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第十三話 何故か感じた親近感
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「マルクは学内での僕の護衛もしてくれてるんだ。だから、厳つい大人たちを後ろに学生生活を送らずに済んで助かってるよ」
「へー、優秀な方なんですね!」
「いえ、そんな! 光栄です!」
校内とはいえ、王族だもんねぇ。
このマルク先輩という方、同じ学生の方が目立たないという理由もあるんだろうけれど、学生の時分から王子殿下の護衛を任されるなんて、よっぽど優秀なのね。
コンラッド殿下に褒められて、ヴァルト先輩も嬉しそうだ。
あれ? けど──
「ヴァルト先輩、後からいらっしゃいましたよね? コンラッド殿下の護衛なのに、一緒にいなくてよろしかったんですか?」
「う゛!」
ヴァルト先輩が図星を突かれたように固まる。
私が疑問に首を傾げていると、コンラッド殿下が説明してくれた。
「うん。マルクは確かに私の護衛なんだけれどね、とても人が良くて、困っている人を放っとけない性分でね。今もさっき擦れ違った生徒の荷物を半分持って運んであげてたんだよ」
「お待ち頂きありがとうございます。コンラッド殿下!」
「ううん。本当は私も手伝った方が楽だっただろうけどね、私が申し出ると皆、恐縮してしまうから」
「そのお気持ちだけで十分です!」
それはそう。王子殿下に荷物運びを手伝わせたなんて、家族揃って卒倒ものだろう。
学園内では生徒は皆、平等なんて言ってるけれど、それはあくまで最低限のルールに関してであって、やっぱり王族は聖域なところがある。
「ところで、こちらの女子生徒は──って、確かにレイズ殿下の」
「はい。元婚約者です」
私は元を強調した。これ、大事。
どうやら、ヴァルト先輩は私のことを知ってたみたい。まぁ、これでも公爵令嬢だし、王子の婚約者だったし、名前だけは広く知られてんのよね。
「エルシカ・ガルルファングと申します。以後、お見知りおきを」
私は名前と社交辞令を述べてから、ヴァルト先輩へ会釈した。ヴァルト先輩も慌てて会釈を返してくれる。
「こちらこそ・・・・・・えーっと、どういう風に呼べばいいか──ですか?」
「普通に後輩として扱って下さって問題ありませんよ」
向こうは先輩。こっちは王子の元婚約者。今の私の立場が微妙だから、どういう接し方をしたらいいか迷っていたようなので、私は普通でいいと伝えた。
「そうか──わかった。じゃあ、よろしく。ガルルファング──でいいか?」
「はい。よろしくお願い致します。ヴァルト先輩」
あら? 姓で呼び捨てにされるなんて、何か新鮮。
「先輩・・・・・・!」
ヴァルト先輩、なんでそんなじーんっと感動してるの?
「マルクは一年の平均よりも小柄だから、なかなか先輩だと思われないから嬉しいみたいだね」
なるほど。私も最初は後輩かな? って思ったしなぁ。
「そういえば、マルク」
「はい?」
「荷物運びだけにしては、やけに遅かったね。何かあったのか?」
コンラッド殿下の問いに、ヴァルト先輩はギクリとなって、すぐに白状した。
「申し訳ありません! 荷物運びはすぐに終わったのですが、 ここへ来る道中、怪我した生徒を保健室へ運んだり、喧嘩をしていた生徒たちの仲裁に入って思ったより遅くなりました」
「相変わらずだねぇ。いいよ、そんなに気にしないで」
「そんなに厄介ごとに出くわすなんて、ヴァルト先輩は不幸体質なんですか?」
「そんなことはないと思うぞ!」
「目の前の困った人や諍いを放っておけないんだよね」
「そんなの見なかったことにすればいいのに」
今の話なら、怪我人以外は私だったら絶対に通りすぎている。不幸体質──というより、お人好しっぽいな。
「俺の目の前で困ってて、俺にも何か出来るかもしれないのに、素通りするなんて出来るわけないだろう!」
ほら、やっぱりお人好しだ。
なんか親近感湧いちゃうなぁ。私とは似ても似つかないのに、なんでだろ? あ、そっか!
「ヴァルト先輩って、私の弟に似てますね。人生棒に振ってそうなところがそっくり!」
「それ、褒めてんの!? というか、お前の弟どういう人生歩んでんの!?」
ツッコミきキレがありますねぇ。そういうところは似てないや。
「へー、優秀な方なんですね!」
「いえ、そんな! 光栄です!」
校内とはいえ、王族だもんねぇ。
このマルク先輩という方、同じ学生の方が目立たないという理由もあるんだろうけれど、学生の時分から王子殿下の護衛を任されるなんて、よっぽど優秀なのね。
コンラッド殿下に褒められて、ヴァルト先輩も嬉しそうだ。
あれ? けど──
「ヴァルト先輩、後からいらっしゃいましたよね? コンラッド殿下の護衛なのに、一緒にいなくてよろしかったんですか?」
「う゛!」
ヴァルト先輩が図星を突かれたように固まる。
私が疑問に首を傾げていると、コンラッド殿下が説明してくれた。
「うん。マルクは確かに私の護衛なんだけれどね、とても人が良くて、困っている人を放っとけない性分でね。今もさっき擦れ違った生徒の荷物を半分持って運んであげてたんだよ」
「お待ち頂きありがとうございます。コンラッド殿下!」
「ううん。本当は私も手伝った方が楽だっただろうけどね、私が申し出ると皆、恐縮してしまうから」
「そのお気持ちだけで十分です!」
それはそう。王子殿下に荷物運びを手伝わせたなんて、家族揃って卒倒ものだろう。
学園内では生徒は皆、平等なんて言ってるけれど、それはあくまで最低限のルールに関してであって、やっぱり王族は聖域なところがある。
「ところで、こちらの女子生徒は──って、確かにレイズ殿下の」
「はい。元婚約者です」
私は元を強調した。これ、大事。
どうやら、ヴァルト先輩は私のことを知ってたみたい。まぁ、これでも公爵令嬢だし、王子の婚約者だったし、名前だけは広く知られてんのよね。
「エルシカ・ガルルファングと申します。以後、お見知りおきを」
私は名前と社交辞令を述べてから、ヴァルト先輩へ会釈した。ヴァルト先輩も慌てて会釈を返してくれる。
「こちらこそ・・・・・・えーっと、どういう風に呼べばいいか──ですか?」
「普通に後輩として扱って下さって問題ありませんよ」
向こうは先輩。こっちは王子の元婚約者。今の私の立場が微妙だから、どういう接し方をしたらいいか迷っていたようなので、私は普通でいいと伝えた。
「そうか──わかった。じゃあ、よろしく。ガルルファング──でいいか?」
「はい。よろしくお願い致します。ヴァルト先輩」
あら? 姓で呼び捨てにされるなんて、何か新鮮。
「先輩・・・・・・!」
ヴァルト先輩、なんでそんなじーんっと感動してるの?
「マルクは一年の平均よりも小柄だから、なかなか先輩だと思われないから嬉しいみたいだね」
なるほど。私も最初は後輩かな? って思ったしなぁ。
「そういえば、マルク」
「はい?」
「荷物運びだけにしては、やけに遅かったね。何かあったのか?」
コンラッド殿下の問いに、ヴァルト先輩はギクリとなって、すぐに白状した。
「申し訳ありません! 荷物運びはすぐに終わったのですが、 ここへ来る道中、怪我した生徒を保健室へ運んだり、喧嘩をしていた生徒たちの仲裁に入って思ったより遅くなりました」
「相変わらずだねぇ。いいよ、そんなに気にしないで」
「そんなに厄介ごとに出くわすなんて、ヴァルト先輩は不幸体質なんですか?」
「そんなことはないと思うぞ!」
「目の前の困った人や諍いを放っておけないんだよね」
「そんなの見なかったことにすればいいのに」
今の話なら、怪我人以外は私だったら絶対に通りすぎている。不幸体質──というより、お人好しっぽいな。
「俺の目の前で困ってて、俺にも何か出来るかもしれないのに、素通りするなんて出来るわけないだろう!」
ほら、やっぱりお人好しだ。
なんか親近感湧いちゃうなぁ。私とは似ても似つかないのに、なんでだろ? あ、そっか!
「ヴァルト先輩って、私の弟に似てますね。人生棒に振ってそうなところがそっくり!」
「それ、褒めてんの!? というか、お前の弟どういう人生歩んでんの!?」
ツッコミきキレがありますねぇ。そういうところは似てないや。
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