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本編
苦労と悩み
しおりを挟む「何てことをやらかしたのだ、クロウ!」
俺は父親に呼び出され、頬を殴られた。
分かっている、自分だって、本気でするつもりなどなかった。そりゃ、何度もやり直そうとしたさ。
でも、俺は婚約破棄ではなく、婚約解消をしようと考えていたのだ。二人っきりの部屋で、円満に解消を。
今日、このパーティに彼女と共に来たのは、イアリスは俺がちやほやされているのを見れば、流石に少しは嫉妬してくれるのでは、と試してみたかった、それだけの理由だ。まさか、あんな無関心そうに、冷たい目で見られているとは思わなかったが。
怒りは多少感じていた。
まさかあんなに口が動き、大きい声がでるなんて、自分でも信じられなかったが。それに、彼女が痛がっているというのに、手が離せない。
まるで誰かに操られているのかと考えてしまうほどスラスラと言葉が出てきた。
『イアリス・ガドナー!これまでの俺に対する侮辱行為と、俺の愛人への酷い扱いはもう見てられぬ!!今日を持ち、私とお前の婚約は破棄する!!』
……あの時、彼女はどんな顔をしていただろうか。
ショックのせいか、あまり思い出せない。ただ、悲しそうでも、悔しそうでもなかった気がする。
「クロウ、今すぐイアリス嬢に手紙をだせ」
「何故です、お父さま。」
「早くするのだ。そしてパーティの件についてもう一度話したいと書け、分かったな!!」
ビリビリと耳が震える声で父親が怒鳴る。
圧が物凄く、断れる雰囲気では無い。
「わかりました…」
俺は自室に戻って手紙を書いた。
謝罪は…いるよな。あと、父親の言っていたことと、日付と。
「ふふ」
完成だ。
……昔、イアリスからラブレターを貰った時を思い出すな。
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