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 翌日。

「いただきまーす」

 朝食はパンとオムレツとベーコンとサラダだった。パンはふわふわ、オムレツは好みを訊かれ、リクエストした通りのふわトロ甘々。ベーコンはカリカリで香ばしく、サラダの野菜は新鮮でシャッキシャキ。この野菜もご近所さんからのお裾分けのようで、特にトマトが甘くて美味しかった。

 ジ────。

「・・・・・・」



 朝食後は昨日途中までだった空き地の整地。
 倉庫にあったトンボを担いで、ヴィクトと辺境伯様と空き地へ向かった。
 ご近所の人の協力もあり、整地は午前中に終わった。
 休憩中に差し入れに貰ったプリンが美味しかった。

 ジ──────。

「・・・・・・・・・・・・」



 辺境伯邸に戻り、汗をかいたので浴場を借りて体を清める。
 さっぱりした後に侍女が果実水をくれて、これがまたすっきりとしていて美味しい。

 ジ────────。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 子供たちと遊ぶ約束は午後からなので、先に辺境伯邸で早めの昼食を取る。
 辺境伯様からお気遣いいただいて、昼食は私の好きなホットケーキになった。
 領内で作ったというバターを落として、それがじんわりと溶けていく様は見ていて喉がごくりと鳴った。

 ジ──────────。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 後は屋敷を出る時間までのんびり過ごすだけなんだけど──

 ジ────────────。

「何なの一体!?」

「む」

 そう、そうなのだ。
 朝からずーっと、ヴィクトが私の方を見て来るのだ。
 それも用件があるなら言えばいいのに、無言でただじっと見つめてくるだけだから、昨日のこともあって気まずくて堪らない。
 何? 何なの? 昨日のことでまだ何かあるの?
 正直、あの話をまた蒸し返されるのは困る。とにかく困る。けれど、このままずっと無言で見つめられるのも耐え難く、私はこちらからヴィクトに質問することにした。

「・・・・・・別に」

「あんだけ見てきて別にはないでしょ!」

 やっぱヴィクトの様子がおかしい。
 このままも嫌なので、何とか白状させようと詰め寄るとヴィクトはその分距離をとって、首を横に振りながら、

「不確かな情報は混乱の元だから、確定するまでは言いたくない」

「はぁ?」

 何を訳のわからんことを・・・・・・。
 まぁ、ヴィクトは確定していることしか言わないし、しない主義なのは間違いないけど。
 そもそもこっちはお題目がわからないから、話の前提からしてわかってないんだけど。

「じゃあ、答えられる範囲で何で私を見てたのか教えてよ」

「観察していた。以上」

「あっさりしすぎ!」

 答えられる範囲でとは言ったけどさぁ!?
 てゆーか、観察って何? 自由研究? 辺境伯になるための勉強の一環? って、そんな訳あるか!
 思わず心の中でノリツッコミをしていると、ヴィクトが続けていった。

「現状、推察の域を出ないから言いたくない。観察、考察を重ねて実証出来たら言う」

 ・・・・・・要は教えてくれる気はないって訳ね。
 まぁ、見られるくらい、ヴィクトなら嫌じゃないしいいけど・・・・・・。

「あっそう。ならお好きにどーぞー。実証とやらが出来たら何してたか教えなさいよね。そうだ。これから子供と一緒に遊びに行くんだけど、ヴィクトも来る?」

 時計を確認すると、ぼちぼち出なきゃいけない時間が迫っていた。

「いや、本来の滞在日までは自習するって決めてるから行かない」

「わかった。じゃあ、いってきまーす」

「いってらっしゃい」

 結局何だったんだ、あれ・・・・・・?
 特に何も解決しないまま、私は外へと向かった。
 その途中、辺境伯様に会って、何か知っているかもと訊いてみたら、

「俺は君たちがわからない・・・・・・」

 と、疲れた顔で言われてしまった。
 ・・・・・・? 一体何なの?
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