異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編

第280話:再登場

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「意外に早く着いたな・・・」

「私のお陰だろ?」

「まぁ、な・・・」

俺達は今、魔界の第一階層、オルフェの街へと続く出入口の前まで来ていた。
目の前には奥を見通せない真っ黒な闇が広がってあるが、超えればオフェの街へと出られる筈だった。

「しかし、女狐が居たお陰でマッピングせずに進めたのはラッキーじゃったのう」

「これ、地図を作って売り出せば確実に売れるわよ!?」

十五層のボス部屋を出た後俺達はリリが行えると言う、地形把握の機能を使い進んでみた。
この地形把握はエコーロケーションの様なもので周囲を把握するのてまは無く、もっと別の技術が使われている様だったが、それこそ魔力を応用した俺にとっては未知の技術の為、説明されても良く分からなかった。
だが、その機能は本当に使えるもので瞬時にその階層の構造や情報を把握出来る代物でつまりは入口までの正解ルートも一発で分かるのだ。
試しに余っていた羊皮紙に十五層の迷宮の通路全てをマッピングして貰った所、寸分違わず全ての通路を書き出して見せたのだ。
ある程度、それが合っているかの検証を行ったが間違い等は確認出来ず、しかも罠の位置も確りと書き出しており全く問題無かった。

構造の変わった迷宮を一から探索するとなるとかなり時間が掛かる。
ましてや一層が凄まじい広さのこのオルフェの魔界を次の層への道を一切間違えず一回で引当てる事等不可能に等しい。
なので迷宮構造が何故か変わり、階層主も復活しており本当に無事に地上に生還出来るのか口には出さずとも全員が不安に感じていた筈だが、リリの齎す恩恵を受けてこう言っては少し過剰だが、希望を見い出せたのかも知れない。

それに―――

リリは一層毎に地図を書き出そうとしたが、羊皮紙などそれ程多くを持ち歩いていない為、十五層とその上の十四層の地図だけ書き出したがその地図を作成するのに数分程しか要しなかったのだ。
スラスラと羊皮紙にマッピングしていくリリの手は澱みなく迷いを感じさせなかった。
迷宮での最重要な情報を齎し更には自ら先頭に立ち迷宮を進む。
魔物が現れれば事前に察知していたかの様に一瞬でその魔物へと詰め寄り瞬時に殲滅する。
それを繰り返してボス部屋まで辿り着くと、迷宮を跋扈する魔物と同じ様に一人で階層主を倒してせしめる。
普通の魔物と違うのはその手数だけで、それでも手こずる様な事は一切無く難無くその層を解放してみせるリリは正に迷宮だけで言えば最強では無いだろうかと誰しも思った筈だ。

そんなこんなで気が付けば魔界の出入口へと到着しており、その頃には皆リリに対して悪感情など抱いていなかった。
超絶便利なメイドロボットの如く重宝しており、かなり打ち解けていた。

まぁ、それは良かったんだけど・・・

未だに謎の多い事には変わりなく、リリが仲間に加わった事で今後どう言う事になるのかは分からない。
それはもしかしたら俺が予想も出来ない事になって行き、俺や仲間達が危険に晒される事へと繋がるかも知れない。
だが、そんな事を言ったらリリだけでは無く他の人との出会いなどもそう言う事を考慮しなくてはいけなくなる。
そんなものは自然では無いし、もしもこの選択により抗えない何かが起こったとして、それは抗えないのだから仕方無いだろうと思う。
だからこの選択自体に後悔などは無いが―――

無いんだけど、なんだろう・・・
ちょっとリリが有能過ぎて俺達要らないんじゃ?と思ったりするんだが・・・

「なんだその反吐が出る様な表情は。舐めてるだろ」

「舐めてんのはお前だよッ、反吐が出るとか酷くね!?」

「ふふ、そう言う感情を剥き出しにしているお前の方が私は好きだぞ?」

「え?お、おう・・・」

落としたり上げたりと良く分からなくなってくる。
感情があると思っていたが、もしかしたら感情を理解している様に振舞っているだけか?と思う時も有れば、本当に感情が存在しているかの様な微妙な機微も感じられたりする時もある。
本当にリリと言う人物像が掴めず、またそれに翻弄されている俺自身にも戸惑った。

「い、いいいい、今ッ、好きとか言わんかったか!?」

「言ったわよッ、絶対言った!!」

「やっぱりこの二人デキてるんですよ!戸惑う私達を見て二人で裏で笑ってるに違い有りません!!」

と、まぁこの三人も相変わらずどうでも良い事で騒ぎ立てたりといつも通りとも言える光景が戻って来たのは良い事だと俺は無理矢理納得してその三人を完全に無視し、他の仲間達を見て言う。

「よし、じゃあとりあえず戻ろうか。一応、何があるから分からないからいつも通りいこう」

「おいッ、何故無視するんじゃ!?」

「ちょっとッ、勝手に話進めないでよ!」

「きっと都合が悪くなってきたからに違いありません!絶対に何か隠して―――キャアッ!?」

傍に寄ってきたダグラスの肩を掴みつつ、モニカに蹴りを入れて突き飛ばす。
モニカは転げていたが、構わず全員が繋がった事を確認して出入り口を跨いだ。

「じゃあ行くぞー、せーのッ」

「あ、待っ――――」

モニカが何か言い掛けるがそれを無視して俺達はオルフェへと続くだろう暗闇へと足を踏み入れた。
いつも通りの感覚が身体にまとわり付くが、瞬時に目の前が明るくなり俺は顔を顰める。
直ぐに視力が回復し辺りの情景が目に入る。
まだ昼前だろうか、晴天であったが太陽は中天には達しておらず暖かな日差しが顔と言わず全身に当たりその温かさを感じて思う。

やっと帰って来れた・・・

「ちょっとぉ!?何で置いてくんですかぁ!酷いですよ!!」

後ろを振り返ると、泣きながら怒っているモニカが魔界の出入口から丁度出て来たところだった。

「ちッ、普通に出て来やがったか」

「なッ!?なんですかその何かあったら面白かったのにみたいな反応は!?」

「煩ぇ、適当な事言ったら本当に置いてくからな」

「うッ・・・」

モニカとそんなやり取りをしているとリリから声が掛かる。

「何故、今皆手を繋いだりしてから魔界を出たのだ?」

まぁ当然の疑問かと俺の懸念などを伝えるとリリは鼻で笑った。

「お前、馬鹿なのか?そんなの気にしてどうするんだ」

「馬鹿とは何だ!?もしかしたらそう言う事だって有り得るだろ!?」

「ここに限っては有り得ない」

「はぁ?何でそんな事言えるんだよ?」

「ここは私を保管しておく、保管庫としての役割りしか無いからだ」

「・・・ぇ?」

「え、じゃない。ここはお前達の言う魔界などでは無いと言っているんだ」

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

リリの突然の告白に俺を含め仲間達は何も言えなかった。

魔界じゃないってどう言う事・・・?

「い、いや、だって魔物とかさ、アークデーモンみたいな悪魔だって居たじゃん?」

「勝手に入り込んだだけだ」

「いやいやいやいや、待って。本当に待って。そもそもお前に何でそんな事が分かるの?」

「そう感じるからに決まってるだろ?」

「えぇ・・・」

またお決まりのちょっとだけ思い出したと言う奴だろうか、リリは曖昧な回答しか寄越さないが恐らく言ってる事は正しい様な気がした。

「ちょっと一旦屋敷に戻ってから整理しよう・・・」

もう、色々とあり過ぎて頭が混乱していたし、何より疲れていた。
先ずは落ち着いてからと仲間に言って俺達は魔界の入口からそのまま屋敷へと戻った。
途中、街の様子を見てみるが魔界に出発した日とそれ程大差は無い様に思える。
兵士の姿が若干増えたかなとは思うものの一般の人々は街を行き交い、店も普通に営業している。
浮き足立った感じはしなくは無いが、それ程戦況は変わっていないのだろうと言うのが窺えた。

そんな街を見ながら歩いていると屋敷が見えて来る。漸くだと短い溜息を吐いて門を潜り屋敷の扉を開けると食堂の方から直ぐにイエニエスさんが顔を出す。

「あッ、ハル様おかえりなさいませ」

「ん、何かありましたか?」

若干焦った様な態度のイエニエスさんを見て何かあったのだろうかと聞いてみると、イエニエスさんは食堂をチラリと見てから困った様に言った。

「その、先程ハル様に会いたいと言うお客様がお越しになられまして・・・何時帰って来るかも分からないとお帰り頂こうと思ったのですが」

何とも申し訳なさそうな表情でそう言ったイエニエスさんに俺は直ぐにピンと来た。

「あぁ、直ぐに帰って来るから待たせてくれとでも言われたんですね?」

「え。あ、はい。もしかしてお約束されておりましたか?」

「いや、約束なんてして無いですよ。ただ、もしかしたら来るかもなと思ってたのと、もし来ていたんだったら性格悪いんでそんな事言いそうだなって思ってただけです」

そう言って鼻を鳴らす俺にイエニエスさんは訳も分からず「はぁ」と曖昧な返事をする。

「性格悪いって酷いなぁ」

俺達の会話を聞いていたのか、直ぐに食堂から一人の男が顔を出す。

「やっぱりな」

「やぁ、少し話に来たよ」

その男は、ホルスやオルフェで出会ったあの謎の男であった。

謎の女とか謎の男とか・・・
ちょっと謎が多過ぎやしませんかねッ!?
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