7 / 37
第七話 話を遮る虫の声
しおりを挟む
「コンラッド殿下、お心遣い痛み入ります。ですが、新しく婚約するかどうかについては、まだ考えておりません故、殿下にお時間を割いてまでして頂くことではないと存じます。そこまで殿下にお心を掛けて頂き、幸甚の至りではありますが、どうか私のことはお気になさらないで下さいませ」
流石に王族相手に真っ正面から「いらねぇ」とは言えないので、穏便に、穏便にとなけなしの令嬢の語彙力をかき集めて、「縁談の話とか、いらぬお節介は不要です」と伝える。
「・・・・・・そうかい? いや、確かに。そもそも正式な婚約破棄はまだだったね。私としたことが、少し急いてしまっていたようだ。すまない」
「いえ。お気持ちだけ受け取っておきます。ありがとうございます」
退いてはくれたけれど、まだこっちに何らかの思惑があるかもしれないという疑いは晴れてないっぽい。
そもそも結婚とかキョーミないし、したくねぇ~ってのが本音なんだよね。
レスド殿下との婚約は、レスド殿下のお母上の側妃様からかなり強い打診あってのものだったし。流石に王族からの縁談には逆らえないしね~。
「ともかく、私は王家とガルルファング公爵家との良好な関係を望んでいる。気が変わったら、いつでも声をかけてくれ」
「はい。もし、その気になったら、コンラッド殿下にご相談させて頂きますね」
まぁ、多分絶対ならんけど。
てゆーか、これでお話終わり? 終わりだよね? 頼むから終わりと言って! 私はお昼御飯が食べたいんだ!!!
「いつでも気軽にどうぞ。──ああ、それと、話は変わるが──」
まだあんの!?
「君は四年前の魔族の侵攻があった折り、戦場へ出て戦ったそうだね」
ほんとに話変わったな!!?
「ええ、まぁ。魔族が攻め入って来た方角がガルルファング公爵家の治める領地に面していましたので。防衛の陣頭指揮も父が取っていましたから。剣に多少の覚えはありましたので、戦力の足しにと連れていって頂きました」
また、随分と懐かしい話だなぁ。
うちの国は四方に魔族が治める国が一方角に一つか二つあり、度々侵攻を受けている。
四年前は東の方から攻め入られ、そこにたまたまガルルファング の領地があったから、迎撃したんだよね~。いやー、あん時は大変だった。まぁ、おかげで今はうちの領はもう侵攻を受けることはないだろうから、良かったっちゃ良かったのか?
防衛仕切ったから、領民に死者は出なかったしね。
それはそれとして、何で今更コンラッド殿下がそんな昔の話を振って来たんだろう?
「君の武功は聞いているよ。それで聞きたいのだけれど、その侵攻の際に、魔族たちを撤退させる決め手になった『光の──」
ぐぅ~!
「「・・・・・・」」
殿下が何かを言いかけたけれど、それを邪魔する虫の声がした。
──私のお腹から。
頬がみるみる熱くなる。
きっと、私の顔は今、真っ赤だろう。
話を中断したのは他でもない。私のお腹の虫だった。
だから言ったじゃん! お腹ぺこぺこだって! いや、口に出して言ってはいないけど! わ~ん、恥ずかしいぃぃぃ!!!
流石に王族相手に真っ正面から「いらねぇ」とは言えないので、穏便に、穏便にとなけなしの令嬢の語彙力をかき集めて、「縁談の話とか、いらぬお節介は不要です」と伝える。
「・・・・・・そうかい? いや、確かに。そもそも正式な婚約破棄はまだだったね。私としたことが、少し急いてしまっていたようだ。すまない」
「いえ。お気持ちだけ受け取っておきます。ありがとうございます」
退いてはくれたけれど、まだこっちに何らかの思惑があるかもしれないという疑いは晴れてないっぽい。
そもそも結婚とかキョーミないし、したくねぇ~ってのが本音なんだよね。
レスド殿下との婚約は、レスド殿下のお母上の側妃様からかなり強い打診あってのものだったし。流石に王族からの縁談には逆らえないしね~。
「ともかく、私は王家とガルルファング公爵家との良好な関係を望んでいる。気が変わったら、いつでも声をかけてくれ」
「はい。もし、その気になったら、コンラッド殿下にご相談させて頂きますね」
まぁ、多分絶対ならんけど。
てゆーか、これでお話終わり? 終わりだよね? 頼むから終わりと言って! 私はお昼御飯が食べたいんだ!!!
「いつでも気軽にどうぞ。──ああ、それと、話は変わるが──」
まだあんの!?
「君は四年前の魔族の侵攻があった折り、戦場へ出て戦ったそうだね」
ほんとに話変わったな!!?
「ええ、まぁ。魔族が攻め入って来た方角がガルルファング公爵家の治める領地に面していましたので。防衛の陣頭指揮も父が取っていましたから。剣に多少の覚えはありましたので、戦力の足しにと連れていって頂きました」
また、随分と懐かしい話だなぁ。
うちの国は四方に魔族が治める国が一方角に一つか二つあり、度々侵攻を受けている。
四年前は東の方から攻め入られ、そこにたまたまガルルファング の領地があったから、迎撃したんだよね~。いやー、あん時は大変だった。まぁ、おかげで今はうちの領はもう侵攻を受けることはないだろうから、良かったっちゃ良かったのか?
防衛仕切ったから、領民に死者は出なかったしね。
それはそれとして、何で今更コンラッド殿下がそんな昔の話を振って来たんだろう?
「君の武功は聞いているよ。それで聞きたいのだけれど、その侵攻の際に、魔族たちを撤退させる決め手になった『光の──」
ぐぅ~!
「「・・・・・・」」
殿下が何かを言いかけたけれど、それを邪魔する虫の声がした。
──私のお腹から。
頬がみるみる熱くなる。
きっと、私の顔は今、真っ赤だろう。
話を中断したのは他でもない。私のお腹の虫だった。
だから言ったじゃん! お腹ぺこぺこだって! いや、口に出して言ってはいないけど! わ~ん、恥ずかしいぃぃぃ!!!
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
悪役令嬢は冤罪を嗜む
mios
恋愛
公爵令嬢のクラリスは、婚約者と男爵令嬢の噂を耳にする。彼らは不貞したばかりか、こちらを悪役に仕立て上げ、罪をでっち上げ、断罪しようとしていた。
そちらがその気なら、私だって冤罪をかけてあげるわ。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる