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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
氷の世界
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深呼吸をして息を整える。
これは一撃必殺のアイテムだ。無駄撃ちは出来ない。他にも防犯アイテムは持たされてるけど、闇魔法相手には厳しい。白の魔力以外決定打にならないってとこが厄介だ。
「よく分かんないけど、魔力貰うよ。ミッちゃん! ルイアン、援護よろしく!」
「仕方ないな」
魔力で黒い刀を作り出したイクスが迫ってくる。イクスの背後からは援護を頼まれたルイアンさんの呪術具が飛んでくる。さっき、イクスに見せていたブレードだ。昨日みたいな身縛りの呪術具だったら困る。
「光壁よ、万邪を払え!」
マリス嬢が結界を張ると、ブレードは弾かれ、重力に従って床に落ちる。しかし、イクスの作った刀は僅かに結界にヒビを入れていた。
「ちっ!」
「かった! でも、もう少し頑張れば破れそう」
押されているのか、マリス嬢の額に僅かに汗が浮かんでいる。
押すイクス。ルイアンさんは二撃目を準備しながら、結界が破れるのを待っている。
マリス嬢がちらりと私に目配せをする。何か、私に伝えたいことがあるのかと思い、私はマリス嬢を支えるフリをして、マリス嬢に耳を近づけた。
「マリス嬢」
「目を瞑って、準備してて。合図するまで、開けちゃダメよ」
私は言われた通りに目を瞑った。しっかりと魔法道具のスイッチに指をかける。
「光あれ!」
──ぎゅっと閉ざした瞼の向こうで、何かが閃いた。
「ぎゃ!」
「っ!」
「むぅ!」
「目がぁ!」
「今よ!」
四者四様の悶絶する声が聞こえたが、私は気にせずマリス嬢の前に踏み出し、魔法道具をイクスたちに向け、スイッチを押した。
「凍って────!」
魔法道具──懐中電灯でいうところのライト部分から水色の魔法陣が広がり、僅か一瞬で室内は霧に覆われる。
「うっわ! 何これ!」
「これは氷・・・・・・? いや、にしてはそこまで冷たくない」
「な、ななな、何ですか、これは!? 子爵!」
「落ち着け、氷を模した魔力ですか」
「はい」
霧が晴れると、室内は私の背後以外──つまり魔法道具を向けた空間は凍りついていた。イクスたちもお腹辺りから足までがっちり氷漬けになっていて、身動きは出来ない。
「こんなの、壊して──って、壊れないじゃん!」
「ぜー、はー・・・・・・無駄。その様子なら、イクスの魔力でもしばらくは持つよ」
「って、顔色悪いわよ。アンタ、大丈夫?」
「あんまり・・・・・・」
魔力、全力で使ったからね。成功して良かった。失敗して動けなくなったら大変だし、何より、一度発動してしまうと成功しようが、失敗しようが壊れちゃうからね、これ。
手元の懐中電灯を見る。魔法発動の衝撃でヒビ割れ、ところどころ崩れてボロボロになっている。
「素晴らしい! 呪文を使わずにこれを・・・・・・どんなカラクリが──くっ! さっきの光で目がしぱしぱする・・・・・_ああ、見えてきた。大地の言葉を刻み込んでいるのですね」
壊れてむき出しになった魔法道具の内部を見て、テロール子爵が瞳を輝かせる。
内部には、不思議な模様がいくつも刻まれている。これは大地の言葉と呼ばれるものであり、呪文の代わりになる文字だ。大地の言葉を使えば、呪文を飛ばして魔法を発動させることが出来る。ただ、大地の言葉は組み合わせを間違えると魔法が発動しなかったり、違う魔法になってしまう可能性があるから、扱いは要注意だ。現代でも解析は難航しているようだし。
「いやー、マリス嬢が来てくれてよかったです。氷漬けにするこっちの手だと、イクスに破られた場合一人じゃ完全に詰んでましたからね。もうひとつの手は避けたかったですし」
「私が来なかったらどうしてたのよ?」
「吹雪状の魔力で包んで、そのまま壁を壊して外に放るつもりでした。被害が甚大すぎますし、大怪我させてしまう恐れがあるので、やらずに済んでほっとしました」
私一人でイクスたちを氷漬けにしても、イクスには破られるリスクがあったし、反動でへにょへにょ状態になったらお手上げだから押し出し作戦の方を使おうと思ったけど、マリス嬢が来てくれてよかった。
「随分おっかないことを──てゆーか、出来るたの?」
「出来ますとも。何せ、魔力三倍ですからね」
私は指を三本立てて言った。
これは一撃必殺のアイテムだ。無駄撃ちは出来ない。他にも防犯アイテムは持たされてるけど、闇魔法相手には厳しい。白の魔力以外決定打にならないってとこが厄介だ。
「よく分かんないけど、魔力貰うよ。ミッちゃん! ルイアン、援護よろしく!」
「仕方ないな」
魔力で黒い刀を作り出したイクスが迫ってくる。イクスの背後からは援護を頼まれたルイアンさんの呪術具が飛んでくる。さっき、イクスに見せていたブレードだ。昨日みたいな身縛りの呪術具だったら困る。
「光壁よ、万邪を払え!」
マリス嬢が結界を張ると、ブレードは弾かれ、重力に従って床に落ちる。しかし、イクスの作った刀は僅かに結界にヒビを入れていた。
「ちっ!」
「かった! でも、もう少し頑張れば破れそう」
押されているのか、マリス嬢の額に僅かに汗が浮かんでいる。
押すイクス。ルイアンさんは二撃目を準備しながら、結界が破れるのを待っている。
マリス嬢がちらりと私に目配せをする。何か、私に伝えたいことがあるのかと思い、私はマリス嬢を支えるフリをして、マリス嬢に耳を近づけた。
「マリス嬢」
「目を瞑って、準備してて。合図するまで、開けちゃダメよ」
私は言われた通りに目を瞑った。しっかりと魔法道具のスイッチに指をかける。
「光あれ!」
──ぎゅっと閉ざした瞼の向こうで、何かが閃いた。
「ぎゃ!」
「っ!」
「むぅ!」
「目がぁ!」
「今よ!」
四者四様の悶絶する声が聞こえたが、私は気にせずマリス嬢の前に踏み出し、魔法道具をイクスたちに向け、スイッチを押した。
「凍って────!」
魔法道具──懐中電灯でいうところのライト部分から水色の魔法陣が広がり、僅か一瞬で室内は霧に覆われる。
「うっわ! 何これ!」
「これは氷・・・・・・? いや、にしてはそこまで冷たくない」
「な、ななな、何ですか、これは!? 子爵!」
「落ち着け、氷を模した魔力ですか」
「はい」
霧が晴れると、室内は私の背後以外──つまり魔法道具を向けた空間は凍りついていた。イクスたちもお腹辺りから足までがっちり氷漬けになっていて、身動きは出来ない。
「こんなの、壊して──って、壊れないじゃん!」
「ぜー、はー・・・・・・無駄。その様子なら、イクスの魔力でもしばらくは持つよ」
「って、顔色悪いわよ。アンタ、大丈夫?」
「あんまり・・・・・・」
魔力、全力で使ったからね。成功して良かった。失敗して動けなくなったら大変だし、何より、一度発動してしまうと成功しようが、失敗しようが壊れちゃうからね、これ。
手元の懐中電灯を見る。魔法発動の衝撃でヒビ割れ、ところどころ崩れてボロボロになっている。
「素晴らしい! 呪文を使わずにこれを・・・・・・どんなカラクリが──くっ! さっきの光で目がしぱしぱする・・・・・_ああ、見えてきた。大地の言葉を刻み込んでいるのですね」
壊れてむき出しになった魔法道具の内部を見て、テロール子爵が瞳を輝かせる。
内部には、不思議な模様がいくつも刻まれている。これは大地の言葉と呼ばれるものであり、呪文の代わりになる文字だ。大地の言葉を使えば、呪文を飛ばして魔法を発動させることが出来る。ただ、大地の言葉は組み合わせを間違えると魔法が発動しなかったり、違う魔法になってしまう可能性があるから、扱いは要注意だ。現代でも解析は難航しているようだし。
「いやー、マリス嬢が来てくれてよかったです。氷漬けにするこっちの手だと、イクスに破られた場合一人じゃ完全に詰んでましたからね。もうひとつの手は避けたかったですし」
「私が来なかったらどうしてたのよ?」
「吹雪状の魔力で包んで、そのまま壁を壊して外に放るつもりでした。被害が甚大すぎますし、大怪我させてしまう恐れがあるので、やらずに済んでほっとしました」
私一人でイクスたちを氷漬けにしても、イクスには破られるリスクがあったし、反動でへにょへにょ状態になったらお手上げだから押し出し作戦の方を使おうと思ったけど、マリス嬢が来てくれてよかった。
「随分おっかないことを──てゆーか、出来るたの?」
「出来ますとも。何せ、魔力三倍ですからね」
私は指を三本立てて言った。
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