日記風な記録

家族ってなんだ

出産 ー分娩台で途方に暮れるー

　いつ産まれるのか、今日なのか明日なのか今すぐなのか。いくら本を読んでも分からなかった。

　いつ産まれてもおかしくないのに、予定日を過ぎても何の変化もない。切羽詰まったような収縮感はあるが、コレが陣痛ならもう三日前には産まれているはず。

　とにかく私は混乱していた。周りから見るととても落ち着いて見えたらしいが、私は混乱の極地にいた。

　混乱のあまり遺書まで書いたほどだ。　　　　

　内容はこんな感じ「産まれてきた貴方へ、貴方のお母さんになれたことが私の人生で最大の喜びです。貴方の幸せが私の喜びです」

　今になって落ち着いて考えてみたら…ん？　落ち着いて考えてみても、特に問題ない文章？　まあいいや。

　えーとなんだっけ？　そうだ、陣痛！　それがよく分からなかったのだ。

　分からなかったのだが…記憶のどこかにある腹具合……あれ？　コレって？　

　正直に言おう…ソレはまるで、デッカイ………うんちくんを踏ん張り出すのに似ていたと。

　ゴメンよ子供たち、変な例えで。でもな、私はときどき10日位溜め込む位の便秘症で(因みに妊娠期間中は何故か快便だった)あまりの腹痛にのたうち回る事もあるくらいなのだ。
　あの出るんだか出ないんだか、さっさと出ろよな的な切迫感がナニがもごもご出たがってる感が…ちょっとお腹の奥の方、違う辺にある？　と、言うのがその時の正直な感想だ。

　テレビでよく見かけるあんな感じを予想していた私だが…どうやら陣痛が弱かったらしい。あんな風にのたうち回る事は無かった。
　もしくは、もしかしたら、便秘痛に慣れた私の痛覚が変だったのかも？

　因みに…隣近所のベッドでは皆さんのたうち回り、叫んでいらっましゃいました。ノンフェクのように、再現ドラマのように。

　想像してみて欲しい、何の自覚症状も無いあなたが、さあ産まれますよと分娩台に乗せられる光景を…。

　その時の私の正直な気持ちは「まな板の上の鯉ってコレなのね」であった。


　因みに…この時、私の傍には誰一人居なかった。両親も、義両親も、夫も。

　何故？　簡単な話である、出産は病気では無いからだ。

　正直なところ、私もそう思っていた。そう言われたし、そう育ってきた。何の疑いも無かったのだ…この瞬間までは。



　この時ほど…自分の孤独を感じたことは無かった。