風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

五十五話

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驚いて振り向くと、そこには立野が涼しい顔をして立っていた。口元に笑みを浮かべて優雅に立つ姿が、今の自分の余裕の無さと対照的で姫川の眉間の皺が一層濃くなる。
「お前に関係ない。」
冷たく言い放ってその場を去ろうとした時、立野が余裕のある声で言った。
「おや?いいんですか?そんな切羽詰まった可哀想な先輩に俺も協力できると思ったんですが、余計なお世話でしたね。」
「何?」
立野の言葉に姫川は思わず反応せずにはいられなかった。
「いえ、お気になさらず。では。」
そんな姫川の反応を無視するように背を向けようとした立野の肩を姫川はガシッと掴んだ。
「まだ話は終わってない。今言ったのはどう言う意味かきちんと説明しろ。」
「おやっ?俺には関係ないんじゃなかったんですか?」
あげ足をとるような立野の言葉に敢えて反応せず姫川は言葉を続けた。
「協力できるとはどういう意味だ?あいつらがどこに行ったか知ってるのか?そもそもお前達があいつらと何か企んでるんじゃないのか?」
感情のままに強い口調でそう詰め寄る姫川だったが立野は面倒くさそうに溜息を吐いて見せた。
「質問が多いですね。先程まで俺の事を無視しようとしていたくせに。」
欲しい答えを返さず、勿体ぶるような言い方をする立野に姫川は苛立ち、思わず肩を掴んだ手に力が入る。その手を煩わしそうにゆっくり外すと、
「まぁいいでしょう。必死な先輩の姿に免じて教えてあげますよ。」
と優雅に微笑んだ。
「先輩が言うあいつらかどうかはわかりませんが、怪しい3人組の男達があっちの倉庫の方へ歩いて行くのを見ましたよ。キョロキョロと周りを窺いながら歩いていたのでおかしいなと思ったんです。」
続けて立野は男達の印象や特徴についても話し始めた。
それを聞く限り、姫川が探している男達で間違いはないようだった。しかし、風紀や教師陣で散々手分けをして全く見つからなかった男達を立野があっさり見つけたことに姫川は疑念を抱く。
そもそも姫川は立野を信用していないし、あの男達だってひょっとすると、柏木や立野側の人間ということもある。
そのことを追求しようと姫川が口を開きかけた。
しかしそれより早く立野が再び話し始めた。
「一応葵に・・・いや、生徒会の人達にこの事を伝えた方がいいかと思いまして、本部に行こうとしたところへ、丁度先輩が来られたので声をおかけしたんですよ。」
安心してください。男達に逃げられる事がないように今は史人が見張ってくれていますから。」
立野の言葉に姫川は一瞬耳を疑った。
「瀬戸田が⁉︎1人であの男達を見張っているのか?」
「ええ、そうですよ。」
「チッ!」
事もなげに答える立野に姫川は思わず舌打ちをすると、もう立野には目もくれず倉庫の方に走り出した。

そんな姫川の姿を立野はただ見送る。そして、
「はぁ、これで俺の役目は終わりですね。何か美味しいものでも食べてこようかな。」
と呟きながら、歪んだ笑顔を浮かべていた。
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