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第十話 あの子の被害者の会

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「ここの園芸庭のミント、好きに持ってっていいんですよ~。あ、これは生食出来る種類なので、よろしかったら、いかがです?」

「い、いえ。遠慮しておきますわ」

 ミントを差し出すが、断られてしまった。
 まぁ、香りはいいけれど、生だからね~。味はお察し。

「ほれで、何の用でふか?」

 私はまだ口の匂いが気になるので、ミントを噛みながら見知らぬ令嬢たちに用件を訊ねる。
 なのに、彼女たちときたら、自分たちから声をかけてきたっていうのに、何やらひそひそと話し合ってて、一向に本題を出して来ない。
 う~ん、あの私を見る目──あの「こいつ本当に公爵令嬢か?」と疑うような目だなぁ。
 まぁ、もうそんなの慣れっこだけど。そもそも自分でも令嬢らしくない自覚あるしねぇ。
 私がもぐもぐやってると、この集団の代表格っぽい強そうな縦ロールの令嬢が前に出てきた。

「エルシカ・ガルルファング様」

「はい?」

「我々はあのにっくき、ミルミード・シャルニィに婚約者を誑かされた被害者の会です」

「へ、へ~」

 被害者の会って、そんなのが結成されるレベルで手広くやってるのか、あの子ウサギ美少女。
 あと、フルネーム、ミルミード・シャルニィって言うんだね。初めて知ったわ。
 で? 子ウサギ美少女の被害者の会って時点でヤな予感しなしないけど、私に何の用で来たの?

「あの悪女、とうとうレイズ王子殿下にまで手を出すなんて!」

「そうです! これは由々しき事態です!」

「もう黙って見ていることなんて、出来ません!」

「今が決起の時なのです! エルシカ様、我々と共に立ち上がりましょう! あの学園の風紀を乱す悪逆の徒を討ち取るのです!」

 わー、皆、燃えてんなー。
 あ、うん、はい。そういう話でしたか。

「お断りします」

 まぁ、当然断るよね。
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