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〜9〜 初恋?
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店を出て家に帰ろうとお互い歩き始めた。
少し歩いた所で、彼女は
「ちょっと待って、めっちゃお腹痛いんだけど」
お腹を押さえて、道でうずくまってこちらを見つめてくる。
冷静に考えると、昼のお弁当の後に午後の授業の前もお菓子を食べて、
ここでも何だかんだで、ケーキをおかわりして最後には締めにパフェまで食べていた。
「絶対食べ過ぎだよ。歩ける?」
「時間経てば治ると思うけど――」
「家遠いんだっけ?」
「向こう側」
彼女は右側を指差した。
僕の家とは正反対。
「僕の家とは正反対か」
「ごめんね・・流石に最後のパフェは余計だったかも」
「なら背負ってあげるよ」
「えっ!?」
単に僕が経験不足だからだけど、それがそこまで深い意味を持つとも思わないから普通に提案した。
このまま放置して帰るわけにもいかないし、歩けないなら背負うしかない。
「高田さんって彼氏さんとかいるの?」
「いや・・いないけど。」
「もしいるなら申し訳ないからアレだけど、このままじゃ帰れないと思うし」
「吉田くん、非力そうだけど大丈夫?」
「頑張る・・・よ」
「高田さんのおかげで今日は楽しかったし、感謝してるんだ」
「そんな、感謝されるようなこと・・」
我ながら臭いセリフを言ってしまった気もするけど、本音が漏れてしまっただけだから仕方ない。
キザなことを言いたいわけではなくて正直に言葉を並べただけだから顔は相変わらずの暗い表情だったと思う。
ここのところ、彼女が僕の生きる活力になってることはもう紛れも無い事実だ。
余命宣告されてから一ヶ月と少し、今は人生なんてどうでもいいなんて思わない。
こんなことでも彼女の役に立てるなら全然僕には苦にならない。
病院を出る前にトイレで薬を飲んだから心臓の状態も不安はない。
「はい、掴んで」
彼女を背に乗っけると流石に少し重かった。
流石に緊張したけど、とにかく彼女の指示通り道を歩く。
「吉田くんのことは今日だけじゃまだよくわからないけど」
「やっぱりもっと吉田くんのこと知りたい」
僕は背負うことで一生懸命でまともに返事できなかった。
でも無視はいけないので、
「元気なら歩いてよ。限界だよ。」
と軽く憎まれ口を叩いてみた。
「うるさいな!口だけは元気なんだよ!」
とか喋ってるうちに彼女の家に着いた。
平凡な一軒家だけど、しっかり手入れされてる庭先から上品そうな感じが伝わった。
こんな時間に僕が家に連れてくる状況を見て心配するんじゃないかと思った。
家の前で彼女を背中から降ろした。
「じゃあ、また明日ね」
「うん!本当に今日はありがとう!また誘うから絶対来てね!」
その瞬間、ふらっとめまいがした。
そうか、自分は病人なんだ。全力で走ったわけではないけれど身体に負担があったことは間違いない。
「ちょっとー私が重かったからフラフラしてるの?」
「いや、ごめん高田さんが重すぎて」
精一杯の冗談で返したけど、とにかく早くその場から消えないと色々と面倒になると思った。
「もう!大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫 またね。」
逃げるようにその場から家の方向に向かって歩いた。
彼女の家の近くに公園があったから、そこのベンチに横になって身体が落ち着くのを待った。
結局、自分の家に着いたのは日付が変わる直前だった。
母さんと父さんは心配して起きていたけど、僕は大丈夫と一言だけ発して部屋に戻った。
スマホを見ると、彼女からメッセージが届いていた。
「今日は家まで送ってくれてありがとう!
背負われて少しドキドキしちゃったよ(笑)でも嬉しかったよ!
なんか帰り際、フラフラしてたのが心配だけど大丈夫?
私のせいで死んじゃうとか許さないからね!
じゃあ私も寝まーす」
危うく君のせいで死ぬところだったよ。と返信をしそうになった。
でも今はそんな元気もない。
やっぱり僕は病人だ。
でも、彼女と一緒にいれて幸せな気持ちだった。
今までには経験したことのない気持ち。
自分の余命のこと、彼女のこと、今日の出来事。
全てが頭を錯綜しながら、布団に潜った。
少し歩いた所で、彼女は
「ちょっと待って、めっちゃお腹痛いんだけど」
お腹を押さえて、道でうずくまってこちらを見つめてくる。
冷静に考えると、昼のお弁当の後に午後の授業の前もお菓子を食べて、
ここでも何だかんだで、ケーキをおかわりして最後には締めにパフェまで食べていた。
「絶対食べ過ぎだよ。歩ける?」
「時間経てば治ると思うけど――」
「家遠いんだっけ?」
「向こう側」
彼女は右側を指差した。
僕の家とは正反対。
「僕の家とは正反対か」
「ごめんね・・流石に最後のパフェは余計だったかも」
「なら背負ってあげるよ」
「えっ!?」
単に僕が経験不足だからだけど、それがそこまで深い意味を持つとも思わないから普通に提案した。
このまま放置して帰るわけにもいかないし、歩けないなら背負うしかない。
「高田さんって彼氏さんとかいるの?」
「いや・・いないけど。」
「もしいるなら申し訳ないからアレだけど、このままじゃ帰れないと思うし」
「吉田くん、非力そうだけど大丈夫?」
「頑張る・・・よ」
「高田さんのおかげで今日は楽しかったし、感謝してるんだ」
「そんな、感謝されるようなこと・・」
我ながら臭いセリフを言ってしまった気もするけど、本音が漏れてしまっただけだから仕方ない。
キザなことを言いたいわけではなくて正直に言葉を並べただけだから顔は相変わらずの暗い表情だったと思う。
ここのところ、彼女が僕の生きる活力になってることはもう紛れも無い事実だ。
余命宣告されてから一ヶ月と少し、今は人生なんてどうでもいいなんて思わない。
こんなことでも彼女の役に立てるなら全然僕には苦にならない。
病院を出る前にトイレで薬を飲んだから心臓の状態も不安はない。
「はい、掴んで」
彼女を背に乗っけると流石に少し重かった。
流石に緊張したけど、とにかく彼女の指示通り道を歩く。
「吉田くんのことは今日だけじゃまだよくわからないけど」
「やっぱりもっと吉田くんのこと知りたい」
僕は背負うことで一生懸命でまともに返事できなかった。
でも無視はいけないので、
「元気なら歩いてよ。限界だよ。」
と軽く憎まれ口を叩いてみた。
「うるさいな!口だけは元気なんだよ!」
とか喋ってるうちに彼女の家に着いた。
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こんな時間に僕が家に連れてくる状況を見て心配するんじゃないかと思った。
家の前で彼女を背中から降ろした。
「じゃあ、また明日ね」
「うん!本当に今日はありがとう!また誘うから絶対来てね!」
その瞬間、ふらっとめまいがした。
そうか、自分は病人なんだ。全力で走ったわけではないけれど身体に負担があったことは間違いない。
「ちょっとー私が重かったからフラフラしてるの?」
「いや、ごめん高田さんが重すぎて」
精一杯の冗談で返したけど、とにかく早くその場から消えないと色々と面倒になると思った。
「もう!大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫 またね。」
逃げるようにその場から家の方向に向かって歩いた。
彼女の家の近くに公園があったから、そこのベンチに横になって身体が落ち着くのを待った。
結局、自分の家に着いたのは日付が変わる直前だった。
母さんと父さんは心配して起きていたけど、僕は大丈夫と一言だけ発して部屋に戻った。
スマホを見ると、彼女からメッセージが届いていた。
「今日は家まで送ってくれてありがとう!
背負われて少しドキドキしちゃったよ(笑)でも嬉しかったよ!
なんか帰り際、フラフラしてたのが心配だけど大丈夫?
私のせいで死んじゃうとか許さないからね!
じゃあ私も寝まーす」
危うく君のせいで死ぬところだったよ。と返信をしそうになった。
でも今はそんな元気もない。
やっぱり僕は病人だ。
でも、彼女と一緒にいれて幸せな気持ちだった。
今までには経験したことのない気持ち。
自分の余命のこと、彼女のこと、今日の出来事。
全てが頭を錯綜しながら、布団に潜った。
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