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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

in 花屋

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「マリス嬢」
「ミリア嬢にギルハード様まで・・・・・・どうしてここに」
「卒業パーティーに使う魔法道具を借りに魔法道具店によって、少しここらの店を見て回っていた。マリスこそ、どうしてここに」
「えーっと・・・・・・」

 マリス嬢は何やら恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそわそわと瞳孔が忙しなく動いている。

「おや、あんたらマリスの知り合いなのかい?」
「あ、はい。同じ学校で」
「フレイズ学園の? どうりで立派な身なりをしているわけだ」
「へ?」

 私は思わず自分の格好を見た。一応浮かない程度の服装を心掛けているんだけど。ギーシャとギルハード様も出掛ける際に着替えたし。

「いい布使ってるからねぇ。見れば分かるよ。時々お貴族様はお忍びでいらっしゃるけど、もうバレバレなのを気づかないフリするのが大変さぁ!」

 おばさんは陽気にけらけらと笑っている。
 うん。うちの国は平和だなぁ!
 でも、次に町に行く時はもっと気をつけよう。
 レイセン王国は魔法犯罪に厳しく、日夜、魔法を使った捜査は進化している。そのため、普通の犯罪なんて即座に犯人は捕まってしまうから、レイセン王国は大陸の中でも犯罪率が低く、逮捕率は高い。
 国によっては王侯貴族と平民の軋轢が生じてる所もあるから、それに比べたらレイセン王国の貴族と平民の中は良好だろう。特に、お花見シーズンとか、身分差気にせず無礼講ではしゃいだりしてるし。

「そうなんですか。でも、どうしてマリス嬢が中部に?」
「別に不思議じゃないでしょ。地元なんだから」
「地元? ああ、そういえば東区中部の喫茶店の一人娘って設定でしたね」
「設定? ミリア、マリスの実家を知っていたのか?」
「えっ! ああ、うん。まぁ」

 ギーシャに言われて、思わず言い淀む。危ない危ない。転生者相手だと口を滑らせやすいや。
『祝愛のマナ』で主人公の実家は東区の喫茶店とされていたから、そこら辺はゲーム通りなのだろう。

「地元なのは分かりましたけど、何故花屋に? 見たところ、お手伝いをしているみたいですが」
「ああ、パーティー用の花をここで用立ててもらおうと思ったのよ。マダムのところは見栄えするもの多いし、センスもいいから。それに質に比べて安いもの」
「あ、ほんとだ」

 屈んで近くにあった花の値札をみると、相場より安い。うーん。ここら辺は質のいい店が多いなぁ。
 王都の店だって値段以上のものがたくさんあるけど、貴族の客層を予想してるからやっぱ高い。

「そうそう。そのモモもその子が取り置きしてるんだよ。店を手伝ってくれるっていうし、出血大サービス。特別価格さ」
「わぁ、ありがとうございます。マリス嬢はそれでお手伝いしてたんですね」
「正確にはこの春期休暇と夏期休暇に手伝うって条件。今日はさっきまで混んでたから人手足りないだろうしって手伝ってたの。もう落ち着いたからさっき来た雑貨の在庫を裏倉庫にしまったら仕事に戻るわ」

 マリス嬢はそう言って持っていた小箱を棚の脇に置いた。

「マリス、棚の補充はこっちでやっておくから、後は在庫を運ぶの頼むよ。結構な量だけど平気かい?」
「繁盛期だからしょうがないんでしょうけど、随分発注したわね。まぁ、一人でも平気でしょ」
「あの、よかったら手伝いましょうか?」
「え?」
「って、ギーシャが言ってます」
「ミリア」

 ギーシャが働いているマリス嬢を見て少しそわっとしたから言ってみた。肩入れするわけじゃないけど、男手があった方が良さそうだし、時間短縮も出来るだろう。

「いや、ギーシャ王子に手伝わせるわけには・・・・・・」
「役に立てるなら俺は構わない」
「それに、私たちこれからシーエンス家に向かうんです。マリス嬢も会場を見ておいた方がいいでしょうから、早めに着くためにもお手伝いさせてください。店主さんも構いませんか?」
「そりゃあ、手伝ってくれるなら大助かりだよ!」
「・・・・・・そういうことなら」

 エプロンの裾を揉むように弄っていたマリス嬢は快くとはいかないまでも、ぎこちなく申し出を受け入れた。
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