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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

伯父と甥

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「紅茶を煎れましたよ~。今日はお父様の好きなアールグレイです」
「ありがとう」
「はい、ギーシャも」
「ん」

 私は三人分のティーカップの乗ったトレイを片手に、もう片方の手で紅茶をお父様とギーシャに配った。最後に自分の元にカップを置き、トレイを片付ける。
 ギーシャはこの間みたいに角砂糖を紅茶に入れていた。私とお父様も一つずつ砂糖を入れ、黙って啜る。
 こくこくとカップの半分くらいまで飲むと、お父様が口を開いた。

「久しぶりだねぇ、ギーシャ。二ヶ月ぶりくらいかな?」
「はい。ご無沙汰しておりました。お体の具合は如何ですか? 叔父上」
「快調、と言いたいところだけど、まずまずかな」

 にこにこ微笑んで対応するお父様に、ギーシャの表情も心なしか柔らかくなっているような気がする。
 当たり前だけど、私がギーシャを避けてた間もお父様とギーシャには交流があったようだ。昔から、お父様は自分の子供だけでなく、甥や姪である王子王女も可愛がってたから。

「そういえば、仲直りしたんだねぇ」
「喧嘩してた訳じゃないですけどね」

 お父様が私とギーシャを見て目を細める。そういえば、私とギーシャが疎遠になった理由は私自身しか知らないから、お父様やお兄様たちにも心配かけたなぁ。でも、理由は話せないし。

「よかったね」
「はい」

 お父様の言葉に私より先にギーシャが返事をした。それが何だか嬉しく、少しだけ胸が痛んだ。

「ミリアも」
「・・・・・・はい」

 何だか見透かされてるような気がして、照れ臭くなり、残りの紅茶を一気に煽った。

「ところで、ギーシャはお父様に何の用だったの? やっぱり、あの闇魔法の件について?」

「いや、猫の爪についてだ」
「え?」

 意外な単語にびっくりした。てっきり、闇魔法の襲撃者についての話かと思ったけど、猫の爪について? そういえば、猫の爪にいた時、少しだけロイドさんと変な空気になってたなぁ。
 ぼんやり昼の出来事を思い出しながら、私は黙って二人の話に耳を傾けた。

「ミリアたちが魔法道具を借りに行った開店したてのお店だね。確か、銀髪の青年が営んでるっていう」
「はい。なんだか少し気になって」

 どうやら、ギーシャは猫の爪に何か疑問を持っているらしい。

「彼は東に行ったことがないと言っていました。俺の考えすぎかもしれませんが──」
「王都で店を開いてるってことは、身元ははっきりしているだろうから、こちらから何かすることは出来ないね。ギーシャはあちらの血を引いているから、少し神経質になっているのかも。とりあえずです僕の方でも調べて見るよ」
「ありがとうございます」

 ギーシャがお父様に頭を下げる。うん、全く話が見えん!

「何の話?」

 私は素直に訊いてみた。

「いや、俺の杞憂ならそれでいいんだ」

 ギーシャからははっきりとした答えは得られなかった。
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