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番外編

黒の執着19

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「俺、栄さんに飽きたのかも?」
クロノと関係を持ち始めて三ヶ月が経った。
今日も朝方仕事から帰ってきてクロノと体を繋げ、その後栄が気怠い体を引き摺って浴室に入ろうとしたところでクロノがそう口にした。
その言葉に栄は歩を止めるとゆっくりとクロノの方を振り返った。
「うーん、なんか違うんだよな・・・」
クロノはそう呟きながら、しきりに首を傾げている。
栄は額に青筋を浮かべると凶悪な笑顔を見せた。
「ほぅ、なかなか面白いことを言うな。」
散々さっきまで自分の体を弄んでおきながらそんな事を口にするクロノに栄は沸々と怒りが込み上げてきた。
「栄さん、最近俺変なんだよ。」
縋るような顔つきでそう言うクロノを見ても今の栄には苛立ちしか感じなかった。
「お前は元から変だろ。丁度いい機会だ。お前もすっかりこの世界での暮らしにも慣れたしな。そろそろこの家から出ていけ。」
そう言うと、落ちていた服を引っ掴んで未だに下着一枚のクロノの腕を引いて無理やり玄関口まで栄は歩いていった。
「ちょっ、ちょっと待てよ!」
慌てたようにクロノが声を上げるが栄は止まらない。そのままの勢いでクロノを外へと放り出した。
突然の栄の行動に下着姿のままクロノは呆然とする。暫くすると、もう一度玄関の扉が開いた。栄が考え直してくれたのだと、クロノは急いで立ち上がるが、無情にもその体にクロノの鞄と財布が投げつけられた。
「いつまでもそんな格好でいると警察を呼ばれるぞ。さっさと服着てどっかいけ。」
バタンッ!
強い勢いでドアが閉まった。そこからは、扉を叩いてもその場でいくら待っても栄が出てくることはなかった。クロノは仕方なく肩を落とすと、すっかり明るくなった街の方へ姿を消した。

「あの馬鹿がっ!」
栄は髪を掻き上げながらそう呟いた。そして自分に飽きたと言ったクロノの言葉に傷ついていることが腹立たしくて仕方なかった。
クロノが元々、性に奔放で誰にでもこう言う関係を迫ることは知っていたし、まさか自分がクロノに本気になるなんて思ってもみなかった。しかし、今まで見たことのないクロノの優しさや表情に触れ、少しずつ心を絆されていたのだった。
しかし、こうなった以上クロノをもう自分の元に置くことは出来ないと栄は感じた。さっきは感情のままにクロノを追い出してしまったが、この世界に慣れてきたクロノはもう1人でも十分に生活できるだろうと今度は冷静に考える。
そして、クロノを引き取った責任を果たすべく、栄はクロノの新しい住居や職場を探し始めることにしたのだった。
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