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二十八話
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冬馬はオーナー室の前に立ち、ドアをノックした。その後直ぐにドアを開けると、こちらを見つめる栄と目があった。
「冬馬か。体はどうだ?」
栄の問いに頭を下げながら冬馬は答える。
「もう大丈夫です。沢山休んで迷惑かけてすみませんでした。」
「いや、今回は俺の責任でもある。悪かったな。」
栄がいつにも無く真剣な顔で謝罪を口にした。
「あのー、尊さんはどうなりました?」
あの後、ラティーヌや晴翔にも中々聞けずにいた事を冬馬は栄に聞いた。
「あぁ、それがまだ見つからないらしい。仲間も大体捕まったのに、1人だけ隠れきるなんて事があいつに出来ると思えないけどな。」
栄が考えるように言う。
「そうなんですか・・・」
尊が捕まらないうちは冬馬も何となく安心できなかった。またあんな目に遭う可能性が少しでもあると考えると恐怖を感じずにはいられない。それを察したのか栄が
「尊が見つかるまでは、お前もできるだけ1人で行動したりするなよ。こんな時こそ、ラティーヌや晴翔をしっかり頼れよ。」
と言った。晴翔はともかくラティーヌは気まずいなと口に出す事はないものの、冬馬は心の中で思った。
その後オーナー室を出た冬馬はまた、控え室を覗く。すると、コンビニの袋を持ったラティーヌがいた。晴翔と雅と3人で楽しそうに会話をしている。3人で話しているのに、冬馬はどうしてもラティーヌと雅に目を向けてしまう。自分と話した時に比べて雅の距離が近い気がする。
そのまま冬馬は音をたてないように控え室を出た。何だかあの光景をずっと見ていたくなかった。
ふと先程の光景を思い浮かべる。雅とラティーヌの並んでいる姿は、自分と並んでいる時よりも輝いているように感じる。やっぱりラティーヌには自分なんかより雅みたいな子の方が合うのではないかと冬馬は考えながら大きな溜息を吐いた。
「冬馬くん、久しぶり。大丈夫だったの?」
久々にホールに入ると、早速常連の女の子が指名をしてくれた。今日復帰する事を他のスタッフから聞いていたようだ。
「あぁ、もう大丈夫だよ。ごめんね。心配かけて。でも、こうやって会いに来てくれて嬉しいよ。」
これは、冬馬の本心でもあった。
「よかったー!すっごく心配してたの。今日は快気祝いだね。」
「ありがとう。じゃあ俺からもなんか一杯奢らせてくれる?心配もかけちゃったしさ。」
「えっ?いいの?嬉しい!じゃあ私もボトル入れちゃおっかなぁ。」
満面の笑みで冬馬を見る女の子達に冬馬も優しい笑顔で返す。この日、冬馬の復帰を心待ちにしていた常連の子が何人も来てくれて、晴翔の言う通り冬馬は引っ張りだことなった。
冬馬にとってはとても忙しい1日になったが、仕事に没頭しているうちは、何も考える必要がないので逆に有り難かった。冬馬はわざわざ自分に会いに来てくれた子達に感謝の気持ちを込めて、精一杯のおもてなしをした。
「冬馬か。体はどうだ?」
栄の問いに頭を下げながら冬馬は答える。
「もう大丈夫です。沢山休んで迷惑かけてすみませんでした。」
「いや、今回は俺の責任でもある。悪かったな。」
栄がいつにも無く真剣な顔で謝罪を口にした。
「あのー、尊さんはどうなりました?」
あの後、ラティーヌや晴翔にも中々聞けずにいた事を冬馬は栄に聞いた。
「あぁ、それがまだ見つからないらしい。仲間も大体捕まったのに、1人だけ隠れきるなんて事があいつに出来ると思えないけどな。」
栄が考えるように言う。
「そうなんですか・・・」
尊が捕まらないうちは冬馬も何となく安心できなかった。またあんな目に遭う可能性が少しでもあると考えると恐怖を感じずにはいられない。それを察したのか栄が
「尊が見つかるまでは、お前もできるだけ1人で行動したりするなよ。こんな時こそ、ラティーヌや晴翔をしっかり頼れよ。」
と言った。晴翔はともかくラティーヌは気まずいなと口に出す事はないものの、冬馬は心の中で思った。
その後オーナー室を出た冬馬はまた、控え室を覗く。すると、コンビニの袋を持ったラティーヌがいた。晴翔と雅と3人で楽しそうに会話をしている。3人で話しているのに、冬馬はどうしてもラティーヌと雅に目を向けてしまう。自分と話した時に比べて雅の距離が近い気がする。
そのまま冬馬は音をたてないように控え室を出た。何だかあの光景をずっと見ていたくなかった。
ふと先程の光景を思い浮かべる。雅とラティーヌの並んでいる姿は、自分と並んでいる時よりも輝いているように感じる。やっぱりラティーヌには自分なんかより雅みたいな子の方が合うのではないかと冬馬は考えながら大きな溜息を吐いた。
「冬馬くん、久しぶり。大丈夫だったの?」
久々にホールに入ると、早速常連の女の子が指名をしてくれた。今日復帰する事を他のスタッフから聞いていたようだ。
「あぁ、もう大丈夫だよ。ごめんね。心配かけて。でも、こうやって会いに来てくれて嬉しいよ。」
これは、冬馬の本心でもあった。
「よかったー!すっごく心配してたの。今日は快気祝いだね。」
「ありがとう。じゃあ俺からもなんか一杯奢らせてくれる?心配もかけちゃったしさ。」
「えっ?いいの?嬉しい!じゃあ私もボトル入れちゃおっかなぁ。」
満面の笑みで冬馬を見る女の子達に冬馬も優しい笑顔で返す。この日、冬馬の復帰を心待ちにしていた常連の子が何人も来てくれて、晴翔の言う通り冬馬は引っ張りだことなった。
冬馬にとってはとても忙しい1日になったが、仕事に没頭しているうちは、何も考える必要がないので逆に有り難かった。冬馬はわざわざ自分に会いに来てくれた子達に感謝の気持ちを込めて、精一杯のおもてなしをした。
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