異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第3章:雷速姫と迷宮街編

第109話:給料

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 宿屋の近くで飯を食いながら、今後の方針を話し合った俺達は、早速各自で動き出した。
 アルアレとパトリックが、地図の購入とクソ聖女の魔界攻略に同行する傭兵団の情報及び、魔界に関する情報の収集を担当し、ナッズとソニはパーティ全体の備品の購入、その他必要物品の精査と購入を担当し、アリシエーゼ、モニカ、ユーリー、ドエイン、明莉、篤は各々の装備品を見繕う。
 そして俺は―――

 俺だけ資金集めって何か・・・
 いや、いいや・・・

 因みに、傭兵達四人も、担当業務の合間に良い装備品が売ってれば購入する事になっている為、資金は早めに集めておきたい事は確かだ。

 そうと決まればさっさとやっちゃいますかねぇ

 自分の担当業務が終われば後は自由にして良いし、そうしたらこの街を色々と回ろう。そんな算段をして俺はデス隊を呼び出す。

「さて、皆さんお久しぶりです。早速ですが、皆さんには素寒貧にしても問題無い、寧ろそうする事で善良な市民からは喜ばれる様なカスを探して貰いたい」

「す、素寒貧、ですか?」

「そう、素寒貧。でも悪者限定ね」

「悪とは、悪どい商売をやって儲けているだとか、裏稼業の人間と言う事で良いでしょうか」

 一瞬、アホ面になったデス1ワンだが、直ぐに素面に戻り、俺に聞き返す。

「うん、そう。これだけデカい街で何て言うかアングラな空気がプンプン漂ってるんだ。そんな奴らそこらじゅうに居るでしょ」

 この街に来てから感じる街の雰囲気に俺は確信めいた物があった。
 それは地球でも感じた事のある、何とも言えぬあのヤバい感じ、ゾクゾクする感じ、居るだけで金●がヒュンッとなるあの感じで、懐かしさと共に、何となく昔の自分に戻って行く気さえしてくる。

「承知しました。少しお時間を頂きますが宜しいでしょうか」

「勿論!因みに今回は、一番大物の情報を持って来た人には、金一封を上げちゃいます!」

「「「ッ!?」」」

 昔の感覚に懐かしさを覚えてテンションがおかしくなった俺から出た冗談交じりのその言葉に、デス隊の面々は目の色を変えた。

「え・・・」

「ハル様ッ!今の言葉は真でしょうか!?」

「え、あ、うん・・・」

「あ、あのッ!因みに一位には、その、如何程・・・」

「え、あー、どれくらいがいいかなぁ・・・」

「制限時間等は御座いますでしょうか?」

「うーん、二時間くらい・・・?」

 デス1はグイッと顔を俺に近付けて鼻息を荒くし、デス2ツーは、銭ゲバ感満載でそう言ってチラチラと此方を見る。
 そしてデス3スリーは、冷静を装って居る口調だが、今にも走り出しそうな格好で聞いて来るのでなんと言うか、言動が噛み合って無い感が半端ない。

 結構みんなグイグイ来るな・・・
 そんなに金に困ってるのか?

 そう思うと同時に納得してしまった。
 モリーゼに俺の隠密近衛部隊にと任命されてからこの三人は基本的に俺達と行動は共にしない。
 ちょっと語弊があるが、行動は共にしているが、寝食は共にせず、別で飯を食い宿なりを確保している筈だ。
 それはつまりその資金はポケットマネーから出していたと言う事であり、たぶんモリーゼから出発前に軍資金は渡されているとは思うが、この感じからして相当無理な遣り繰りをしていた――させていた可能性がある。

 しまったなぁ・・・
 そこまで考えて無かった
 ちょっとお給料の事も後でちゃんと決めよう

「とりあえず二時間くらいを目処に情報集めて来てくれ。俺はこの街をブラ着いて他の情報をちょっと集めたりするから。金一封はちゃんと渡すから大いに励んでくれ」

 そう言うと三人はお互いハイタッチしたり、「っしゃ!」とか言って小さくガッツポーズを取ったりとはしゃいでいた。

 うん、ちょっとマジでちゃんとお給料は払おう・・・

「あと、遅くなって申し訳無いけど、後でちゃんと給料の事とか話そう」

 そう言うと三人ははしゃいでいた動きをピタリと止めて此方を驚いた顔で見る。

「き、給料とは、お給金の事ですか・・・?」

「うん?そうだよ。働いて貰ってるんだし、そう言うのちゃんとすべきだったんたけど、今まで気付かなくて申し訳無い」

「い、いえ!そんな・・・ハル様が謝る事では御座いません」

 デス1は申し訳なさげにそう言うが、俺がそう仕組んだとは言え、相当な働きをしてくれているのだし、それに見合った対価は支払うべきであろう。

「いいよ、働きにはちゃんと報いないとね!」

「「「・・・・・・・・・」」」

 三人は一瞬黙りそれぞれ何が俯き思案するが、直ぐにガバリッ!と顔を上げ、そしてその場で跪き、頭を垂れた。

「有り難き幸せッ!我ら必ずやハル様のお役に立って見せます!!」

 お、おいッ、だからそれやめろって!

 俺は周りからの奇異な眼差しを気にしつつ、三人をとりあえず立たせる。

「兎に角!二時間後くらいに一度情報集まらなくても俺に声掛けてくれ。それじゃあ、よーい・・・スタートッ」

 俺は早口でそう捲し立て、開始の合図をした。

「因みにですが、戻って来た順番―――アッ!?」

 デス1が何か言いかけるが、デス2とデス3は俺の合図と共にもの凄い速さで駆けて行ってしまい、それを目にしてデス1も慌てて駆け出した。

 なんだかなぁ

 そんな様子に俺は苦笑いをするしか無かったが、とりあえずはそっちの情報収集は任せても大丈夫だろうと思い、自分も情報収集を行おうと外壱番街を後にした。

 さて、どうしたもんかなぁ・・・

 情報収集と言っても何の情報を集めれば良いかと思案するが、ダンジョンに関してやクソ聖女一団の情報等はアルアレとパトリックが調べているし、そうなるとやっぱり、表層面でウロウロしていても手に入らない、所謂、情報にするか。

 でも、それを手に入れた所でどうするんだって話だよな

 色々考えるが、最終的に情報収集は辞めようと思い、それならと自分自身の装備品を見繕う事にした。
 ただ、結局はホルスの中でどの店が良いか等は知らないので、そう言った情報を収集する羽目になる事に自嘲した。




 内拾番外・・・




 遠いよッ!!
 ってかこの街どんだけ広いんだよッ!?

 色々と武器防具屋、鍛冶屋辺りの情報を集めて総合すると、三件程気になる店の情報を拾う事が出来た。
 時間が余り無いので本気で走り回り必死こいて情報を収集をし、自分の中で情報を整理して向かう店を決定。
 その足でそのまま歩いて向かったは良いが・・・
 地球で言う、ちょっとそこのコンビニまで気分で歩いてはみたものの、歩けど歩けど目的地に着かず、最初から自重しないで走って行けば良かったとかなり後悔した。

 まぁもうすぐ目的の店だ・・・
 デス隊が集まるまでそう時間が無いが・・・

 収集した情報からそろそろかと当たりを付けて、逸る気持ちを抑えつつメインの通りから左に一つ曲がる。

 この辺りの筈だけど・・・

 キョロキョロと目的地を探しながら歩いていると少し先にある店から聞き覚えのある声が響いて来た。

「―――そこを何とか!この通りじゃッ」

 ん、アリシエーゼだな?

「―――妾がこれだけ頭を下げておるのにッ」

 何か揉めてるのか?

 路地に響き渡る程の大声量であるから、外を歩く人々も何かあったのかと集まり、外から店を覗いている。

「―――きぃぃッ!なんと言う頑固オヤジじゃ!!」

 何やってんだよ、アイツ・・・

 俺はため息をつきつつ、目的の店にアリシエーゼが居る事に驚きつつも呆れながら野次馬を押し退けながら店の中へと入った。
 店に入ると、明莉がアリシエーゼを必死に宥め、ドエインも仕方無さげにそれに倣いアリシエーゼを止めているのが先ず目に付いた。
 周りを見ると、関係者と思われたく無いのかモニカがユーリーを抱いて少し離れた所で展示してある商品を眺めており、その眺めているモニカを篤が眺めーーガン見していた。

 ・・・どう言う状況だよ、これ

「何でこんなに高いんじゃッ!いくら魔界産じゃからとて、限度と言うものがあるじゃろ!」

「・・・はぁ、だからなお嬢ちゃん、これは二層から持ち帰った物なんだよ。分かるか?二層だよ、に、そ、う。現在の最高到達階層でしかも、デーモンを倒して手に入れた物なんだ。このくらいの値段は当たり前だろ」

「そんな事何回も聞いたわッ!それにしても小金貨八枚は高過ぎじゃろ!?ぼったくりにも程があるぞ!」

 どうやら商品の値段が高いとかでアリシエーゼが一方的にイチャモンを付けている様だ。

「お嬢ちゃん、買うのか買わないのかハッキリしてくれよ。買わないなら商売の邪魔なんだよ」

 店主と思わしき男は呆れながらアリシエーゼにそう言った。

「何じゃと!?あッ、さてはアレじゃな!?妾に本当の値打ちを言い当てられて焦っておるな!?じゃから早く妾達を追い出そう―――ギャッ!!」

 俺はアリシエーゼに無言で近付き、そして結構な勢いでアリシエーゼの頭にチョップを落とした。

「あッ!暖くん!良かった・・・」

「・・・旦那、姉御の暴走ヤバいぜ」

 明莉とドエインは一様に俺を見て安堵の表情を浮かべて言った。

「な、何するんじゃいきなり!舌を噛みちぎるところじゃったじゃろ!」

 アリシエーゼは頭を押さえながら俺に振り向き、涙目になって訴えて来たが、どうせならそのまま舌を噛みちぎって暫く黙ってれば良かったのにと本気で思った。

「何やってんだよお前・・・外まで丸聞こえだぞ」

「ハッ!?そうじゃ、聞いてくれ!この店はぼぼったくりの店じゃ!妾にこれを小金貨八枚と言う法外な値段で売り付けようとしてくるんじゃ!」

 そう言ってアリシエーゼは店主が持っていた白銀に輝く手甲の様な物を引ったくって俺に見せた。

「あッ!おい、勝手に触るな!」

 店主が叫ぶが、アリシエーゼはそんな事をお構い無しに俺の顔に手甲をグイグイと近付けた。

「どうじゃ、凄いじゃろ!?」

 え、何が・・・?
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