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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

設営

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「おー!」

 私は目の前の光景に思わず歓声をあげた。
 ギーシャやギルハード様、マリス嬢もそれぞれ淡白だが、驚愕の色を顔に浮かべている。
 というのも、予定以上の速さで会場の準備が進んでいたからだ。
 今、私たちがいるのはシーエンス家の大広間。
 お花屋さんでのお手伝いを追え、私たち一行はマリス嬢を加え、目的地に到着した。
 ここはパーティーを開く予定の場所だ。ラウルに頼んで破格の値で貸して貰った。
 うん。数回来たぐらいで記憶に自信がなかったけど問題なかった。流石にフレイズ学園のパーティーホールほどではないが、広さは充分にあるし、この大広間は十年前に増築されたものだから、まだ新しくて綺麗だ。
 シャンデリアのぶら下がった天井の下、シーエンス家の使用人さんたちがテーブルやら雛壇やらをわっせわっせと運んでいる。会場だけでなく、会場設営に関してのみ、使用人さんに協力させるとラウルが言ってくれた時は助かった。本人は王子や公爵令嬢に恩を売っておくいい機会だ~とか言ってたけど、そこに善意が含まれていることも知っている。もう一度お礼を言っとかなきゃ。いや、ここは菓子折りとかもつけるべき? ここら辺ケーキ屋さんとかあるかな? ラウルの好きなマカロンでも買ってきた方がいいかも。或いは唐揚げ──

「ミリア、唐揚げが食べたいのか?」
「え!? 口に出てた!?」

 ギーシャにこくんと頷かれる。マジか。気を付けよう。

「ここの人たち、力持ちばかりかと思ったけど、身体強化の魔法を使ってるからあんな軽々と重いものを運べるんですね」
「そのようですね。重力魔法の方が早いでしょうが、こちらは危険性がないですから」

 マリス嬢とギルハード様が使用人さんたちを見てうんうん頷いている。てゆーか、二人とも魔法視つかってないのによく分かるなぁ。身体強化系は基本、魔法光出ないし。これは茨の魔王と白の魔力持ちのスキルかな?
 私も二人の話を聞いてなんとなく魔法視を発動してみた。あ、腕だけじゃなくて足も強化してるんだ。
 なーんて、魔法視で観察していたから、私は次に思いっきり吹き出すことになった。

「ギーシャ王子方、いらしてたんですね」

 背後から声をかけられる。この声はリンス嬢だ。
 設営は順調そうだし、進行状況の確認を軽くしたら、警備についての話を──ギルハード様もいるし、そっちも早く片付きそう。
 そう軽く今後の展開を考えながら振り向くと、

「リンス嬢──ぶふおっ!」
「おお・・・・・・」
「はぁ?」
「? ・・・・・・あ」

 吹き出す私。静かに驚嘆するギルハード様。意味不明と言いたそうなマリス嬢。そして、私たちの反応に疑問を抱き、魔法視を発動して納得したような声をあげたギーシャ。

「どうかされましたか?」

 私たちの反応の意味がわかってなさそうなリンス嬢は目をぱちくりさせている。
 淑女然とした涼しい顔のリンス嬢はその手に三つもの・・・・・・・・大きな円形のテーブルを・・・・・・・・・・・重ねて持っていた・・・・・・・・。しかも、魔法視を使っていたからすぐに分かり、私は戦いた。

 ・・・・・・リンス嬢、魔法を使っていない・・・・・・・・・
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