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第一章 紫炎のグリモワール
19.学園長室とお弁当
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部長のお悩み相談室の後、私は当初の目的通りに図書館へ向かい、目当ての参考書を借りて教室に戻った。
ガルランドに捕まったせいで時間を食ったから、戻ったら友達に「サボり? ひまもとうとう悪い子かー」なんてにやけ顔でからかわれてしまった。
これでも模範生のつもりなんだけど。うん、ガルランド許すまじ。
悪い子認定の原因とも言えるガルランドにメラメラ怒りを燃やす。そういえば、部長はあの後ガルランドに追いつけたのかな? というか、授業の写生はよかったんだろうか。部長のことだろうから、残り時間五分でスケッチブックがまっさらでも何とかするだろうけど。ガルランドは──どうでもいいや。
それより、今はレムガさんだ。レムガさんにおばあちゃんのことをちゃんと伝えなきゃ。
悶々としながらも無事、四限目の授業を終える。
お昼休みを告げるチャイムが鳴るのと同時に、私は席を立ち上がった。
「ひまー、さゆがお弁当じゃないんだって。今日は学食行かなーい?」
「ごめんね! 今日はお昼別のところで食べる!」
「あ、部室?」
「そんなとこー」
「わかったー。じゃ、また明日ね」
「はーい」
友達の誘いを断って、私は教室を出た。
向かったのはレムガさんがいるであろう学園長室。
みんなには部室って言っちゃったけど、学園長室に行く上手い理由が思いつかなかったので、そういうことにしておこう。
さて、と。
「・・・・・・しまったな。これ、どうしよ」
私はそっと手元に視線を落とした。
両手で大事に持っているのは、向日葵の種とハムスター柄の黄色い巾着に包まれたお母さん特製のお弁当。
部室で食べると言った手前、毎日お弁当派の私がお弁当を持っていかないのは不自然に思われると思って、つい持ってきてしまった。
とはいえ、どうしよう。
学園長室にお弁当持って訪ねるのも気が引けるし、かといって、教室に戻る訳にもいかない。食べる時間なら放課後に部室で取れるだろうけど・・・・・・。
「あ、そういえば、今日は五限目、体育だっけ? お昼抜きはキツいなぁ」
今日は確か、バスケだったはず。チーム戦だから、空腹で足を引っ張るなんて真似したくないし、着替える時間も必要だし・・・・・・。
レムガさんと話すことになれば、時間がかかるだろう。
ちゃんとおばあちゃんのことを伝えると決めたのはいいけど、そんなトントン拍子に話を済ませられる自信はない。
ここはやっぱり、お弁当を食べて、放課後出直すべきか・・・・・・。
学園長室の前でうんうんと煩悶していると、背後から突然声をかけられた。
「八瀬ひまわり。扉の前で何を唸っている?」
「ひゃあああぁっ!?」
振り返るとそこには学園長が口を真一文字に結んだ学園長が仁王立ちしていた。
思わず大きな声を上げてしまい、ぱっと口を反射で抑えた。
私がおろおろしている間、学園長は泰然自若といった体で私の返答を待っていた。
「その、レムガさんにお話があって、あったんですけど」
「弁当持参でか?」
「お弁当は成り行きと言いますか・・・・・・」
不味い。一対一だと圧が強いよ、学園長。
ヘルプ! ともにぃ、ヘルプミー!
今、この場にいない幼なじみに心中で助けを求めつつ、私はしどろもどろに質問に答えた。
「まぁ、確かに昼時だな。いい、入りなさい」
「へ?」
学園長の腕が私の脇を通り、そのままがちゃりと学園長室の扉を開く。
「し、失礼しま~す」
私はそろそろと入室した。
ガルランドに捕まったせいで時間を食ったから、戻ったら友達に「サボり? ひまもとうとう悪い子かー」なんてにやけ顔でからかわれてしまった。
これでも模範生のつもりなんだけど。うん、ガルランド許すまじ。
悪い子認定の原因とも言えるガルランドにメラメラ怒りを燃やす。そういえば、部長はあの後ガルランドに追いつけたのかな? というか、授業の写生はよかったんだろうか。部長のことだろうから、残り時間五分でスケッチブックがまっさらでも何とかするだろうけど。ガルランドは──どうでもいいや。
それより、今はレムガさんだ。レムガさんにおばあちゃんのことをちゃんと伝えなきゃ。
悶々としながらも無事、四限目の授業を終える。
お昼休みを告げるチャイムが鳴るのと同時に、私は席を立ち上がった。
「ひまー、さゆがお弁当じゃないんだって。今日は学食行かなーい?」
「ごめんね! 今日はお昼別のところで食べる!」
「あ、部室?」
「そんなとこー」
「わかったー。じゃ、また明日ね」
「はーい」
友達の誘いを断って、私は教室を出た。
向かったのはレムガさんがいるであろう学園長室。
みんなには部室って言っちゃったけど、学園長室に行く上手い理由が思いつかなかったので、そういうことにしておこう。
さて、と。
「・・・・・・しまったな。これ、どうしよ」
私はそっと手元に視線を落とした。
両手で大事に持っているのは、向日葵の種とハムスター柄の黄色い巾着に包まれたお母さん特製のお弁当。
部室で食べると言った手前、毎日お弁当派の私がお弁当を持っていかないのは不自然に思われると思って、つい持ってきてしまった。
とはいえ、どうしよう。
学園長室にお弁当持って訪ねるのも気が引けるし、かといって、教室に戻る訳にもいかない。食べる時間なら放課後に部室で取れるだろうけど・・・・・・。
「あ、そういえば、今日は五限目、体育だっけ? お昼抜きはキツいなぁ」
今日は確か、バスケだったはず。チーム戦だから、空腹で足を引っ張るなんて真似したくないし、着替える時間も必要だし・・・・・・。
レムガさんと話すことになれば、時間がかかるだろう。
ちゃんとおばあちゃんのことを伝えると決めたのはいいけど、そんなトントン拍子に話を済ませられる自信はない。
ここはやっぱり、お弁当を食べて、放課後出直すべきか・・・・・・。
学園長室の前でうんうんと煩悶していると、背後から突然声をかけられた。
「八瀬ひまわり。扉の前で何を唸っている?」
「ひゃあああぁっ!?」
振り返るとそこには学園長が口を真一文字に結んだ学園長が仁王立ちしていた。
思わず大きな声を上げてしまい、ぱっと口を反射で抑えた。
私がおろおろしている間、学園長は泰然自若といった体で私の返答を待っていた。
「その、レムガさんにお話があって、あったんですけど」
「弁当持参でか?」
「お弁当は成り行きと言いますか・・・・・・」
不味い。一対一だと圧が強いよ、学園長。
ヘルプ! ともにぃ、ヘルプミー!
今、この場にいない幼なじみに心中で助けを求めつつ、私はしどろもどろに質問に答えた。
「まぁ、確かに昼時だな。いい、入りなさい」
「へ?」
学園長の腕が私の脇を通り、そのままがちゃりと学園長室の扉を開く。
「し、失礼しま~す」
私はそろそろと入室した。
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