グリモワールと文芸部

夢草 蝶

文字の大きさ
上 下
8 / 19
第一章 紫炎のグリモワール

8.レムガの入部?

しおりを挟む
「はい、書いたよ」

 レムガさんはサインをした入部届を部長に手渡した。受け取った部長はご機嫌でそれをともにぃに渡す。

「さぁ、壱ヶ谷先生。ここの顧問欄に印をお願いします」

 部活に入部する際には入部届にサインをし、それを本人が顧問の先生に渡して、顧問印を押して貰い、その後、顧問経由で学園長に印を貰うこと必要がある。
 ここには本人も顧問も学園長もいるので、条件は揃ってはいる。

「いや、判子は職員室のデスクの中だから、今すぐは無理だぞ」

 先生は判子などの仕事に使う貴重品はデスクの鍵付きの引き出しにしまうことになっている。

「レムガは編入手続きが終わってないから、どのみちまだ入部はできない」

 続けて、学園長が言う。
 部長は少し膨れたけれど、やがて入部届を四折りにして制服のブレザーの内ポケットに大事そうに差し込んだ。

「分かりました。じゃあ、レムガ君。この入部届は僕が大事に、それはもう自宅の金庫にしまって厳重に保管しておくから、編入手続きが終わり次第、すぐに提出に行こう!」
「うん」
「おっと! もう六時か! 最終下校時間まで三十分しかないぞ!」

 部長が腕時計を見て言う。ピカピカのシルバーの腕時計は物に執着することが少ない先輩がとても大切にしているものだ。

「あ、部室の水拭きしてない! 私、ちょっと部室に行ってきます」
「待て、八瀬。鍵持ってないだろ。ついでに手伝ってやるから俺も行く」
「ありがと、とも……ありがとうございます。壱ヶ谷先生」

 うっかりともにぃと呼んでしまいそうになったので、言い直す。
 下校時間まで間がないから、慌てて学園長室を飛び出した。
 レムガさんを学園長室に置いてきてしまったけれど、大丈夫かな? というか、レムガさんはどこに住んでいるんだろう?
 色々な疑問が浮かんだけれど、知り合いの学園長が一緒にいるからそこらへんは心配いらないのかな、と思い直した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

モナリザの君

michael
キャラ文芸
みなさんは、レオナルド・ダ・ヴィンチの名作の一つである『モナリザの微笑み』を知っているだろうか? もちろん、知っているだろう。 まさか、知らない人はいないだろう。 まあ、別に知らなくても問題はない。 例え、知らなくても知っているふりをしてくれればいい。 だけど、知っていてくれると作者嬉しい。 それを前提でのあらすじです。 あるところに、モナリザそっくりに生まれてしまった最上理沙(もがみりさ)という少女がいた。 この物語は、その彼女がなんの因果かお嬢様学園の生徒会長を目指す話である。 それだけの話である。 ただキャラが濃いだけである。 なぜこんな話を書いてしまったのか、作者にも不明である。 そんな話でよければ、見て頂けると幸いです。 ついでに感想があるとなお幸いです。

優しいアヤカシを視る●●●の方法

猫宮乾
キャラ文芸
 あやかしに寛容的な土地、新南津市。あやかし学がある高校に通う藍円寺斗望は、生まれつきあやかしが視える。一方、親友の御遼芹架は視えない。そんな二人と、幼馴染で一学年上の瀧澤冥沙の三名がおりなす、あやかし×カフェ×青春のほのぼのした日常のお話です。※1/1より1から3日間隔で一話くらいずつ更新予定です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

佐世保黒猫アンダーグラウンド―人外ジャズ喫茶でバイト始めました―

御結頂戴
キャラ文芸
高校一年生のカズキは、ある日突然現れた“黒い虎のような猫”ハヤキに連れられて 長崎の佐世保にかつて存在した、駅前地下商店街を模倣した異空間 【佐世保地下異界商店街】へと迷い込んでしまった。 ――神・妖怪・人外が交流や買い物を行ない、浮世の肩身の狭さを忘れ楽しむ街。 そんな場所で、カズキは元の世界に戻るために、種族不明の店主が営むジャズ喫茶 (もちろんお客は人外のみ)でバイトをする事になり、様々な騒動に巻き込まれる事に。 かつての時代に囚われた世界で、かつて存在したもの達が生きる。そんな物語。 -------------- 主人公:和祁(カズキ)。高校一年生。なんか人外に好かれる。 相棒 :速来(ハヤキ)。長毛種で白い虎模様の黒猫。人型は浅黒い肌に金髪のイケメン。 店主 :丈牙(ジョウガ)。人外ジャズ喫茶の店主。人当たりが良いが中身は腹黒い。   ※字数少な目で、更新時は一日に数回更新の時もアリ。  1月からは更新のんびりになります。  

まる男の青春

大林和正
キャラ文芸
ほぼ1話完結となってるシリーズモノです どれから読んでも大丈夫です 1973年生まれのまる男は小学校1年の頃から、ある理由でプロも通うボクシングジムで学校以外、ボクシング漬けだった。そして、中学校、友達に誘われて野球部に入る。運動神経は怪物だけど、常識のだいぶずれた少年と少し奥手な仲間たちの物語である

バスケットボール

つむぎ
キャラ文芸
ガタガタバスケットチームを立て直すお話

処理中です...