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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

言葉

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 ラフィンの獣・・・・・・ラフィンの獣・・・・・・あれ? これリアルだと無理ゲーじゃない?

 ラフィンお家騒動という新たな問題が浮上しつつも、今はパーティー準備だとそれぞれの作業に戻った後も、私はラフィン家について考えていた。
 そもそも、あれってまずはどうラフィン家に関わるか──

「ミリア、さっきはどうしたんだ? 急にリンスと一緒に奥に行って」
「あ、ギーシャ。うん、ちょっとリンス嬢たちとお喋りしてた。隣いい?」
「ああ」

 私はスケジュールを見直そうと、ギーシャの隣に座り、パーティーの予定について纏めた手帳を開く。
 えーと、最初に挨拶をして、謝罪、それからあれと──。

「ミリア」
「ん? なぁに?」

 ちょいちょいと肩をつつかれたので、ギーシャを見ると、ギーシャは私に数枚の原稿用紙を差し出してきた。

「これって──」
「謝罪の言葉を考えた。ただ、不適切な言葉があるかもしれないからミリアにも目を通して欲しい」
「うん」

 私は原稿用紙を受け取ると、それに目を通す。

『本日は──今回の件で周囲に──反省して──今後──』

 最後まで読み終え、私は簡潔な感想を述べた。

「定型文?」
「ダメか?」

 ギーシャがしゅんとする。

「いや、ダメってわけじゃないけど──むしろ、お手本っていうか、例文みたいな謝罪文だけど──ちょっと謝罪文過ぎるっていうか」

 何というか、うん、あれだ。ネットで調べた文をそのままコピペしちゃったって感じなんだよね、これ。
 いや、ギーシャは真面目に書いたんだろうけど、真面目故に、型にはまり過ぎたっていうか──これ、下手したら反省してないって思われかねないぞ?
 定型すぎて逆に誤解を招きかねない文章を見て、内心頭を抱えた。

「ギーシャの言葉って感じがしないって言うか──いや、ギーシャの性格的にはこれが違和感ないけど、それってギーシャの内面をよく知らない人にはどう伝わるか分かんないし」
「俺の言葉?」

 ギーシャは同級生の間でも浮いた存在だ。まぁ、王族だから特別視されるのは当然っちゃ当然だけど、人と一定の距離を置きたがるギーシャは周囲に遠巻きにされがちでその内面を知る人は少ないだろう。中には、初等部からギーシャを知ってても謎っていう人がいるくらいだし。

「よく分からないが、この内容がよくないのはわかった。書き直す」

 ギーシャが新しい原稿用紙を広げ、ペンを手に取る。

「一旦、思ったことを箇条書きにしてから纏めるのもいいかもよ」
「ああ」

 ギーシャは頷いて、ペンを走らせる。

「こういうのは、兄上が得意なんだろうな」
「兄上? テルファ様?」
「そうだ」

 よく考えなくてもテルファ様だな。第二王子はそういうの全くしないって言うか、そもそも人前に出ることがほとんどないし。
 テルファ様やギーシャとは全く別方向の才能を持つ第二王子を頭に浮かべ、納得する。

「兄上の演説などを参考に書いてみる」
「え!?」
「何か問題あるか?」
「あー、いや、とりあえず書いてみて」

 まずは書いてみなくちゃと思い、ギーシャを促す。
 個人的きテルファ様をお手本にするのはオススメしないんだけど・・・・・・。だって、あの人の言葉って完全にそれっぽくしてるだけだもの。
 間違いなく、偽りなく、でも本心でもない。しかも決して綻びを見せないのだ。
 アルクお兄様に「テルファの言葉は甘ったるいクリームを塗りたくった鉛みたいなもんだから気をつけろ」なんて忠告を受けるくらいには言葉を飾り立てるのが上手い方だ。
 でも、テルファ様のやり方はギーシャに合わないと思うんだけど。
 才能面では似てる二人だけど、性質は全く違うからなぁ。

「ミリア」
「ん」

 ギーシャとテルファ様を脳内で並べつつ、私はギーシャから新しい原稿用紙を受け取った。
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