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番外編

黒の執着21

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流されかけていた冬馬はそのドアの音に驚きビクッと体を跳ねさせた。
ラティーヌは鋭い眼光でドアの方を睨みつけている。
ドンドンドンっ!
再び叩くドアの音に冬馬は若干戸惑ったように
「何でインターフォンもあるのにわざわざドアを叩くんだよ。」
と言った。
「私が出ます。」
冬馬との甘いひと時を邪魔されたラティーヌが忌々しそうにそう言うのをため息をこぼした冬馬が止めた。
「いい。俺が出る。隣の部屋の人かもしれないだろ。そんな凶悪な顔を見せられないから。」
冬馬はあっさりラティーヌの腕を抜け出し玄関口へと向かってしまった。その様子を恨めしそうにラティーヌが見ていた。
少しすると、
「どの面さげて此処に来てんだよ!帰れ!」
という冬馬の怒鳴り声が聞こえてきた。
何事かとラティーヌが急いで玄関口まで駆けつけると、
「知らない仲でもないんだから入れろよ。とって食やしないからよ。」
と、無理やり玄関口に足を突っ込もうとするクロノの姿があった。
ラティーヌの顔からスッと表情が消える。そして体勢を低くすると、今にも殴りかかりそうな獰猛なオーラを放ち始めた。
その殺気に振り返った冬馬が慌てたように声を上げる。
「ラティーヌ!こんな所で暴れようとするな!」
そんな冬馬の焦りなど無視して、クロノが玄関のドアに片手をかけながらニヤッと笑って見せた。
「よぉ、ラティーヌ。久しぶりだな。俺も最近はおとなしくしているから体が鈍ってんだ。喜んで相手してやるよ。」
そのクロノの言葉と表情にラティーヌの理性が簡単に弾け飛ぶ。
「いいですか?あなたが私に勝てるとは思えませんね。」
「おい!よせって言ってんだろうがっ!」
冬馬の制止も虚しく、ラティーヌは凄まじいオーラを放ちながらクロノの方に1歩近寄った。クロノも体からユラっと黒いオーラが立ち昇り、途端にピリピリしたような緊張感が辺りを包み込んだ。まさに一触即発の状態である。
そんな2人を見て冬馬の焦りが増した。この2人がここで本気でやり合えば玄関のドアが壊されるどころじゃ済まないと、本気で心配になる。
半壊。賠償金。借金。逮捕。
そして嫌な言葉ばかりが思い浮かび冬馬の頭を支配する。放っておけば2人は今にも互いに喰ってかかろうという勢いだ。
「2度とこの地を踏めないようにしてやりますよ。」
「お前こそ、そのお綺麗な面を2度と拝めないようにしてやるよ。」
冬馬の心配などお構いなしに今まさに取っ組み合おうとする2人にとうとうキレて、
「ご近所迷惑だって言ってんだろー!!」
と、冬馬は叫んだのであった。
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