が熱い。体がぽかぽかする。
これが所謂、恋をしている状態というやつなのだろうか?
ダメなのに、ヴィクトのことを考えてしまう。
冷静に、冷静になるのよ、私。
そもそも、私がヴィクトを好きでもどうしようもないじゃない。
ヴィクトに結婚するかと言われた。
自覚した今、顔から火を吹き出しそうな事実だけれど、ヴィクトはそういう意味で言った訳じゃない。
ヴィクトから私へ親愛はあるだろうけれど、恋愛感情なんてある訳ない。
あの提案だって、オーフェルと結婚したくないと言った私を助けるための解決策の一つだろうし。
想ったところで、どうしようもないことなんだ・・・・・・。
想いは結実しない。この恋は叶うことはない。
そう自分に言い聞かせると、体が無気力になる。
列車が止まる。車掌が王都の駅だと告げた。
のろのろと体を動かし、列車を降りるとその足で家へと向かう。
屋敷に近づく程に足が鉛のように重くなるけれど、それでも歩き続ければ辿り着いてしまう。
「何て、言われるかしら・・・・・・」
玄関の取っ手を掴んで、しばらく考え込む。
それでも、このままでいる訳にもいかないと、ええい、ままよ! と私は帰宅を告げた。
意外なことに、怒られると覚悟していた私を出迎えたのはにっこにこな顔のお母様だった。
やけにご機嫌なその様子に面食らい、私はポカンとする。
──いや、どうして?
辺境伯領から王都発の列車の中。
背中を丸めて、顔を両手で覆う。
子供たちと遊んだ後、私は慌てて辺境伯邸へ走り帰り、辺境伯様に飛びつかんばかりの勢いで帰ると言った。
幸い、ヴィクトは自室で勉強だったから、引き留められないうちに、荷物なんてないからそのまま辺境伯様に帰りの運賃を頂いて(借りるつもりだったけど、ヴィクトが強引に連れてきたからと帰宅運賃は持つと押しきられた)、駅までまた走ると列車へ飛び乗った。
ヴィクトへの想いを自覚した私の心の中は大嵐。
大混乱だった。
だって、だって、そんなのはダメでしょう。
婚約者がいる身で他の人を・・・・・・とか!
ただでさえ、オーフェルとリスミィのことで潔癖気味きなってるっていうのに、自分がこんな事態に陥るなんて────うわぁぁぁぁ! どうすればいいの!?
悶々としているうちにどんどん王都へと列車は近づいていく。
というか、勢いで帰ってるけれど、怒られるわよね、私?
無断外泊した以上、それは覚悟の上だけど今はそれどころじゃない。
とりあえず、帰ったらお父様とお母様に謝って、なるべくリスミィと出くわさないように部屋に引き籠ろう。それからどうするか考えよう。
どのみち式は近い。早く自分の中で整理をつけないといけない。
──そっか。帰ったらオーフェルとも顔を合わせることになるのか・・・・・・。
そのことに余計心がどっと重くなる。
同時に脳裏に浮かぶのは──
「~~っ! 待って待ってってば!」
誰もいないのに、何が待ってなのか。
頭に浮かぶのはヴィクトの顔だった。
これは私がヴィクトに会いたいと心のどこかで思っているからなのだろうか。やたらヴィクトの顔が浮かんで仕方ない。
「~~~~」
顔が熱い。体がぽかぽかする。
これが所謂、恋をしている状態というやつなのだろうか?
ダメなのに、ヴィクトのことを考えてしまう。
冷静に、冷静になるのよ、私。
そもそも、私がヴィクトを好きでもどうしようもないじゃない。
ヴィクトに結婚するかと言われた。
自覚した今、顔から火を吹き出しそうな事実だけれど、ヴィクトはそういう意味で言った訳じゃない。
ヴィクトから私へ親愛はあるだろうけれど、恋愛感情なんてある訳ない。
あの提案だって、オーフェルと結婚したくないと言った私を助けるための解決策の一つだろうし。
想ったところで、どうしようもないことなんだ・・・・・・。
想いは結実しない。この恋は叶うことはない。
そう自分に言い聞かせると、体が無気力になる。
列車が止まる。車掌が王都の駅だと告げた。
のろのろと体を動かし、列車を降りるとその足で家へと向かう。
屋敷に近づく程に足が鉛のように重くなるけれど、それでも歩き続ければ辿り着いてしまう。
「何て、言われるかしら・・・・・・」
玄関の取っ手を掴んで、しばらく考え込む。
それでも、このままでいる訳にもいかないと、ええい、ままよ! と私は帰宅を告げた。
意外なことに、怒られると覚悟していた私を出迎えたのはにっこにこな顔のお母様だった。
やけにご機嫌なその様子に面食らい、私はポカンとする。
──いや、どうして?
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