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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
トップに疲労はつきものだ
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「ああ、そうだ。シャーロット、そのイクスとかいう闇魔法の使い手は問題ないのか?」
「・・・・・・ないよ」
「明らかに問題があるだろう。今の間は? それほど厄介なのか?」
そろりと目を反らしたシャーロットをレヴェルは問い詰める。
「厄介っていうか、規格外? マリスの魔力で作った拘束具外してたし」
「すみません。白の魔力には疎くて──実際のところ、白の魔力とは闇魔法にどれ程有効なのでしょうか」
「そうねぇ。簡単に説明すると、イクスがやったことは水中でマッチで火をつけるようなものね」
「それは、つまり──」
「ええ。不可能ね。でも、イクスはやっけのけた。マリスが魔力が目覚めて一年も経ってない未熟者っていうのを除いても、他の闇魔法の使い手とは違うっぽいわね」
「で? それをお前は御しきれるのか」
「大丈夫! 案はあるから」
「どんな?」
レヴェルの質問にシャーロットは再び黙り込む。
「言いたくないわ」
「は?」
「だあって、言ったらレヴェル怒るもの」
「あぁ!?」
聞き捨てならない台詞に、レヴェルはどすの効いた声を上げた。
口からデマカセではなく、イクスに対する対策は講じているようだが、それはレヴェルを怒らせるものだとシャーロットは言う。その時点でレヴェルの怒りゲージは赤くなっていた。
「おい、待て。何をする気だ」
「ま、何とかなるわよ。ナルク様も全面協力してくれてるって言ってたし」
「兄様を巻き込んだのか!」
兄の名前まで出てきたとなれば、最早黙っていられなくなったレヴェルは立ち上がり、天幻鳥を捕まえようとするが、天幻鳥はひらりと入ってきた窓枠へと逃げた。
「とにかく、報告はしたから。そろそろ意識を本体の方に戻さないとだから、じゃあね~」
そう言い残して、天幻鳥は飛び立った。魔法管理局へ戻ったのだろう。
透き通った翼を広げて悠然と飛ぶ姿を見据えたレヴェルは、傍らのベルクに問い掛けた。
「なぁ、天幻鳥のカラアゲって美味いと思うか?」
「陛下? 喋ってたの聖女様ですよ。天幻鳥悪くない」
「そうか。聖女のカラアゲか」
「カニバ的な趣味ありましたっけ?」
「いや、ないが?」
「・・・・・・お腹空きました?」
「知らん。眠い。眠くて空腹かどうかは分からん」
「最後に食べたのいつですか」
「あー・・・・・・最後に固形物食べたのいつだ?」
こちらが訊ねているのに、聞き返されてしまった。何を口にしたどころか、しばらく固形物すら口にしていない疑惑の出てきたレヴェルはうつらうつらとしている。
「今、人払いしてますし、少し休みますか」
「問題ない。こうすれば──睡魔の堅牢、我は其の鍵を操る者──」
「陛下、眠気覚ましと感覚麻痺魔法はもう止めましょう。いい加減、中毒症状がでますよ」
「うー・・・・・・」
レヴェルは唸りながらも魔法の発動を中止し、ふらふらとした足取りで椅子の背凭れに体を預けた。
眠気覚ましの魔法で無理矢理覚醒状態にし、感覚麻痺の魔法で疲労感を鈍らせる。そんなことを繰り返していたレヴェルの体はいつ異常を起こしても不思議ではない。
こんな無茶が罷り通っているのも、ライゼンベルトの高い魔力が成せることだった。
「ベルク」
「何です?」
「聖女のカラアゲは不味そうだな。胃にもたれそうだ」
「陛下、休め」
もはや疲労が言語野にまで回ってると思われるレヴェルはなかなか意味不明なことを言っている。
そして、不味そうというのが気にくわなかったのかこの後、地獄耳の天幻鳥が舞い戻ってレヴェルの顔に張りついて大暴れして、レヴェルがキレるという光景が十秒後に繰り広げられることとなるのであった。
「・・・・・・ないよ」
「明らかに問題があるだろう。今の間は? それほど厄介なのか?」
そろりと目を反らしたシャーロットをレヴェルは問い詰める。
「厄介っていうか、規格外? マリスの魔力で作った拘束具外してたし」
「すみません。白の魔力には疎くて──実際のところ、白の魔力とは闇魔法にどれ程有効なのでしょうか」
「そうねぇ。簡単に説明すると、イクスがやったことは水中でマッチで火をつけるようなものね」
「それは、つまり──」
「ええ。不可能ね。でも、イクスはやっけのけた。マリスが魔力が目覚めて一年も経ってない未熟者っていうのを除いても、他の闇魔法の使い手とは違うっぽいわね」
「で? それをお前は御しきれるのか」
「大丈夫! 案はあるから」
「どんな?」
レヴェルの質問にシャーロットは再び黙り込む。
「言いたくないわ」
「は?」
「だあって、言ったらレヴェル怒るもの」
「あぁ!?」
聞き捨てならない台詞に、レヴェルはどすの効いた声を上げた。
口からデマカセではなく、イクスに対する対策は講じているようだが、それはレヴェルを怒らせるものだとシャーロットは言う。その時点でレヴェルの怒りゲージは赤くなっていた。
「おい、待て。何をする気だ」
「ま、何とかなるわよ。ナルク様も全面協力してくれてるって言ってたし」
「兄様を巻き込んだのか!」
兄の名前まで出てきたとなれば、最早黙っていられなくなったレヴェルは立ち上がり、天幻鳥を捕まえようとするが、天幻鳥はひらりと入ってきた窓枠へと逃げた。
「とにかく、報告はしたから。そろそろ意識を本体の方に戻さないとだから、じゃあね~」
そう言い残して、天幻鳥は飛び立った。魔法管理局へ戻ったのだろう。
透き通った翼を広げて悠然と飛ぶ姿を見据えたレヴェルは、傍らのベルクに問い掛けた。
「なぁ、天幻鳥のカラアゲって美味いと思うか?」
「陛下? 喋ってたの聖女様ですよ。天幻鳥悪くない」
「そうか。聖女のカラアゲか」
「カニバ的な趣味ありましたっけ?」
「いや、ないが?」
「・・・・・・お腹空きました?」
「知らん。眠い。眠くて空腹かどうかは分からん」
「最後に食べたのいつですか」
「あー・・・・・・最後に固形物食べたのいつだ?」
こちらが訊ねているのに、聞き返されてしまった。何を口にしたどころか、しばらく固形物すら口にしていない疑惑の出てきたレヴェルはうつらうつらとしている。
「今、人払いしてますし、少し休みますか」
「問題ない。こうすれば──睡魔の堅牢、我は其の鍵を操る者──」
「陛下、眠気覚ましと感覚麻痺魔法はもう止めましょう。いい加減、中毒症状がでますよ」
「うー・・・・・・」
レヴェルは唸りながらも魔法の発動を中止し、ふらふらとした足取りで椅子の背凭れに体を預けた。
眠気覚ましの魔法で無理矢理覚醒状態にし、感覚麻痺の魔法で疲労感を鈍らせる。そんなことを繰り返していたレヴェルの体はいつ異常を起こしても不思議ではない。
こんな無茶が罷り通っているのも、ライゼンベルトの高い魔力が成せることだった。
「ベルク」
「何です?」
「聖女のカラアゲは不味そうだな。胃にもたれそうだ」
「陛下、休め」
もはや疲労が言語野にまで回ってると思われるレヴェルはなかなか意味不明なことを言っている。
そして、不味そうというのが気にくわなかったのかこの後、地獄耳の天幻鳥が舞い戻ってレヴェルの顔に張りついて大暴れして、レヴェルがキレるという光景が十秒後に繰り広げられることとなるのであった。
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