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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

大豆の歌

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 疑問がある。

「・・・・・・」
「ミソスープって出汁? が必要だったんですねぇ」
「個人的にはコンブとカツオブシを合わせた混合だしが一番好きです。今回はカツオブシのみですが・・・・・・」

 ・・・・・・何故、私は今、ロイドさんと警邏隊の小隊長さんに挟まれて味噌汁の鍋をかき混ぜているのだろうか?
 あの後、出汁を作らないロイドさんの味噌汁にショックを受けた小隊長さんは滾滾と味噌汁の作り方について語り出し、最終的には味噌汁を作り直すこととなった。
 が、この二人は致命的に相性が悪かったのだ。
 ロイドさんは料理自体は出来るそうだけど、和食はてんでダメという話だった。
 小隊長さんは作り方を丸暗記しているそうで、自分が作ると言い出して、キッチンに立った。そこにロイドさんが手伝いを申し出たのだ。
 が、この二人はキッチン内でぶつかるわ、互いに同じ調味料を取って落としそうになるわと息が全く合わない。
 そこでハラハラしながらその様子を見ていた私が、代わりにやることになった。味噌汁なら、前世的に私の方が上手に出来るだろうし。
 うん。自分で言ったことだね!
 経緯は分かるが、訳がわからない。
 一方でアリスさんはお米を炊き、エリックさんは部品を換え終えた魔法道具の調整を行っている。

「それにしても、ミソスープの作り方を警邏隊の小隊長さんが知っているとは驚きました」
「母方の実家が宮廷料理人の家系なので、その影響からか、幼い頃から料理全般に興味があって。とは言え、私自身は代々警邏隊を務めてきた家系なのですが」
「東区の警邏隊ってことは、ひょっとして、パレンダル家の方ですか?」
「はい。私はコク・パレンダルと申します。よく分かりましたね」
「ええ。兄が以前お世話になったので」
「兄? ──あの、髪の色合いが王家の色に似ていると思っていたのですが」
「あ、私はミリア・メイアーツって言います」

 相手が名乗ったのなら、こっちも名乗らなきゃね。警邏隊の人なら平気だろうし。

「メイアーツ・・・・・・!?」
「メイアーツって、あの王兄殿下の?」
「あの女傑当主の!」

 あー、まぁ驚くよねー。うち、両親のネームバリュー半端ないからなぁ。

「って、うお! 何!?」

 小隊長さん改め、コクさんは血相を変えて私の肩を掴んだ。え? 何?
 コクさんは怖い顔をして言った。

「公爵令嬢が何故、こんなところでミソスープを作ってるんですか!」
「え? お二人の調理を見てて不安になったから・・・・・・? あ、そろそろいいんじゃないですか? ワカメとオトウフのミソスープ」

 お豆腐の味噌汁もいいよね。熱い豆腐が口の中でほろほろ崩れて。私的、お気に入り味噌汁の具ランキングでは油揚げの次くらいに好き。そう言えば、どっちも原料は大豆だなぁ。流石、畑のお肉。豆は偉大だ。

 マメマメおマメ♪ だ、い、ず~♪ お味噌にお醤油、調味料~♪ 飲むなら豆乳♪ しゃきしゃきもやし♪ ネバネバ納豆♪ 最後まで美味しいお、か、ら~♪ デザートにーはきなこ~♪ 応用力の権化♪ 偉大な食文化~♪

「そうじゃな~い!」
「え? もう少し煮ますか?」
「そうじゃなくて!」

 心の中で自作大豆の歌を歌っていたら、コクさんの剣幕がもっと凄いことになった。

「マメマメおマメ♪ だ、い、ず~♪ 面白い歌ですね」
「・・・・・・歌ってました?」
「ばっちり! オミソにオショーユ、調味料~♪」

 気に入ったのか、ロイドさんは大豆の歌を楽しそうに口ずさんでいる。

「や、め、て~!」

 私は持ってたお玉から手を話し、耳を塞いでしゃがみこんだ。
 自作の適当な歌。しかもかなりノリノリテンションなのを聴かれてただけでも恥ずかしいのに、歌わないでー!!! 
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