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高校最後の夏休み
九話
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姫川と正木は2人で近くのレストランに来ていた。
先程、正木の気持ちを正直に言葉にされた姫川は、正木と普段どう接していたか思い出せずにいた。その所為もあってか、最初はお互いに気まずい雰囲気が流れ、姫川は早くも家に帰りたい気持ちになった。
しかし、ポツポツと正木が話す言葉に答えているうちに、いつの間にかその気まずい雰囲気も無くなっていた。
今は、2人の幼少期の頃について話が盛り上がっていた。
「いや、俺たちはよく仲間内でケイドロとかしてたよ。知ってる?あの、警察と泥棒に分かれて、追いかけごっことかするやつ。」
正木が何故か目を輝かせながら話すので姫川も微かに笑みを浮かべつつ、答える。
「あぁ、俺も友達とよくしてたな。あとは、キックベースとか、ポートボールとかあったよな。」
「ポートボールとか懐かしすぎだろ!あの大人になったら絶対にしないような遊び。あと、俺は休みの時とかう◯い棒の色んな味を買って味比べとかしてたよ。」
正木の言葉に思わず姫川が吹き出す。
「ははっ、なんだその変な遊びは。」
「なんだよ。皆一回はしたことあるだろ?」
「そんな事はないだろ。俺は逆に気に入った味のものをいつも食べてたよ。2種類くらいを食べ回してたな。」
姫川は懐かしそうに話すが、正木は目を丸めた。
「はっ?お前、姫川の息子だろ?駄菓子とか食べて育ったとは思えないな。」
正木の言った言葉に姫川のテンションがみるみる低くなった。
「お前は、俺を見誤ってるぞ。」
小さく呟く姫川に正木が首を傾げる。
「ずっと思っていたが、お前は俺の生い立ちを誤解している。正木が考えているような幼少期を俺は過ごしていないんだ。多分お前と同じか、それより苦しかったかもしれない。」
姫川の言っている事が理解できなくて正木は混乱する。
「いや、お前の暮らしが俺より苦しかったとは思えないんだが。それはあれか?親父さんが厳しかったとかそういう意味か?」
正木なりに姫川の言葉を理解しようとして言った事も、軽く首を振って否定する。
「まぁいい。この話は終わりだ。」
姫川にとってもあまり思い出したくない話なので、強制的に話題を終わらせる。
こいつはどう思うだろうな。
姫川はふとそんな感情が芽生える。自分を純粋に姫川の息子だと信じている正木が、本当はしがない駄菓子屋の息子だと知ったらどういう反応をするかが急に気になった。
正木は一般家庭で育った事にコンプレックスを感じているのは姫川も知っていた。そんな正木が姫川の生い立ちを知れば、同情するか或いは軽蔑するか。姫川は一度自嘲的に笑うと、
「そろそろ帰るか?」
と正木に尋ねた。
姫川の言っていた事が気になる正木だったがこれ以上詮索しても無駄だと思ったのか、
「あぁ。」
と姫川の言葉に短く返した。
思ったより長く話し込んでいたようで、気づけば夕方近くになっていた。
ここに来た時にはあんなに話しづらいと感じていたのに、気づけば気まずさなど無くなって話をしていた自分に姫川は驚く。
正木の姫川に対する理解できない行動や言動にはいつも振り回されているのに、なんだかんだで正木といる時間が嫌いではない自分に気付かされた。
「じゃあまた学校でな。」
レストランから出た姫川が正木に向かってそう言うと、
「ああ、そうだな。」
と適当な返事が返ってくる。未だに姫川の言った言葉の意味を考えているようだった。
姫川はそんな正木を一瞥すると、直ぐに踵を返し家路へとついたのだった。
先程、正木の気持ちを正直に言葉にされた姫川は、正木と普段どう接していたか思い出せずにいた。その所為もあってか、最初はお互いに気まずい雰囲気が流れ、姫川は早くも家に帰りたい気持ちになった。
しかし、ポツポツと正木が話す言葉に答えているうちに、いつの間にかその気まずい雰囲気も無くなっていた。
今は、2人の幼少期の頃について話が盛り上がっていた。
「いや、俺たちはよく仲間内でケイドロとかしてたよ。知ってる?あの、警察と泥棒に分かれて、追いかけごっことかするやつ。」
正木が何故か目を輝かせながら話すので姫川も微かに笑みを浮かべつつ、答える。
「あぁ、俺も友達とよくしてたな。あとは、キックベースとか、ポートボールとかあったよな。」
「ポートボールとか懐かしすぎだろ!あの大人になったら絶対にしないような遊び。あと、俺は休みの時とかう◯い棒の色んな味を買って味比べとかしてたよ。」
正木の言葉に思わず姫川が吹き出す。
「ははっ、なんだその変な遊びは。」
「なんだよ。皆一回はしたことあるだろ?」
「そんな事はないだろ。俺は逆に気に入った味のものをいつも食べてたよ。2種類くらいを食べ回してたな。」
姫川は懐かしそうに話すが、正木は目を丸めた。
「はっ?お前、姫川の息子だろ?駄菓子とか食べて育ったとは思えないな。」
正木の言った言葉に姫川のテンションがみるみる低くなった。
「お前は、俺を見誤ってるぞ。」
小さく呟く姫川に正木が首を傾げる。
「ずっと思っていたが、お前は俺の生い立ちを誤解している。正木が考えているような幼少期を俺は過ごしていないんだ。多分お前と同じか、それより苦しかったかもしれない。」
姫川の言っている事が理解できなくて正木は混乱する。
「いや、お前の暮らしが俺より苦しかったとは思えないんだが。それはあれか?親父さんが厳しかったとかそういう意味か?」
正木なりに姫川の言葉を理解しようとして言った事も、軽く首を振って否定する。
「まぁいい。この話は終わりだ。」
姫川にとってもあまり思い出したくない話なので、強制的に話題を終わらせる。
こいつはどう思うだろうな。
姫川はふとそんな感情が芽生える。自分を純粋に姫川の息子だと信じている正木が、本当はしがない駄菓子屋の息子だと知ったらどういう反応をするかが急に気になった。
正木は一般家庭で育った事にコンプレックスを感じているのは姫川も知っていた。そんな正木が姫川の生い立ちを知れば、同情するか或いは軽蔑するか。姫川は一度自嘲的に笑うと、
「そろそろ帰るか?」
と正木に尋ねた。
姫川の言っていた事が気になる正木だったがこれ以上詮索しても無駄だと思ったのか、
「あぁ。」
と姫川の言葉に短く返した。
思ったより長く話し込んでいたようで、気づけば夕方近くになっていた。
ここに来た時にはあんなに話しづらいと感じていたのに、気づけば気まずさなど無くなって話をしていた自分に姫川は驚く。
正木の姫川に対する理解できない行動や言動にはいつも振り回されているのに、なんだかんだで正木といる時間が嫌いではない自分に気付かされた。
「じゃあまた学校でな。」
レストランから出た姫川が正木に向かってそう言うと、
「ああ、そうだな。」
と適当な返事が返ってくる。未だに姫川の言った言葉の意味を考えているようだった。
姫川はそんな正木を一瞥すると、直ぐに踵を返し家路へとついたのだった。
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