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第七話 話を遮る虫の声

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「コンラッド殿下、お心遣い痛み入ります。ですが、新しく婚約するかどうかについては、まだ考えておりません故、殿下にお時間を割いてまでして頂くことではないと存じます。そこまで殿下にお心を掛けて頂き、幸甚こうじんの至りではありますが、どうか私のことはお気になさらないで下さいませ」

 流石に王族相手に真っ正面から「いらねぇ」とは言えないので、穏便に、穏便にとなけなしの令嬢の語彙力をかき集めて、「縁談の話とか、いらぬお節介は不要です」と伝える。

「・・・・・・そうかい? いや、確かに。そもそも正式な婚約破棄はまだだったね。私としたことが、少し急いてしまっていたようだ。すまない」

「いえ。お気持ちだけ・・受け取っておきます。ありがとうございます」

 退いてはくれたけれど、まだこっちに何らかの思惑があるかもしれないという疑いは晴れてないっぽい。
 そもそも結婚とかキョーミないし、したくねぇ~ってのが本音なんだよね。
 レスド殿下との婚約は、レスド殿下のお母上の側妃様からかなり強い打診あってのものだったし。流石に王族からの縁談には逆らえないしね~。

「ともかく、私は王家とガルルファング公爵家との良好な関係を望んでいる。気が変わったら、いつでも声をかけてくれ」

「はい。もし・・、その気になったら、コンラッド殿下にご相談させて頂きますね」

 まぁ、多分絶対ならんけど。
 てゆーか、これでお話終わり? 終わりだよね? 頼むから終わりと言って! 私はお昼御飯が食べたいんだ!!!

「いつでも気軽にどうぞ。──ああ、それと、話は変わるが──」

 まだあんの!?

「君は四年前の魔族の侵攻があった折り、戦場へ出て戦ったそうだね」

 ほんとに話変わったな!!?

「ええ、まぁ。魔族が攻め入って来た方角がガルルファング公爵家の治める領地に面していましたので。防衛の陣頭指揮も父が取っていましたから。剣に多少の覚えはありましたので、戦力の足しにと連れていって頂きました」

 また、随分と懐かしい話だなぁ。
 うちの国は四方に魔族が治める国が一方角に一つか二つあり、度々侵攻を受けている。
 四年前は東の方から攻め入られ、そこにたまたまガルルファングうち の領地があったから、迎撃したんだよね~。いやー、あん時は大変だった。まぁ、おかげで今はうちの領はもう侵攻を受けることはない・・・・・・・・・・・・・だろうから、良かったっちゃ良かったのか?
 防衛仕切ったから、領民に死者は出なかったしね。
 それはそれとして、何で今更コンラッド殿下がそんな昔の話を振って来たんだろう?

「君の武功は聞いているよ。それで聞きたいのだけれど、その侵攻の際に、魔族たちを撤退させる決め手になった『光の──」

 ぐぅ~!

「「・・・・・・」」

 殿下が何かを言いかけたけれど、それを邪魔する虫の声がした。
 ──私のお腹から。
 頬がみるみる熱くなる。
 きっと、私の顔は今、真っ赤だろう。

 話を中断したのは他でもない。私のお腹の虫だった。
 だから言ったじゃん! お腹ぺこぺこだって! いや、口に出して言ってはいないけど! わ~ん、恥ずかしいぃぃぃ!!!
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